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世界の食料供給を支えるスマート農機

Jason Lopez Writer

AI や ロボット工学を利用したスマート農機によって、農家は 2050 年までに食料の生産量を 70% 高め、増え続ける世界人口に対応できるようになるでしょう。

世界の人口が増えるにつれ、20 億人分の食料供給の増加、世界的な人手不足、農作物の価格低下といった課題に直面する農業は、ますます厳しい状況 に置かれつつあります。

しかし、人工知能 (AI) やコンピューター・ビジョン (画像センシング技術を活用してロボットの目を作る研究分野)、クラウド・コンピューティング、モノのインターネット (IoT) を活用した農業技術によって農業機械は変革され、農家はこれまでになく多くの食料を生産できるようになっています。

「10 ~ 20 年以内には、農場にいる人の数がごくわずかになるのではと思っています。そうなれば、世界的に重要な影響をもたらすことになります。例えば、発展途上国で収穫高が向上するでしょう。もはや農家主導ではなく、ロボット工学主導で変革が実行されていくと考えられます」と語るのは、本社をニューメキシコ州ロスアラモスに置く Descartes Labs 社 (本社: ニューメキシコ州ロスアラモス) の CEO、マーク・

ジョンソン氏です。同社では AI を 利用して衛星画像を 分析しています。

発展途上国では、人口のおよそ半分が何らかの形で農業に関わっており、飢餓問題の解決や生活水準の向上のためには、ロボット工学、IoT、クラウド・コンピューティングなどのテクノロジーが不可欠です。

新しい農業技術の採用

1800 年代に刈り取り機が登場するまで、穀物の刈り取りと収集にはかなりの人手が必要でした。 その後、脱穀機の登場によって、もみ殻から穀物を機械的に分離できるようになり、骨の折れる作業が軽減されました。 さらに、複数の作業を実行できるコンバインによって、生産性が向上しました。

こういった一連の農業の進歩が、現在の技術に引き継がれています。

「良質な穀粒だけを抽出するのは、手作業はもちろん、機械を使っても不可能です。しかし、ビッグデータ、人工知能、ロボット工学を融合すれば、個々の粒を 1 つずつ抽出し、良いものと悪いものを選別できます」と、スウェーデンの企業 BoMill 社 の CEO を務める

カリン・ベーリン氏は指摘します。

BoMill 社の TriQ という選別機は、穀物を狭い通路に通し、そこでコンピューター・ビジョンによって各粒を分析。悪い粒を良い粒から分離します。 このデバイスは冷蔵庫ほどの大きさで、1 時間に 3 トンの小麦を処理できます。

良い粒と悪い粒を選別する BoMill 社の製品
穀物の分析と選別を行う BoMill 社の TriQ 選別機。 写真提供: BoMill 社。

ベーリン氏によると、北米では収穫損失による農作物の廃棄で毎年 40 億ドルの損失があるため、これは大きな差になります。

「控えめにみても廃棄を 50% 削減できれば、相当な値になります。 また、言うまでもなく、世界的な飢餓対策にも応用できます」とベーリン氏。

自動化によって世界各地の食料生産者は、食料供給の向上、栄養の向上、コストの削減を図ることができるというわけです。

「当社は自動運転のトラクターを発注しました。どれほど役立つか楽しみです」と語るのは、インディアナ州リーズバーグにある Tom Farms 社 の CEO、キップ・トム氏です。 「現実問題として農業の現場は AI やロボット工学へと移行しており、そこに多くの投資が行われています」

と語るトム氏によると、米国におけるロボット工学の開発と導入は、元々カリフォルニア州の農産物生産地域で始まりまったもので、 近いうちに米国中西部のトウモロコシ、小麦、大豆などの一般的な農作物生産者が新しい技術を採用することになるだろうということです。

人手不足の解消

米国では、慢性的な人手不足 を補うために、農業ビジネスによってロボット開発が急速に推し進められています。 中南米の農業地域が北米の生産高に追いつくにつれ、これらの地域の農場労働者は次第に祖国で仕事をするようになり、米国の人手不足が生じています。

スマート農機はまだ導入され始めたばかりですが、「A Revolution Down on the Farm 」の著者である歴史学のポール・コンキン教授によると、ロボットで人手不足を解消するというアイデアは古くからあったそうです。

米国の農場労働力の大幅な減少は、 すでに 100 年以上前から始まっていたのです。 1870 年には米国の人口の約半分が農場で働いていました。 現在、農業に従事する米国の 労働力は 2% 未満です。

農業人口の減少は悪いことのように思われますが、人類の歴史の中で最大の好景気を引き起こしたこともあります。 食品の価格は暴落し、今も低価格のままです。 「現在の食費は平均収入の 10% 未満です」とコンキン教授。 かつて 1960 年の食費が 17.5% (米国農務省による数値) であったことを考えると、これはかなり低い数値です。

展示中の脱穀機トラクター
穀物をもみ殻から分離する脱穀機 (初期の農業イノベーション)。 写真提供: ジェイソン・ロペス氏。

コンキン氏はこう続けます。
「1940 年代までに劇的な変化がありましたが、 実際に景気が良くなるのは 1950 年~ 1970 年です。といっても、その変化があまりにも驚異的で、その渦中にいる人々は分析すらできませんでした」

