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人間と機械が融合!ロボットでスポーツする未来へ

Zach Budgor Writer

逃げ場のない檻の中で 1 対 1 で戦う「ケージマッチ」から、レーザー銃を使ったサバイバルゲーム「レーザータグ」にまで、人工知能を駆使したロボットスポーツの世界が広がりを見せ始めています。

米国のケーブルテレビ・チャンネル「Syfy (サイファイ)」が 2013 年 に放送したロボット・コンバット・リーグ (ヒト型ロボットたちが戦う番組) の決勝は、重さ 1 トン、高さ 2.5 mもあるロボットたちがデスマッチを繰り広げるという、前代未聞の歴史に残る名番組となりました。

「Crash」と「Steampunk」という 2 体のロボットが激しくぶつかり合い、会場には、飛び散る火花と煙がいっぱいに広がります。リングの外では、エキソスーツ (外骨格スーツ) を着用してロボットの腕をコントロールする「ロボジョッキー」と、ジョイスティックを使ってロボットの脚をコントロールする「ロボテク」チームがそれぞれのロボットを動かしています。

バトルが 4 ラウンド目に突入した時、レースカーをテーマにした Crash は劣勢かに見えました。左手はケーブル 1 本でかろうじてつながっている状態で機能しません。しまいには、突然大量の火花が散り、右手が取れてしまったのです。

観衆がどよめく中、「Crash の腕がもげました!」とアナウンサーのクリス・エリコ氏が叫びます。

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2013 年、米国のケーブルテレビ・チャンネル Syfy の番組「ロボット・コンバット・リーグ」に登場したデイヴ・シンセルと娘のアンバー・シンセル。2 人はインテルのソフトウェア・エンジニアでもある。写真提供:Syfy チャンネル。

最終ラウンドが始まるまでの 20 分間、Crash を操縦する父デイヴ・シンセルと娘のアンバー・シンセルは、ボロボロになったロボットを大急ぎで復旧。そして迎えた最終第 4 ラウンド。Crash は、だらりと垂れ下がった腕先の壊れた拳を振り回し、動きが鈍りつつある Steampunk を打ちのめそうとしました。Steampunk もまた、体の向きを変えるのもやっとの状態です。結局最終ラウンドは引き分けに終わりましたが、30 対 27 でシンセル親子が操縦する Crash が勝利を手にしました。

デイヴ・シンセルは、2 時間に及ぶ戦いを振り返り、「高揚感と疲労感がないまぜになって、アドレナリンが出っぱなしでした」と語っています。インテルのベテラン・ソフトウェア・エンジニアであり、15 年前から、余暇を利用してロボットを作ってきた彼は、現在は、高度な物体認識と操作スキルを備えたヒト型ロボットの製作に取り組んでいます。

シンセルをはじめとするエンジニアの多くは、長年、人工知能 (以下、AI) や機械学習に関するプロジェクトに取り組んでいます。一方で、Syfy チャンネルが放送したロボット・コンバット・リーグは、本物のロボットを使用した競技に、とてつもなく大きな可能性があることを示しました。そして、こうした可能性は、世界の至るところに広がりを見せ始めています。飛行型ロボット競技、いわゆるドローンレースもその 1 つです。

ボットバトルの広がりに見る人間の破壊衝動

3月にドバイで開催されたワールド・ドローン・プリでは、世界でもトップレベルのドローンパイロットたちが一堂に会しました。

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また、6 月には、ヒト型ロボットがサッカーやレスキュー (災害現場の救助活動) の分野で性能を競い合うロボカップリーグが開催されました。

このほかに、AI とテクノロジーを駆使した無人のレーシングカーによる新しい競技、ロボレースもあります。PC World の記事によれば、モータースポーツとロボット工学が融合したロボレースは、今年後半からフォーミュラ E 選手権 (電気駆動のフォーミュラ・カー・レース) のサポートレースとして開催される予定で、10 チームがそれぞれ 2 台のマシンを使って 1 時間のレースを展開します。

すべてのチームが同じ仕様の無人カーを使用しますが、それらをコントロールする AI は、各チームが独自に開発。「アルゴリズムのバトル」とも呼ばれるこの無人ロボレースカー。その最高速度は時速 186 マイル (約 300 km) 以上になるとされています。

インテルも参戦した ViZDoom は AI ボット同士が FPS ゲーム「Doom」で対戦する大会です。参加者たちは画面に表示されている情報のみを頼りに AI に機械学習させ、画面の動きに応じてプレイするようにプログラムを作成します。こうして完成した AI ボット (AI エージェントとも呼ばれる) 同士が、デスマッチ形式の世界大会で対戦するわけです。

