仮想現実

仮想現実で白熱の試合を体験

Jason Johnson Freelance writer and editor

NHL、NASCAR、MLB、NBA は、かつてない観戦体験をもたらす新たなテクノロジーの導入を検討しています。

仮想現実と聞くと、ソファに寝転んで空想の世界に没頭するゲームマニアをイメージしがちですが、実はスポーツ観戦のあり方を一変させる可能性を秘めています。

例えば、先月の全米オープンゴルフで行われた仮想現実ライブストリームはどうでしょう。視聴者はティーショットを打つジョーダン・スピースの真後ろから観戦することができました。 あまりの近さに、彼のドライバーヘッドが鼻先数センチをかすめるような感覚を味わった人もいたはずです。

仮想現実には、まるで自分が競技に参加しているかのように感じさせる力がありますが、それだけではありません。どんなふうに観戦するかをかつてないレベルでコントロールすることもできるのです。

一般の人々が仮想現実に期待を寄せるようになったのは、その臨場感が理由でしょう。自宅で椅子の背もたれにゆったりと体を預けながら、遠く離れた場所で繰り広げられている競技の興奮を実感できるからです。

インテルのデベロッパー・エバンジェリスト、エリック・マンションは、「VR ヘルメットを被ると、自宅のリビングにいながら、まるでシカゴ・ブルズの試合のコートに立っているような感覚が得られるのです。これが仮想現実のおもしろさですね」と説明。彼は、VR ヘルメットには熱烈なスポーツファンを取り込むビジネスチャンスがあると見ています。

「スーパーボウルの転売チケットが 2,000 ドルで売られていることを知り、なぜスポーツ観戦にこれほどばかげた金額をつぎ込むのか分からない、と言う人も確かにいます。 しかし、消費市場にアピールするには、VR ヘルメットがこれに相当する価値を持つようにならなければなりません」とマンション。

現在、仮想現実を手がける企業やスポーツ競技場はこれをチャンスと捉え、 まるで競技場に身を置いているかのようなこの体験を、あらゆるスポーツシーンで実現しようと精力的に取り組んでいます。

プロセスは通常のスポーツ放送と同様ですが、仮想現実の場合は、特殊なカメラを使用して試合の映像を立体的に捉え、インターネットを通じて視聴者に配信します。 視聴者は VR ゴーグルを装着することで、別の場所にいるようなイリュージョンを体験できるのです。

NHL、NASCAR、MLB、プレミアリーグ、NBA などのスポーツリーグでは、仮想現実による放送の実用化に向けて動き出しています。 仮想現実が次の大きなイノベーションであるとすれば、おそらくスポーツの分野から実現することになるでしょう。

「とにかく『信じられない!』という言葉が飛び出しますね」と語るのは NextVR のブラッド・アレン。カリフォルニア州ラグナビーチに位置する NextVR は、オンデマンド仮想現実放送の会社です。 創業 6 年を迎える NextVR のエグゼクティブ・チェアマンを務めるアレンは、自らもスポーツファンであり、仮想現実とスポーツの未来に心からわくわくしています。

NextVR の主な収益源は、あらゆる種類のスポーツ競技を 6K 解像度カメラでパノラマ撮影し、世界中の仮想現実視聴デバイスに配信する特殊技術「レンズ to レンズ」です。

1 つのアングルからしか撮影しない従来のワイドスクリーン・カメラとは異なり、NextVR のマルチディレクション・カメラ装置は、試合を 360 度の立体映像で撮影。

VR ゴーグルを装着した視聴者は、コートの端から端へと動くボールを追いながら頭を左右に振ることで、バスケットボールの試合をコートサイドで観戦しているような感覚に陥ります。

その現実離れした感覚についてアレンは、「自宅でテレビを見ているとは思えない」と語ります。 「自宅のどこで観戦していようと、自分がまるで試合会場にいるような気分になるのです」

このテクノロジーの魅力は、時間と距離の制約を超えて試合の現場に瞬間移動できること。そして、ケーブルテレビのチャンネルでカメラをコントロールできる点です。

仮想現実によるスポーツ観戦には、より積極的な参加が求められます。ソファでうとうとしながら長時間フットボールの試合を観るといった観戦スタイルでは十分に楽しめません。 観戦方法を細かくコントロールできるため、視聴者は、観たいものを観たいタイミングで観ることができるのです。

また、仮想現実のカメラは、ビデオゲームのカメラと同様にインタラクティブに操作できます。 「VR ゴーグルを装着したら、ある位置から別の位置へカメラを切り替えることができます」とアレンは説明します。

例えば、バスケットボール・アリーナのスコアラー席では近すぎて観戦しにくいというなら、上からコート中央を見下ろすような視点に変更できます。

応援するチームが攻撃するときはバスケットゴールの後ろから観戦する、といったことも可能です。このように、視聴者が視点をいくつも切り替えることができるのです。

切り替えはボタンを押すだけでできますが、そこには、まだまだ豊富な機能を搭載できる余地もあります。

アレンは、視聴者の頭の中を捉える優れたユーザー・インターフェイス「バック 180」にも言及しています。

これは、スポーツイベントの視聴に欠かせない優れものというわけではありませんが、架空のチームの成績を競うようなファンタジー・スポーツ、選手やチームの統計データ、ソーシャルメディアなどのアプリケーションを装備するのに使えます。 実現すれば、ひどい誤審に対して怒りのツイートを送信するときも、いちいち VR ゴーグルを外す必要はありません。

 

こういったアプリケーションを視聴者の正面に配置してインタラクティブに操作できるようにする方法は、目下開発中とのこと。

NextVR による放送は試験段階のため、この放送を体験するには、特定の場所にある VR 視聴室に足を運ぶしか方法がありません。

現時点で実用化されている仮想現実対応ヘッドセットといえば、音声コマンド機能を備えたややプレミアムなタブレットと携帯電話があるだけですが、「将来的には、ホログラムやエアタイピングのような機能を備えたハンドヘルド・コントローラーが登場するでしょう」とアレン。

また、ヘルメットやゴーグルを装着すると周りにあるものを感じ取れるようになる拡張現実コンポーネントや、インテル® RealSense™ テクノロジーを統合した仮想現実装置が登場する可能性もあります。

仮想現実用のハードウェアはここ 2~3 年で大きく発展したとはいえ、理想には程遠いのが現状です。実用化にはまだまだ時間がかかります。 マンションは、特に 1 回の視聴に数時間かかるスポーツイベントには慎重な見方を示しています。

「フットボール・ヘルメットを被り、その上にレンガのような装置を 5 時間も固定した状態でいることを想像してください。 誰かが VR ヘルメットの iPhone 版のようなテクノロジーを発明してくれない限り、ハードウェアは普及しないでしょうね」(マンション)

 

 

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