というのも、1950 年~ 1970 年 の 20 年間に、農場の労働力が半減する一方で、総生産力は 40% も向上したのです。 農業以外の産業で 1 時間当たりの労働生産性が 2.5 倍に向上したのに対し、農場では生産高が 7 倍にも向上しました。

「今や、農業技術を使用して数千エーカーもの小麦を 1 人で収穫できます[using agricultural technology]。 刈り取り機からの進歩を考えると信じられないことです」とコンキン教授は語ります。

作業者の安全の向上

米国の 農業ビジネスの多くは、ロボット工学で農場の安全性を向上しようとしています。 農産物の摘み取りと処理は、刃物を手に腰をかがめて作物を切るという 動作を繰り返す必要があり、つらい作業です。

カリフォルニア州サリナスの Taylor Farms 社 は、 ロメインレタスの収穫とパッケージングを行う半ロボット・プラットフォームを導入するなど、独自の自動化プログラムを開発しています。

同社の自動収穫機担当ディレクターであるクリス・ロティッチ氏は、その設計の狙いについて、「農場の生産性と収穫高の向上、作業者のエルゴノミクスの改善です」と説明。さらにこう続けます。

「1 日に 8 ~ 10 時間も腰をかがめる重労働をやめて、今は機械に乗っています。 一日中地面で刈り取りをするのと比べたら、選択、分類、パッケージングを行う品質保証の仕事に移行した携帯電話工場のようです」

農場
ウォータージェット・システムを使用してロメインレタスを収穫する Taylor Farms 社。 写真提供: ジェイソン・ロペス氏。

ロティッチ氏によると、現在の自動収穫機の設計では、搭載しているコンピューターを使用して、1 平方フィートごとにデータの収集と分析を行います。

また、収穫機はウォータージェット・システムを使用してレタスを切り取ります。 コンピューターの「目」でレタスを検出し、ウォータージェットの水流で切るのです。 次に、ベルトコンベアーで収穫機プラットフォームの上に移動させたレタスを、作業者がパッケージングしていきます。 レタスは農場でリアルタイムに梱包され、すぐに市場に発送されるため、人の手が作物に触れることはほとんどありません。

「将来的には、プラットフォーム上にいる人間もロボットに置き換わり、自動運転の収穫機を監視するための要員 1 名だけが配置されることになるでしょう」とロティッチ氏。

正確な農薬散布

ロボットは、除草剤や殺虫剤の散布など、危険な仕事も行います。

Tom Farms 社のトム氏は、「ロボットの最も有効な利用法は何かと考えると、大いに納得のいく分野の 1 つが“危険な仕事”ということになります。 当社ではラベルに記載されている法律のレベルまで完全に従いますが、実際には農作業者や消費者に対する農薬の害をさらに抑えることができます」と語ります

化学物質の使用を抑えた高品質な食品を求める消費者が増える中、ロボット工学に基づく精密農業によって、これを満たす方法を提供できるというわけです。

Blue River Technology 社 (本社: カリフォルニア州サニーベール) の CEO であるジョージ・へラウド氏によると、農機にコンピューター・ビジョンや AI などの技術を融合することによって、除草剤を狭い範囲で雑草に吹きつけることができるようになると言います。

農場で稼動する農薬ロボット
栽培している植物に肥料を吹きつける場所を、ピンスポットに狙えるロボット噴霧器。 写真提供: Blue River Technology 社。

ヘラウド氏は、「除草剤耐性が 農業を脅かしており、現在

約 30 億ポンド (136 万トン) の除草剤が、増え続けるさまざまな耐性植物に対して散布されています。そのコストは毎年 250 億ドルになります」と指摘。

Blue River Technology 社のロボット噴霧器は、プロファイルのライブラリーから植物を識別し、基本的にインク・ジェット・プリンターのように微量の除草剤を不要な雑草の上に噴出する仕組みです。 また、作物の肥料を必要なところに、必要な植物の横だけに、必要な量をピンポイントで撒くこともできます。「これにより、使用する除草剤の量を 5 分の 1 から 10 分の 1 に削減でき、同様に肥料も減らせるのです。

[With robotics]「ロボット工学を活用すると、より効率よく機器を使用できるようになり、より多くのことを実行させることで、機器そのものを削減することもできます」とヘラウド氏は説明します。

生産性の向上

農業技術の歴史を振り返ってみると、生産性が経済成長のカギを握ることは明白です。

「この 10 年間、世界的な需要は 1 年当たり 10 億ブッシェル (352 億リットル) も上昇し、40% の需要増加となりました。一方で、テクノロジーによる生産性向上により商品価格は低下しています」と語るのは、種子や作物の保護事業を展開する WinField United 社 (本社: ミネソタ州ショアビュー) の上級副社長兼 COO、マイク・バンデ・ログト氏です。

農薬の噴霧パターン
指定したパターンで除草剤を雑草に噴霧できる Blue River Technology 社の技術。 写真提供: Blue River Technology 社。

効率が向上して作物の価格が低下するなら、農家が存続するためには、新しいテクノロジーを採用し生産コストを下げるしかありません。

バンデ・ログト氏によると、生産性は農業の最も重要な指標の 1 つであり、テクノロジーに投資する農場経営と投資しない農場経営には大きな差がつきます。

「その差によって、食物が栽培される場所と人が食べるものの力関係が変化していくのです。」 (ログト氏)

 

 

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