仮想現実

星屑になり宇宙を漂流する、新しい VR 体験

クリエイティブでエネルギッシュなイライザ・マクニット氏は、初の仮想現実 (VR) 作品「Fistful of Stars」の成功に続き、「Pale Blue Dot」で宇宙への新しい旅に観客をいざなおうとしています。

イライザ・マクニット氏の初めての VR 体験は、新しく開発された Oculus Rift DK1 ヘッドセットを装着して、胃がひっくり返るほどの激しいジェットコースターに乗るというものでした。コース頂上まで上り詰めたところで一旦停止されて、金属のレールを見下ろしたとき、マクニット氏は今にも落ちてしまいそうな感覚を覚えました。足が地に着いている感じがなかったのです。

「自分自身を全く違う世界に転送できるというアイデアに、非常に興味をかき立てられ、ここには大きな可能性があると思いました」とマクニット氏は振り返ります。

2016 年に、ニューヨーク州ブルックリンの Prospect Park Bandshell で、マクニット氏は自身初の VR 体験を公開。その「Fistful of Stars」の中で、ダンボール紙で作られたヘッドセットを装着した 6,000 人の観客が、スマートフォンを使用して仮想世界に入り込み、オリオン星雲での星の誕生から消滅までの星の一生を体験しました。

この体験は、ワシントン D.C. の ケネディーセンター、ラスベガスで開催された 2017 年のコンシューマー・エレクトロニクス・ショー (CES)、テキサス州オースティンで開催された今年のサウス・バイ・サウスウエストでも公開されました。

プラネタリウムの旅を強化したような「Fistful of Stars」が成功したことで、マクニット氏はさらに大きな臨場感あふれる体験を制作しようと考えました。

最新プロジェクト「Pale Blue Dot」では、観客が星の世界へ転送され、宇宙の中にいる自分たちを全く新しい視点から眺められます。

『Pale Blue Dot』は私たちの地球を知る旅です。観客は太陽系から離れて、恒星間に広がる星間空間の奥深く、宇宙の果てまで進みます。しかし、最後に青白い点、つまり地球 (後述する NASA がボイジャー 1 号から撮影した地球の写真「Pale Blue Dot」で、地球が小さな青白い点にしか見えなかったことから) を振り返ったとき、この広大な仕組みの中で人間がいかに小さな存在であるかを実感します。この体験を通じて、地球はもちろん、お互いに気を配ることがいかに重要かということも分かります。ここは私たちの唯一のふるさとだからです」とマクニット氏。

この仮想の旅によって、参加者はこれまで 2 次元でしか見ることのなかった場所を探検できるのです。有名な NASA が撮影した地球の写真「Pale Blue Dot」が神々しさを増し、よりリアルになっています。

「VR によるストーリー作成には、人々が体験を共有できるという点で将来性があります。まさに『Pale Blue Dot』によって、観客はともに宇宙を漂流し、これまで行ったことのない場所を探検し、星屑になったような気分を感じることができます」とマクニット氏。

イライザ・マクニット氏
宇宙探検のストーリーを作るメディアとして VR を使用するクリエイターのイライザ・マクニット氏。

VR への道

マクニット氏は、インテル国際学生科学技術フェア (ISEF) で 2 度の受賞歴があり、ニューヨーク大学ティッシュ・スクール・オブ・ザ・アートの卒業生です。最も情熱を傾けているのは、科学とストーリー作成の両方に共通する領域であるといいます。VR テクノロジーをきっかけに新しい方向へと進むまで、ほとんど映画の仕事をしていたマクニット氏は、こう説明します。

「VR で作るストーリーは、従来の映画で語るストーリーとは全く異なります。それが VR の極めて特殊な点です。VR によって、観客は場所を移動し、縮尺を変えて、それ以外の方法では探検できないような世界に没入することができます。VR は本当に感覚的な体験です。映画という従来の伝達手段を使用しているわけではないので、VR の構築は極めて異なる取り組み方です。単にシーンを構成するのではなく、世界を構築するとでも言ったほうがよいでしょう」

PBD_Duncan Ransom

音響設計者、構成者、エフェクト管理者から成るマクニット氏のチームは、個々の優れた能力を活用して、ストーリーを構成する各エピソードのさまざまな部分に協力して取り組みます。

「チームは、これから作ろうとしている世界に思いをはせて、その空間にいたらどのように感じるか想像を巡らせます。それから、その世界で観客が味わう体験を協力して作り上げていきます」

こう説明するマクニット氏の目標は、観客がプロに少しだけ操作を手伝ってもらいながら、自分で仮想世界を探検できるようにすることです。

「音響設計は、体験において非常に重要な要素です。音響設計によって、普段は気づかないようなさまざまな仮想世界の部分に観客が気づくのです。例えば、こちらに何かが見えていても、突然向こうで謎めいた不思議な音がすればなんだろう?と気になり、観客はそのストーリーの新しい展開に心を奪われるでしょう」とマクニット氏。

コンピューターで作業する男女
別世界を構築するかのように VR に取り組むマクニット氏のクリエイティブ・チーム。

 

一方、「Pale Blue Dot」プロジェクトの参加者は、体験の構築を支援する役割も果たすようになっています。このエピソードには、観客が自分で楽譜を作成できるインタラクティブな要素があるとして、マクニット氏はこう語ります。

「宇宙には、私たちが耳にする空気の振動で伝わる『音』はありませんが、それぞれの惑星からは極めて独特なプラズマ波が宇宙空間に放出されており、それを独自の『歌』として聴くこともできます。その『歌』をリアルに再現したいと考えました。そこで、『Pale Blue Dot』では、観客が各惑星の歌を歌い、宇宙のコーラスを作りあげる体験を用意したいと考えたのです」

体験の構築

現在開発中の「Pale Blue Dot」は、2018 年の初めに試験的に公開される予定です。

マクニット氏のチームは、クリエイティブな要素を総動員して、太陽系をめぐる度肝を抜くような旅を実現しようとしています。その作業を進める中で、マクニット氏は最終作品を望みどおりに完成させるためにインテルと連携しました。

この連携は、マクニット氏が CES でインテルのブースに「Fistful of Stars」を展示したことをきっかけにスタートしたものです。CES では、インテルの VR マーケティング戦略担当者リサ・ワッツとともに、Oculus ヘッドセットを参加者に装着してもらい、将来の取り組みについて議論しました。結果は完璧でした。

「世界は実に多次元になりつつあります。もはや現実世界の制約を受けることはありません。インテルはマクニット氏のようなクリエイターを支援できるツールの提供方法を模索しています。VR のようなテクノロジーによって、これまでできなかった方法で世界を探検したり、今までは不可能だった方法で世界に手を加えたりすることができるのです」とワッツ。

VR ヘッドセットを装着して星を見る女性
宇宙にいるかのような臨場感を体験できる VR。

 

マクニット氏にとって、インテルとの連携の最大のメリットは、適切なツールがすぐに手に入ることです。

「インテルのおかげで、私のような独立クリエイターが『Pale Blue Dot』のような体験をノートブック PC やデスクトップ PC で構築できるようになったのです。VR ヘッドセットがもっと簡単に利用できるようになれば、私たちが取り組んでいるようなプロジェクトが、さらに高いレベルを目指せるようになります。かつて、カラーテレビを所有していること自体が珍しかった時代がありましたが、VR ヘッドセットもそれと同じようになるでしょう」とマクニット氏は語り、最後にこう展望しました。

「VR は、ストーリーを作成するための新たな方法になりつつあります。新しい世界の発見と探検を実現する新たなポータルとなるでしょう」

 

 

次の記事

Read Full Story