スポーツ

Voke VR が実現する没入型ライブスポーツ観戦

Deb Miller Landau iQ Managing Editor

立体的な仮想現実テクノロジー、Voke VR の登場によって視聴者がスポーツ観戦の視点を自由に選べるようになりました。クオーターバックやコーチ、コートサイドの観客など好きな視点から試合を楽しむことができるようになります。

バーチャル・リアリティーの登場はスポーツ観戦にかつてない臨場感を演出し、そのあり方を大きく変えようとしています。

かつてはラジオでの野球中継に満足していた時代がありました。しかしテレビの登場によってスポーツ観戦の主役はラジオからテレビへと移り変わりました。色や映像によって、またデジタル・テクノロジーによって得られる情報は試合の楽しみ方の質を大きく変えたのです。例えば水泳では、先頭を泳ぐ選手にラインが表示され現在のリード状況、ゴールタッチでの順位などがリアルタイムで表示され、サッカーではパスを出す起点となる選手、それを受ける位置に移動する選手などが円形でマークされ、フィールド上のプレーの全容を速やかに把握できます。

もはやそうしたデジタル・テクノロジーの無い観戦スタイルに戻ることなど到底考えられません。

2016 年 12 月 11 日、フロリダ州タンパのレイモンド・ジェームス・スタジアムで開催されたタンパベイ・バッカニアーズ対ニューオーリンズ・セインツの試合。
©2016 Scott A. Miller

「スポーツのデジタル化によってスポーツ観戦の仕方が大きく変化しています。今ではいつでも、どこでも、どのような方法でも、自分の思うように完全にパーソナライズされたスポーツを楽しむことができます」とインテルのスポーツ・グループ(ISG)で戦略・マーケティング部門のトップを務めるジェフ・ホッパーは語っています。

今までのスポーツ番組は、放送局が選んだ映像しか見ることができませんでした。さらに言うなら、カメラマンの撮影するアングルに縛られていたとも言えます。先ごろインテルが買収したインテル® True VR(従来の Voke VR) による新しい VR 技術を使用すると、そのような制限がなくなります。フィールド上のどんな角度からでも試合を見ることができ、バスケットボールでもアメリカン・フットボールでもプレーヤーたちと共にその場にいるかのような臨場感で試合を楽しむことができるのです。

ホッパーは、「現在のリニア放送モデルは勢いを失いつつあります。既存の放送局が提供する番組では視聴者を十分に満足させることができなくなりつつあるなかで、スポーツ界と放送業界は共にファンが見たい時に見たい視点で観戦できるという、新しいサービスの提供に目を向けています」と話しています。

ホッパーは、ライブスポーツ放送は観戦者が視点を自由にコントロールできない最後のメディアであると指摘しています。

しかしそれも変わりつつあるのです。ホッパーは音楽や映画ではすでにそのような変化が定着しつつあることを指摘しています。Pandora、Spotify、iTunes などは音楽を自分でパーソナライズすることを可能にし、Netflix や Amazon ビデオは見たい時に見たい番組を見ることを可能にしました。

「すでに家に居ながらにして、 タブレットであれパソコンであれスマートフォンであれ、あたかも試合会場に臨んで、好みの視点から自由に観戦できるようになっているのです」とホッパーは語ります。

True VR の仕組み

Voke 社の共同創業者であるサンカー(ジェイ)ジャヤラム博士は熱烈なシアトル・シーホークス(アメリカン・フットボール・チーム)のファンでもあります。そんな彼に突如としてアイデアが浮かんだのは、試合を見損ねてイライラしていた時でした。もし VR でスタジアムにいる時と同じ体験をすることができたら?もし世界のどこからでもリアルタイムでの VR 体験をすることができたら?そんなアイデアが浮かんだ 2007 年には、今私たちが見かけるようなヘッドセットは存在していませんでした。その頃彼のチームは博物館やエアロバイクのための VR 活用方法を研究中だったのです。

Voke VR 社の共同設立者ウマ・ジャヤラム博士

ジャヤラム博士にはすでに VR についての長年の知見がありました。妻であり Voke の共同創業者兼 COO であるウマ・ジャヤラム博士と共に教授として務めていたワシントン州立大学で、Virtual Reality and Computer Integrated Manufacturing Lab(バーチャル・リアリティーおよびコンピューター統合製造研究所)という研究所を任されていました。

初期の頃に造った VR 体験では、コンピューター画面に貼り付けた Viewmaster というおもちゃ(左右の目それぞれの写真フィルムを円盤状に配置したものを挿入し、覗き込むと立体的に見える)を覗き込んでもらう必要がありました。それでもファンドから投資を得ることに成功し、次にプロトタイプとなるヘッドセットを作製することができました。そのプロトタイプは重さ 2.7 キロを超え、エレクトロニクス機器を格納するための大きなくちばしのようなものがついていました。

