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EdTech が切りひらく、教育の新しい在り方とは?

Intel Japan Writer

日々、進化を遂げる情報通信関連のテクノロジーは私たちの生活を大きく変えつつあります。しかし、テクノロジーの普及が遅れている業界も存在します。今回、取り上げる日本国内の教育業界もそのひとつ。教育業界におけるテクノロジーの普及を「Education+Technology」、略して「EdTech」と称し、変革の機運を加速させるべく取り組む人々がいます。

教育分野におけるオンラインマッチングサービス「manabo」を手がける株式会社マナボ代表取締役社長の三橋克仁氏もその一人。教育業界のさまざまな老舗企業との連携を模索しながら EdTech の普及に全力を注いでいます。今回はその三橋氏に、教育業界におけるテクノロジー活用の課題や日本独特の問題、将来の展望などについてお話を伺いました。

戦後から変わらない日本の教育システムは世界の潮流についていけるか

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テクノロジーの進化とともに社会で必要とされる人材の質が大きく変貌を遂げ、世界的に STEM(Science、Technology、Engineering、Mathematics)教育が重要とみなされつつあります。今後、IoT の本格的な到来や A.I. の普及が確実視される中、これまで以上に STEM 分野のスキルを習得した人材が求められるのは間違いないでしょう。

この動きは諸外国だけの話ではなく、グローバルでのビジネスを前提とした現代において日本も例外ではありません。また、他の先進国に先駆けて「超高齢化社会」に突入することが見込まれる日本は今後、これまでの前例が通用しない「先が見通せない時代」に突入していくことになります。そうした時代に必要とされるのは過去の経験をベースにするのではなく、新しいやり方を創造する「クリエイティブ」なスキル。これまでのように単に記憶してそれを頭から引き出すようなことは検索エンジンに任せれば良いわけで、もはや価値あるスキルとは判断されない時代へと変わりつつあるのです。

「しかし、今の日本における教育システムはこうした大きな変化に全く対応できていません。戦後に確立された教育システムでここまで来てしまっています。」と三橋氏は現在の日本の教育に大きな危機感を抱いています。

大学、高等学校の教育の大改革を始め、「教育再生」という名目で、現在改革に向けたさまざまな選択肢が議論されていますが、中でも大きく話題となったのが「センター試験」の廃止というトピックでした。センター試験の前身である共通一次試験が始まったのが 1978 年。それ以降、大きな変化もなく毎年変わらない教育が提供されてきました

その間にインターネットやコンピューターが急速に普及するなど、世の中は大きく変わりました。本来であれば、その変化に合わせて教育の在り方も見直されなければなりません。しかし、日本国内における教育の大方針は、センター試験を含めた大学受験での合格という「ゴール」を目指すにとどまる画一的なシステムとなってしまっています。これは今となっては戦後から続く悪習でしかなく、世界の潮流に完全に遅れをとっている、と三橋氏は厳しい口調で語ります。

個々の生徒の「得意」を伸ばすためにテクノロジーができること

「その状況を打破する可能性を有するのが EdTech。しかし、従来の在り方を前提とした導入ではなく、根幹から変えていく必要がある」と三橋氏は続けます。

従来の発想だと、既存の学校教育を土台として、そこにテクノロジーを導入するという考えにとどまり、大きな変革には繋がりません。そうではなく、そもそもの教育の在り方を再考し、その上でテクノロジーをどのように教育に活用すべきか、というところから制度設計を始めることが未来を見据えることになります。

「私たちが提唱しているのはシステム開発の分野における『疎結合』的な考え方で教育を提供していく方法。要するに、学びのための機能を要素分解し、個々の生徒の能力や興味に応じて求められる機能を提供するスタイルです。例えば、数学が得意な生徒がいたとして、学習の進度に応じてどんどんとシステムが問題を提供する。問題を解く中でつまずいた時は、予備校の『チューター』のような学習アドバイザーがその状況をサポートする。生徒の状況に応じて柔軟に対応することで、生徒の学びはどんどん進んでいくことになります。このように各生徒の「得意」な部分を伸ばしていくことができれば、多様な人材育成に繋がるのではないでしょうか。

また、こうした教育が当たり前となると、先生に求められる役割もこれまでとは大きく変わることになります。教壇で数十人の子どもたちを前に同じ授業をする、というような役割は必要なくなり、各生徒の状況を観察しながら、必要に応じて学習の助言をおこなう相談相手のような役割に移っていきます。テクノロジーでできるところはテクノロジーに委ね、人間にしかできないことを先生がおこなう時代がやってきます。」(三橋氏)

「家庭教師の UBER」と呼ばれる manabo

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EdTech の視点から、「疎結合」的な概念で教育における機能の分化を提唱する三橋氏が手がけるサービスが「manabo」です。このサービスのアイデアは三橋氏自身の学生時代の予備校講師経験から生まれました。受験勉強などをしている生徒はわからない問題にぶつかった時にすぐに解決したいと思うものです。しかし、従来の仕組みでは、時を選ばず発生するそうした状況を解決する方法はありませんでした。その課題を解決すべくできたのが manabo なのです。

勉強をしている生徒が「わからない」に直面したその時に manabo を利用することで、そこに登録されている大学生などの講師によるサポートをオンデマンドで受けることができるというものです。リソース提供側の大学生らは自身の空き時間を利用してこのサービスで収入を得ることができるため、「家庭教師の UBER」と呼ばれることもあります。

UBER というと、シェアリング・エコノミーの概念をもとに、テクノロジーで既存業界に風穴を開けるような印象を抱く方も少なくないと思いますが、manabo はそうした動きとは異なるようです。

「家庭教師や塾など、教育のビジネスにおいてはこれまでユーザーから多大な信頼を受けてきている既存の企業が多く存在します。これらの企業はこれまで、既存の仕組みとカニバリゼーションを起こすことを恐れてテクノロジーの導入に二の足を踏んできているところが少なくありませんでした。

そのような企業が、私たちのようなテクノロジー企業が提供するサービスをプラットフォームとして利用してもらうことでシナジーが発揮できます。例えば塾から帰って、家で復習するときのサポートとして学生が manabo を使うといったイメージです。それによって既存の塾だけでは実現できなかった、家での勉強のサポートまでカバーできるようになります。」(三橋氏)

manabo の詳細についてはこちらをご覧ください。

「既存の教育関連企業が長年のサービス提供で築き上げた、磨き抜かれたコンテンツやノウハウは一朝一夕で追いつけるものでもありませんし、私たちもそれに代わる新たなサービスとしての立ち位置を求めるべきではない。既存の教育サービスによる良質なコンテンツ、ノウハウの提供を支える『スーパーサブ』、縁の下の力持ち的な存在として、私たちは技術力に磨きをかけ、よりよいサービスを生徒に届けていくことが今の使命だと考えています。」と三橋氏は言います。

テクノロジーの進化とともに拡大していく EdTech 業界

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manabo では現在、日々蓄積している問題解決のプロセスを動画化したアーカイブをベースに、文字画像解析やディープラーニングの機能を活用し、生徒の課題に合わせた情報をレコメンドするような機能をはじめ、最新テクノロジーを活用した機能追加を日々検討しているとのことです。

EdTech 界隈では日々新たなテクノロジー企業の参入が続いており、今後は競合サービス間での切磋琢磨が期待できそうです。これまでテクノロジー未開の地とすら言えた教育の世界に、EdTech の推進が、日本の教育の在り方、社会に必要とされる人材を育てる教育プロセスへの変革をもたらしつつあります。

 

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