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サンダンス映画祭 2016 で注目を集めた VR テクノロジーとは?

Jason Lopez Writer

スチームパンク・シリーズ (スチームパンクは SF のジャンルの 1 つ) にヒントを得た映像が VR ラボから生まれ、サンダンス映画祭に登場。研究者たちは今、VR 映画制作をさらに普及させるための糸口を見出そうとしています。

銀幕の名作映画は、しばし現実を忘れさせてくれます。しかし、今年のサンダンス映画祭で観客を魅了したのは、最新トレンドのビジュアル・ストーリーテリングです。また、バーチャル・リアリティー (VR) 映画の制作ツールを使ったアクション・コントロールも披露されました。
※ストーリーテリングとは、印象的な体験談やエピソードを物語として引用することによって印象づける手法。

大勢の観客が VR ヘッドセットを装着し、30 以上の VR 体験に没入したのです。 中には、鳥のボディースーツで、サンフランシスコ上空を飛ぶ気分を味わった人もいます。

映画祭特製の VR アプリも発表され、イベントに参加できなかった人も、新しい 360 度動画への没入体験ができるようになっています。

エンターテインメント業界紙 Daily Variety は、今年のサンダンス映画祭を“VR のお披露目パーティー”と称しました。

同紙のヤンコ・ルトガー氏は、「1 年前は、VR と言えば、ほとんどの消費者には手の届かない未来のテクノロジーでしたが、 今ではすっかり変わりました。Samsung が昨秋、VR ヘッドセットの Gear VR を発売し、今から 2 カ月後には Oculus が Rift ヘッドセットを発売する予定です」

米国最大のインディペンデント映画祭であるサンダンス映画祭で、映画と情報テクノロジーとの接点にフォーカスした「ニュー・フロンティア・プログラム」が発表されたのは、10 年前のことです。 以来、このプログラムの注目分野は、映画を作り再生するためのデバイスとしてのパーソナル・コンピューターやスマートフォンから、VR を使って感情に直接働きかけ、観客を引き込む新しいテクノロジーの世界へと広がりを見せています。

サンダンス映画祭のニュー・フロンティア・ラウンジで紹介された没入体験の 1 つが、リヴァイアサン・プロジェクトです。 第一次世界大戦下の世界を舞台とするスコット・ウエスターフェルド氏のスチームパンク・シリーズをベースにした映像「Leviathan」で、観客たちは空飛ぶ巨大クジラを操る感覚を味わいました。

VR デバイスを装着すると、物語の世界にすっかり入り込んだような感覚になります。遺伝子操作された生き物や、古めかしいオブジェクトが周囲に現れ、手や頭を動かすと、自分がそれらを動かしているような感覚になるのです。

USA Today 紙のアンドレア・マンデル氏は記事の中で、「ヘッドセットを付けた私は 19 世紀の科学者になって空飛ぶクジラに乗り、遺伝子操作でクレイジーな生き物を生み出しました。 楽しい経験でしたが、少し気分が悪くなりました。もちろん 3D のせいもあります。念のため」と書いています。

「VR 映画がサンダンス映画祭にデビューしたのは昨年ですが、VR の映画制作はまだまだ始まったばかり」と語るタウニー・シュリエスキーは、 VR 体験を手がけるインテルの科学研究員であり、映画祭では、インテル® RealSense™ カメラ・テクノロジーなどの新ツールを紹介しました。インテル® RealSense™ カメラ・テクノロジーは、コンピューティング・デバイスに奥行き認識機能を与え、VR 体験を生み出すために使われます。

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デジタル・ストーリーテリング体験を手がけるインテル科学研究員のタウニー・シュリエスキー (サンダンス映画祭 2016 にて)

まだ標準的な機材、編集ソフトウェア、VR メディアプレイヤーなどがないことが、映画制作者たちの悩みだと指摘するシュリエスキーは、

「VR コンテンツの制作システムを作るには、ハッキングでもしないと無理でしょう。クリエイターたちは、既存のツールを寄せ集めて、新しい形にまとめているのが現状です」と説明します。