初期の VR ヘッドセット試作機を抱えるサンカー (ジェイ) ジャヤラム博士。 重さは約 2.7 キロと「とても大きかった」

しかしこうした試作品の数々が最終的に Voke VR へと孵化する卵だったのです。ジャヤラム夫妻は 2004 年にチームと共に会社を設立し、そのわずか 15 人の企業がこの VR 技術をライブ観戦の常識を覆すようになるまでに成長させたのです。(2017 年初頭にインテルにより買収され、True VR という名称に変更されました)

「リアルタイムでの VR など不可能だと何度も言われました」ジャヤラム博士は、膨大なデータをリアルタイムで処理することなどとても無理だと多くの人は思っていた、と振り返ります。

「でも私たちのチームは違いました。やると決めた覚悟があれば、何とかできるものだと思っていました」

まず手始めに 2010 年には NBA(米国男子プロ・バスケットボール・リーグ)の試合に多数のカメラとコンピューターを搭載した巨大なラックを持ち込みました。

「わずか5分のプレイバック映像のためのデータを処理するのに、なんと1ヶ月半もかかったのです」

また設置スペースの問題はすぐに露呈しました。コンピューターを搭載した巨大なラックをバスケットボール・コートの脇に設置するのは現実的ではなく、VR でリアルタイム映像配信を行うためには機器を小型化する必要がありました。2 年間に渡るさまざまな試行錯誤の末、テーブルの下に収まるくらいのシステムで試合をリアルタイム処理することが可能となったのです。

2016 年 12 月 11 日、フロリダ州タンパのレイモンド・ジェームズ・スタジアムで開催されたアメリカン・フットボール、タンパペイ・バッカニアーズ対ニューオーリンズ・セインツの試合でライブフィードを見つめるVoke社のメンバー。 ©2016 Scott A. Miller

「そこに至るにはエンジニアたちの血の滲むような働きがありました。どうすれば CPU、GPU、アルゴリズムの最適化を図り、マシンの能力を最大限発揮させる処理と描画を実現できるか、みんなで必死になって考えたものです」

Voke のカメラリグには通常 12 台かそれ以上のカメラが搭載され、180 度から 360 度の視角で深度の情報を伴った立体映像を撮影することにより、見ている人が実際にそのイベントに参加しているような臨場感あふれる映像を再現します。

ニューヨーク・ファッション・ウィークで、インテルは Voke 社製のTrueVR プラットフォームとインテル® データセンター・テクノロジーを用いて、視聴者が自宅のソファーからランウェイに瞬間移動したような錯覚を起こさせるほど自然な視聴体験を提供した。 (提供: Voke 社)

Oculus ストアからダウンロードできるTrue VR アプリに接続した VR ヘッドセットを着用することで、好きな角度でタッチダウンの迫力を味わうことができます。また周囲を見渡せば、スタンドで誰がピーナッツを投げているか、誰がビールをこぼしているかなども見ることができるのです。さらに VR ヘッドセットがない場合でもタブレットやスマートフォン、パソコンなどで 360 度のパノラマビューを見ることができます。

このような環境を実現するためには、さまざまなハードルをクリアしなければなりません。例えば NFL の場合では、48 台のカメラで記録した映像に色の補正を行い、つなぎ合わせた後、リアルタイムでレンダリングして配信するのです。それには膨大なデータを処理できる能力が必要で、インテル® Xeon® プロセッサー搭載サーバーがフィールドのデータをリアルタイムで視聴者に届けています。

ジャヤラム博士はこう語ります。「一般的な試合の場合、だいたい毎秒 40 から 50 ギガのデータをキャプチャーしています。これは一般的な携帯電話のメモリを 8 秒で使い尽くすほどの量です」

VR の未来

True VR を用いた VR 体験はすでにリッキー・マーティンのコンサート、ニューヨーク・ファッション・ウィーク 2016、2016 年の NCAA(全米大学)男子バスケットボール・トーナメントにおけるファイナル 4、NBA大学フットボール、インドで人気が高いスポーツ、カバディ・ワールドカップ 2016 など多くのライブイベントで活用されています。最近のNFL との提携により、注目度が高い 4 つの試合でリアルタイム VR 映像を配信し、今後は試合後のハイライト映像を VR で配信することとなりました。

True VR、そして昨年買収した Replay Technologies を管轄するインテル・スポーツ・グループのホッパーは、「スポーツのデジタル化はまだ始まったばかりです。皆で協力すれば、この没入型スポーツビジネスという新しい分野を大きく成長させるイノベーションを起こすことができます。過去に想像し得なかったレベルで、パーソナライズ化され完全にその世界に没入できる VR 体験をファンに提供し、スポーツリーグやチーム、放送業界すべてが、かつてない方法でファンのゲームに 抱く情熱に応えることができるようになるのです」と語っています。

 

Voke VR 製品写真提供 : Scott A. Miller

 

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