仮想現実

音楽業界も仮想化の時代へ

Kristin Houser Writer & Editor, LA Music Blog

チケットを持っていないとライブの興奮を味わえない。そんな時代は、もう過去の話です。仮想現実が音楽フェスやミュージック・ビデオの楽しみ方を全く新しいものに変えつつあります。

2016 年は仮想現実 (VR) の年になると言われています。「you had to be there (その場にいないと楽しさは分からない)」という言葉も、音楽ファンにとって過去のものになるかもしれません。

昨今は、音楽業界でも、Google Carboard などの手ごろな VR ヘッドセットから 360 度のミュージック・ビデオまで、VR が多くの人々の支持を集めています。エンターテインメントに関わるあらゆる分野の企業は、このテクノロジーをいかにして取り込もうかと模索しており、そうした企業努力のおかげで、音楽ファンは、音楽フェスやコンサート、その他の限定音楽イベントに、これまでにない方法でアクセスするようになっています。

自社のチケット検索サービスで VR を使った顧客体験を提供する Rukkus 社の創業者兼 CEO、マニック・バン氏はこう説明します。

「VR をスマートフォンで提供できる時代がやって来ました。あらゆる人がスマホというコンピューターを携帯するようになった今、VR を日常的に利用することは当たり前になりつつあります」

コーチェラ・ミュージック・アンド・アーツ・フェスティバ

4 月にコーチェラで開催されたこの音楽フェスの主催者は、ライブイベントの VR ストリーミングを専門とする Vantage.tv と提携することで新しい参加方法を提案。参加証代わりのリストバンドを持つ人も持たない人も、誰もがフェスを楽しめるようにしました。

リストバンドを購入した人には、厚紙で作られた専用 VR ヘッドセットを支給。公式コーチェラ VR アプリと組み合わせることで、フェス会場全体を 360 度ぐるりと眺め回したり、出演アーティストのビデオを視聴したり、他の参加者が作成した新しい VR 体験を楽しめるようにしたのです。

また、フェスに参加できなかったファンも、アプリをダウンロードし、手持ちの VR ヘッドセットを使用するか、Web ページでコーチェラ VR ヘッドセットを購入することで、同じ体験を共有できました。

こうしたビジュアル体験に加え、参加者にはさらに優れた音質で音楽を楽しむ機会が与えられました。Here Active Listening イヤホンを購入すると、コーチェラアプリを介して、究極のリスニング環境、フェスのステージに最適化されたプリセット、専用のオーディオフィルターが入手できるというものです。

EDMtv

DirecTV の XETV チャンネルで 2016 年 3 月にスタートした EDMtv では、エレクトロニック・ダンス・ミュージック (EDM) を中心とした台本のある番組、ドキュメンタリー、放送局スタイルのニュースおよびイベントは、すべて強力な VR コンポーネントで支えられています。

「EDM の大部分を占めるのは、プロジェクション・マッピング、LED パネル、大量の照明を駆使したビジュアルです。才能あふれる 3D アーティストが制作するイリュージョンがステージやテントの雰囲気を盛り上げてくれます。私たちは現実世界の工程を省いて、直接、仮想現実世界を作り上げつつあるのです」と、EDMtv 最高 VR 責任者のダニエル・ノックス氏は説明。

EDMtv ユーザーは、仮想チケット、録画パッケージ、シーズンパスを購入することで、テレビのライブコンテンツ、オンデマンド・ミュージック・ビデオ、3D 360 度ミュージック・ビデオ、ライブおよび録画版の 360 度音楽フェスにアクセスできるようになります。

YouTube

YouTube は、4 月に開催された世界最大の放送機器展 NAB Show で思い切った VR 方針を打ち出しました。360 度ビデオのサポートを開始したわずか 1 年後に、360 度ライブ・ストリーミングと空間オーディオ機能の導入計画を発表したのです。

ライブ・ストリーミングの視聴者は、スマートフォンを動かすか (YouTubeアプリを使用している場合)、マウスを動かすことで (YouTube.com や Chrome への埋め込みビデオを視聴している場合)、映像を異なる角度からリアルタイムで楽しむことができます。

思わず惹き込まれるこの仮想体験に、さらに新しい空間オーディオ機能が追加されるというわけです。

YouTube 最高プロダクト責任者のニール・モーハン氏は自身のブログ記事に、「音の奥行き、距離、強さがはっきりと感じられる空間オーディオ機能は、実際にその場にいるような臨場感を与えてくれます。あらゆる方向から音が聞こえてくるコンサート会場で、最高の没入体験が味わえるのと全く同じです」と書いています。

世界中のコンテンツ・クリエイターは、まもなく YouTube の 360 度ライブ・ストリーミングと空間オーディオ・テクノロジーを実際に体感できるようになる見込みです。そして、このテクノロジーは、世界中のあらゆる YouTube Space (映像クリエイターを支援する撮影スタジオ) にも導入されようとしています。

Rukkus

チケット検索サービスを手がける Rukkus は、音楽ファンやスポーツファンが VR を利用してチケットを購入できる初の e コマース・プラットフォームを立ち上げました。

ユーザーは、まず Rukkus のアプリにログインし、購入を検討している座席を選択します。

その状態で、カメラのようにスマートフォンを動かすことで、チケットを購入する前に会場全体の眺めを確認できるのです。

StubHub でも、選択した座席からの眺めを 3D レンダリング画像で確認できますが、Rukkus は実際の写真を使用している点で異なります。

「実際の写真を使うことで、レンダリング画像より正確に座席からの眺めを判断できます」とバン氏。

VR はファンの音楽体験をあらゆる面で変えつつありますが、変革はまだ始まったばかりです。

「カセットプレーヤーや CD プレーヤー、MP3 プレーヤーを初めて手にしたときのことを思い出してください。ヘッドフォンを付けて街を歩き、自分だけの世界で音楽に没頭するだけで、世界が少し違って見えたはずです。仮想現実と音楽の融合が進むことで、音楽にさらに没頭できるようになり、その世界をより鮮明にイメージできるようになります。ぜひこの新しい世界を体感してほしいですね」と EDMtv のノックス氏は語っています。

 

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