映画学校でもインターネットでも、360 度動画制作では、こうした DIY (Do It Yourself) 手法が主流となっています。クリエイターたちは、共有化されたオープンソースのデザインを使って、球状のカメラリグを 3D プリントするのです。

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こうした手法は一時的なものであり、VR 映画制作に特化した新しい装置やデジタルツールが登場すれば、すぐに進化するだろうとシュリエスキーは考えています。この変化を促すため、彼の研究チームでは、ビジュアル・ストーリーテラーたちが VR 体験を生み出すために既存テクノロジーをどう活用しているかを研究しています。

「クリエイターが使えるコンテンツ制作の VR ツールセットを見つけて紹介したいと思っています。そうすればハッキングの必要はなくなります。私の研究の一番の目的は、どんなツールが必要かを理解し、インテルのテクノロジーがそこにどう貢献できるかを見極めることです」とシュリエスキー (詳細はオーディオ・ポッドキャスト・インタビューをお聞きください)。

シュリエスキーとデジタル・ストーリーテラーたちの共同作業により、現在の問題を軽減する効率的な技術が実現すれば、 VR クリエイターたちはプロ、アマを問わず、安価なツールを簡単に操作できるようになるでしょう。 この研究の試金石となるのが、リヴァイアサン・プロジェクトだったのです。

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VR 好きの方なら、大勢の観客の頭上をクジラが飛んだ 2014 年の国際コンシューマー・エレクトロニクス・ショー (CES) を思い浮かべることでしょう。 World Building Media Lab のディレクターであり、南カリフォルニア大学教授でもあるアレックス・マクドウェル氏率いるリヴァイアサン・プロジェクトでは、

現実と拡張現実を融合した没入体験と、触覚フィードバック、モーション・トラッキングにより、「Leviathan」三部作をリアルに体感できます。ファンタジーの世界にどっぷり浸り、クジラの姿をした巨大戦艦に乗って空を飛ぶこともできます。

「今回のプロジェクトでは、ユーザーと物語空間との関係性を広げました。ユーザー自身が主体的に物語に参加できるようにしたのです。決まったストーリーが設定されているのではなく、それぞれの参加者のアクションで、展開が変わるようになっています」とマクドウェル氏。

デジタルアート、特にインディペンデント映画の制作では、PC でアイデアを描き、動画を編集して、YouTube や Vimeo のようなインターネット・サイトで共有するのが一般的です。

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ところが今回、サンダンス映画祭に集まったフィルムメーカーたちには、インテル® RealSense™ カメラを搭載したタブレットを使ってストーリーを追い、登場人物たちとインタラクティブに関わる方法が披露されました。タブレットを使えば、現実の世界と融合した仮想世界リヴァイアサンのクジラと対話することができます。

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YouTube の「Just Between Us」で有名なゲービー・ダン氏も、サンダンス映画祭 2016 で「Leviathan」の VR を体験した 1 人です。

「Leviathan」のアート・ディレクター、ブライアン・チャン氏はサンダンス映画祭での体験を、「この世界では、ストーリーそのものに手を加えながら遊ぶことができます。ストーリーが固定されている本と違って、さまざまな場所で、さまざまな対話が可能なのです」と説明します。

プロジェクトが掲げている非常に高い目標の 1 つは、仮想世界の自律的な発展です。

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リヴァイアサン・プロジェクトのアート・ディレクター、ブライアン・チャン氏 (サンダンス 2016 会場にて)。

「AR (拡張現実) や VR のヘッドセットを使えば、さまざまなストーリーの中に飛び込んで、リアルに体感できます。この研究プロジェクトをインテリジェントに発展させて、ゆくゆくはクジラやゴンドラに人が住めるようにしたいと思っています」とチャン氏。

多種多様な物語が期待できそうですが、研究者たちによれば、これまでに生み出された成果は、まだほんの実験段階に過ぎないと言います。

「リヴァイアサンは生きた実験室です。私たちは、メディアの未来を担うフィルムメーカー、クリエイター、学生たちに、仮想現実に触れてもらい、彼らから学んでいます。そうすることで、人々が VR 環境でどのようにストーリーを作り、どのように対話するかがだんだん分かってくるのです」とシュリエスキーは語っています。

 

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