教育

テクノロジーで街の再生に挑む Sweet Water Foundation

Julian Smith Writer

貧困と犯罪で荒廃する故郷を目の当たりにした 1 人の男性。彼が立ち上げたのは、農業プロジェクトを柱とし、教育、コラボレーション、援助を通じてコミュニティーの再建を目指す団体でした。

15 年前、大学を卒業したエマニュエル・プラット氏は、人生の大半を過ごしたシカゴのサウスサイドに戻りました。そこで目にしたのは、懐かしい街が貧困と衰退で荒廃している惨状でした。

「子どものころによく行った場所はもうありませんでした」とプラット氏。

再び街を去ることも考えましたが、彼は大学院で学んだ建築と都市計画の知識を実践することにしました。 2009 年、彼は Sweet Water Foundation を共同で設立。これは、ハイテク都市型農業を柱として、廃棄物を資源に変えることでコミュニティーの再建を目指す団体です。

プラット氏は、活動を通じて大人や子どもに科学とテクノロジーの知識を伝えるだけでなく、自分たちで食料を育てることで、文字どおり心と体を養い、コミュニティーの回復力を高めることができると考えています。

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活動の中心となるのが、かつてはサウスサイドの靴倉庫だった施設であり、研究および教育の場となるアクアポニックス・イノベーション・センターです。 2011 年にはシカゴ州立大学と提携し、高価なアクアポニックス・システム (野菜と魚を同時に育てる再循環型システム) を導入。さらにプラット氏は、インテルの協力を得てセンサーとテクノロジーを取り入れ、自然光のないコンテナの中で食料を育てるためのデータを収集、視覚化しました。

このシステムでは、1,000 ガロン (約 3800 リットル) のタンク 4 基にそれぞれ数百匹のティラピアを入れ、アンモニアを豊富に含むティラピアの排泄物をレタスやフダンソウ (ビートの一種) などの植物の肥料として使用します。さらに、植物の根が水をろ過することで、自立型のエコシステムが生まれる仕組みです。

こうした活動の成果もあり、街は一変しました。

アクアポニックス・イノベーション・センターの活動が軌道に乗ったのは、食品を生産して地元のシェフや店舗に卸しているからでもありますが、プラット氏によれば、同センターはより大きなコミュニティーの形成を目指す Sweet Water Foundation の目標達成にも貢献していると言います。

施設には毎年数千人の地元の学生や住民が訪れ、ガーデニング、エコロジー、栄養学に関する実地演習を受けています。 There Grows the Neighborhood という見習いプログラムでは、道を踏み外しそうな若者に大工技術などを教えます。

「私たちは近隣に住む各世帯と交流し、持続可能な方法で自給自足する方法を紹介しています。ちなみに、このプロジェクトは市と米国農務省および教育省のサポートを得ています」と説明するプラット氏。

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さらに、エングルウッド / ワシントンパーク地区内の 2 エーカーの土地を使って、ペリー・アベニュー・コミュニティー・ファームという活動も展開。ここは、かつて悪名高い少年院だったところです。 現在、この都市型農場では、ピークシーズンで数百人分の食料を生産。

通りの反対側では、家主を失った 3 ベッドルームの家が Think-Do House として生まれ変わり、地元のアーティスト、マックス・サンシング氏のわくわくするような壁画が施されたコミュニティー・センター兼集会所になっています。

サンシング氏の作品は 3 つの Think-Do Pod という輸送コンテナを再利用した施設にも描かれており、この施設には、栽培と研究のための小型アクアポニックス・システムが設置されています。

コンテナスペースを上手に活用した Think-Do Pod
コンテナスペースを上手に活用した Think-Do Pod

160 平方フィート (約 15 平方メートル) のコンテナスペースに据え付けられた魚用のタンクには、マイコンボードの ArduinoRaspberry Pi をベースとするセンサーが設置されています。 こうしたオープンソースの安価なテクノロジーは、市民活動にはぴったりだとプラット氏は言います。

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Think-Do Pod にはずらりとセンサーが取り付けられており、「Aquapons (アクアポンズ)」と呼ばれる意欲的なアクアポニックス・プログラムの参加者たちは、pH、アンモニア、硝酸、CO2 レベルから、温度、照明、ポンプ流量までを、遠隔からモニタリングできます。テクノロジーのおかげで、別の参加者やアクアポニックス・システムとデータを共有し、植物の成長速度の最適化に協力して取り組むことも可能です。

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コンテナの外装には、サンシング氏の落書き風の作品に、大工見習いの若者たちが製作した木工作品を組み合わせたコラボレーション・アートが施されています。その材料となる木材は、建設用ガラスの輸送用梱包材の切れはしで、コンテナの基本的なリノベーション・コストは 10,000 ドル~ 15,000 ドル (約 120 万~180 万円) です。

「空のコンテナがあちこちに放置されていることに気づいたのです。

コンテナを模様替えするというアイデアを最初に思いついたとき、みんなに頭がどうかしたのは?と言われましたよ。そうかもしれません。いい意味でね」とプラット氏。

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Think-Do Pod の内部

意外な場所で農業を実践する Sweet Water Foundation ですが、活用しているツールは Think-Do Pod だけにとどまりません。 公立学校の教室、教会、コミュニティー・センターの使用されていないスペースを転用し、オープンソースのハードウェアを使った Urban Agriculture STE[A+]M Hubs と呼ばれる都市型農業施設のネットワークも育てています。今はまだ規模が小さいものの、確実に成長しつつあるネットワークだと言えるでしょう。

「活動を支える思想の根幹にあるのは、ネットワークを拡大するという考え方です」と語るプラット氏は、こうしたコミュニティー活動を、キノコを形成する菌糸ネットワークに例えています。

Sweet Water Foundation は、Mycelia Project (菌糸プロジェクト) と呼ばれる協力的で科学的テーマを与えられたアートと文化的なイベントを展開し、学生たちにイノベーションとインスピレーションを共有できる場を提供しているのです。

 

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