このような大会ではテクノロジーが大きな注目を集めますが、シンセルのような AI の専門家にとって一番の見どころは、人間の創意工夫です。彼はロボット・コンバット・リーグで繰り広げられるロボットたちのバトルもさることながら、それらを製作し、コントロールしている人間にも興味を持っています。

ロボット・コンバット・リーグにせよ、リモコンロボット同士の激しい戦いを魅力とする歴史あるテレビ番組、バトルボッツにせよ、人間は自分たちが作ったものをリングに立たせて、互いにボロボロになるまで戦わせることに夢中になります。現時点では、ロボカップやロボレースのような自律型マシンを使ったスポーツは、テクノロジーに非常に高い関心を持つごく一部の観客にしか受け入れられていないかもしれません。シンセルによれば、こうしたロボットスポーツの未来は、機械に強いパートナーと協働する有能なイノベーターの手にゆだねられていると言います。

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Hybrid Group 社出身のインテルのソフトウェア・イノベーター、ロン・エヴァンスは、ロボットエンジニアと頻繁にやり取りする中で、こんな未来を思い描いています。それは、ロボット同士の冷酷な戦闘とは無縁のロボットスポーツです。人間と機械の間に良好な関係を築いていくことでロボットスポーツはより有意義なものになり、その未来も明るくなるだろうというのが彼の考えなのです。

「ロボット同士を戦わせたいという気持ちを駆り立てているのは、我々人間の中にある破壊行動に対する生理的欲求です。マッチョなものへの憧れとでも言いましょうか。もちろん、いくらかはロボットに叩きのめされることへの恐怖もあると思います」とエヴァンス。

そんな彼が、自分自身にも攻撃的な衝動があることを認めたうえで、それを攻撃性の低い形で発散させるべく乗り出したのが、レーザータグ (レーザー銃を使ったサバイバルゲーム) のロボット版の製作です。

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エヴァンスが製作した IR Canon と呼ばれるプロトタイプは、Bluetooth 対応の低電力な装置で、安価な Sphero 社のハードウェア、オープンソース・ソフトウェア、PS3 コントローラー、ラバーバンドが使われています。リモコンで操縦し、戦車戦や戦闘機の空中戦に使用できますが、相手のマシンを傷付けることはありません。

ロボットスポーツの未来

エヴァンスは、ロボット・コンバット・リーグのような情け容赦のないロボットデスマッチによって、スポーツとコンピューター・エンジニアリングに欠かせないチームワークがなおざりになることを懸念しています。

「ロボット同士のバトルは第 1 段階です。今後、機械とそれを扱う人間とのやり取りは、さらに複雑になっていくでしょう。F1 レースと同様に、困難なタスクをやり遂げるためには、人間と機械が協力しなければなりません」とエヴァンス。

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また、ロボットスポーツを格闘技ではなく、パートナーシップが重視されるスポーツととらえることで、より多様な人材が集まるとして、こう続けます。

「ファースト・レゴ・リーグなどでは、ソフトウェア担当とハードウェア担当に分かれます。さらに、それぞれにエンジニア担当とパイロット担当がいます。ちょうどスタートレックのスコッティーとカークのような関係ですね。ロボットスポーツ競技は、多様なスキルを持つ人々が協力し合う、またとない機会だと言えるでしょう」

最高レベルのハードウェアやソフトウェアは新しい機能を生み出します。それらの機能に加えて、オープンソース・テクノロジーもまた、競技のレベルアップに向けてイノベーションを加速させる重要な役割を担っている、とエヴァンスは強調します。彼は、標準化したハードウェアとソフトウェアを使用することで、ロボットスポーツ競技がより身近なものになり、やがて主流になる日が近づくだろうと見ているのです。

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例えば、野球をするのに自分で木を削ってバットを用意しなければならないとしたら、どうでしょう。野球をやってみたいと思う人が減るのはもちろん、不公平感や不正が生まれる原因にもなりかねません。

オープンソースのハードウェアやソフトウェアを使用すれば、「条件は公平になり、結果は設計者やエンジニア、パイロット、ドライバーの腕にかかってきます。そこから本当の競争が始まるのです」とエヴァンスは語ります。

子どもたちが成長して、自分で AI マシンをプログラムしたり製作するようになれば、ロボットスポーツ競技が NFL や FIFA、NBA などのビッグリーグと肩を並べる日もそう遠くはないでしょう。

 

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