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IoT の活用で未来のオスカーを狙え!

Jason Lopez Writer

映像制作と鑑賞体験の変革に挑戦するメーカー・ムーブメントと仮想現実 (VR) テクノロジー。学生と映像作家の実験は続きます。

2016 年のアカデミー賞授賞式のテレビ放映に先立ち、新しいテクノロジーで映画制作のプロセスを発展させたイノベーターたちに、アカデミー賞科学技術賞の栄誉が与えられました。

今年の受賞者は、ブライアン・マックリーン氏とマーティン・ムニエ氏。キャラクターを使った先進的なストップモーション・アニメーション制作における 3D プリントのイノベーティブな活用方法が評価されました。
※ストップモーション・アニメーションとは、静止している物体を少しずつ動かしながらコマ撮りし、連続して動いているかのように見せる撮影技術のこと。 来年は、360 度動画や VR、IoT などのテクノロジーが栄冠に輝くかもしれません。 こうした新しいビジュアル体験は、すでに CES や2016 年サンダンス映画祭スポーツの生中継などで披露され、注目を集めています。

360 度カメラ、ドローン、その他の IoT を活用した映像制作ツールを使って、今日のアーティストたちは、映像の奥行きと幅を広げ、物語にこれまでにない共感性をもたらしています。

フィルムセオリストであり、カリフォルニア大学ロサンゼルス校 (UCLA) の教授でもあるスティーブン・マンバー氏は、「映画はテクノロジーをベースにしたメディアです。100 年以上前に発明されて以来、イノベーションの波に洗われてきました」と語っています。

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マンバー氏はこれまで、音声、色、ワイドスクリーン、3D、デジタル投影、コンピューター・グラフィックス、特殊効果、アニメーションなどの画期的イノベーションを成功させてきた人物です。

「これからは拡張現実や 360 度動画、IoT の時代です。学生たちにとっては、こうしたテクノロジーに親しみ、深く関わることが重要です」とマンバー氏。 めざましい成果を上げれば、いずれ映画芸術科学アカデミー (AMPAS) に表彰されるかもしれません。

マンバー氏が教鞭を執っている UCLA の映画・テレビ・デジタルメディア学部は、これまでフランシス・フォード・コッポラ氏やロブ・ライナー氏などのオスカー映画監督のほか、ベン・スティラー氏、ジャック・ブラック氏、ジョージ・タケイ氏などの俳優を多数輩出してきました。 モバイル動画作成アプリ ClipNotes を開発した、デジタル動画作成のパイオニアであるマンバー氏は、デジタル動画の未来について直感が働くようです。

UCLA の学生と教授:左からサマンサ・ホン氏、スティーブン・マンバー氏、ボワン・ヘッセルグレイブ氏、エリカ・フリーセン氏。

マンバー氏は IoT をテーマとするセミナーで、インテル・ソフトウェア・アカデミック・プログラムの一環として、創作を専攻する学生たちに対し、インテル® Galileo 開発ボードや Arduino などのプログラム可能なインターネット・テクノロジーを使った実践的な体験の機会を与えました。これらはいずれもメーカー・ムーブメントを支えているテクノロジーです。 「将来映像作家を目指すなら、ハードウェアいじりとソフトウェアのコーディングに精通しなければなりません。

DIY の精神は映画作りに不可欠です。また、プログラミングのスキルも、メディアリテラシーの重要な要素になっています。未来の映画監督は、おそらく今日のハードウェア・マニアと新進アーティストから誕生するでしょう」とマンバー氏。

また、映像を学ぶ今日の学生は、ホーム・オートメーション、ドローン、個人用ロボットが、ストーリーテリングにどう使えるかを理解すべきだとして、

「今はツールを自由に使える世の中です。10 年前ならコストがかかり過ぎて、実践体験を積むなんて不可能でした」と語ります。 今どきの映像作家はモノポッド (一脚) や三脚にカメラをいくつも固定し、360 度動画を撮影するためのリグを自分で設計して 3D プリントしています。

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さらに、シリコンバレー発の IoT テクノロジーと VR が主流になれば、メディア体験への期待が高まるだろうとマンバー氏は見ています。このような見方をしているのは彼だけではありません。

「VR ほど、初めて見た人の心を動かすテクノロジーはありません。無条件に圧倒されます。しかも、今ではとても簡単に利用できるようになりました」
こう語るのは、スマートフォン、ウェアラブル、VR のテクノロジーに詳しい CCS Insight のアナリスト、ベン・ウッド氏です。

VR は、映像作家が順応しなくてはならない新しいツールの最たるものでしょう。

Google で VR フィルムの制作責任者を務めるジェシカ・ブリルハート氏は、昨年夏の Kaleidoscope Virtual Reality Showcase (カレイドスコープ・バーチャル・リアリティー・ショーケース) の試写で、「VR は、昔はなかったものですから、今、VR 映像の制作に使う用語も作っているところです」と語っています。

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彼の言う用語には、新しい没入型動画の撮影、スティッチング (画像の貼り合わせ)、配信を行うためのデジタル・テクノロジーと切り離せない領域も含まれています。マンバー氏は学生たちに、セット上で、または映画の鑑賞時に、センサーやコントローラーなどのテクノロジーをどう使えるかを考えさせます。

1970 年代にカリフォルニア大学バークレー校で映画を学んだマンバー氏は、その後 10 年単位で、映画と情報テクノロジーの距離が縮まっていくのを感じてきました。そして、ついにこの 2 つが化学反応を起こし、イノベーションの火花が散ったのです。

「私がいたのは、おそらく UCLA で最初のマルチメディア・コースだったと思います。IBM の PC が登場したてのころです。PC でできることには限界がありましたが、それでも進歩をもたらしてくれました」と振り返るマンバー氏は、

最近、メディアの作り手と受け手の間の境界線が急速になくなりつつあることに気づいたと言います。

「携帯電話がいい例です。単に携帯電話を使って他人のメディアを消費するだけでなく、自分自身でメディアを作り出してもいるでしょう。それを見て、何とか動画も変えたいと思うようになったのです」

マンバー氏は、現在の IoT トレンドを、学生が新しい技術スキルを映画制作のアートに取り込むチャンスととらえています。 昨年の夏、マンバー氏は学生たちに、マイコンボード Arduino と、センサー、インテル® RealSense™ テクノロジーに対応した奥行き認識カメラを与え、 それらをどう活かすか考えさせました。

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すると、ある学生グループは、テクノロジーを設計して、映画を観ている人の反応を追跡できるようにしました。

「彼らの気分を測定しようと思ったのです。動画を作り、センサーを使って、インターネットで動画を観ているときの脈拍と脳波、笑ったときの口のサイズを測りました」と、メディア・アート・デザインを専攻するボワン・ヘッセルグレイブ氏は説明します。

このプロジェクトは、プロジェクト・メンバーであるサマンサ・ホン氏 (哲学専攻、デジタル・ヒューマニティーズ副専攻) のような学生にとっては、初めてコンピューター・テクノロジーに触れる機会となりました。

「私自身はコーディングしませんが、コーディングできる人と意思疎通できるようになったのは大きな収穫です。この経験は、どんな学問にも非常に役立つと思います」とホン氏。

マンバー氏は、学生たちが自らのビジョンを実現するために、IoT を活用した映像制作テクノロジーに工夫をこらした点が素晴らしいとして、

「このようなプロジェクトはテクノロジーを使って学ぶ上で効果的です。ソフトウェアを作ったり、既存のものに手を加えたりすることで勉強になるのです」と語っています。

 

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