スポーツ

メジャーリーグ観戦を面白くする Statcast

Taylor Bloom Writer, SportTechie

スポーツ選手に関連する新たなテクノロジーが、米国の国民的スポーツに対するコーチ陣、選手、ファンの見方を変えつつあります。

現代の野球選手は、動作、走行距離、心拍数などのすべてが記録されており、収集したデータは、試合でいい結果を残すために役立てられています。『マネー・ボール 奇跡のチームをつくった男』(マイケル・ルイス著) を原作とする映画「Moneyball」の公開以来、コーチもファンも選手の成績データに興味を持つようになりました。

その理由は、データから、相性のいいピッチャーや、別の守備位置へのコンバート (転向) など、あらゆる要素を判断できるからです。

アメリカ野球学会会長のビンス・ジェナーロは、「数年前までは、チェイス・アトリーを優れた二塁手だと考えていましたが、その後、左打ちバッターに対して一塁と二塁の間で非常にいい守備をする選手だということが判明したのです」と説明

このように、選手の動きを細かく記録するテクノロジーは、試合を一変させるような効果を発揮します。

今シーズンから、最強のアスリート・トラッキング・テクノロジーである MLB (メジャーリーグ) の Statcast (スタットキャスト) が一般ユーザーにも公開されています。Statcast は、高解像度カメラとレーダーで全選手とボールの動きを追跡し、収集データをすぐに利用できる形で提供するプラットフォームです。今や、情報にアクセスするだけで、誰もが試合に対する理解を深め、夢のラインナップが実現するプロセスまで知ることができるのです。

MLB ネットワーク・アナリストのブライアン・ケニーは、Statcast を「世界中の野球ファンの観戦方法を一変させる革新的なテクノロジー」と表現しています。

Statcast は、野球場で効果的に動作するように 2 つの異なるシステムを組み合わせたものです。

その 1 つが、投球時、打撃時、送球時のボールの弾道を記録する TrackMan

これは、独自の 3D ドップラーレーダー (ドップラー効果を利用して位置や移動速度を観測するためのレーダー)のハードウェアとソフトウェア・ネットワークを MLB スタジアム全体に設置し、ワンプレイごとに 27 カ所の異なるデータポイントでボールを追跡するシステムです。

そしてもう 1 つは、選手を追跡する ChyronHego。こちらは、50 フィート (約 15 m) 離れた 2 台のカメラでステレオ映像を撮影し、2D 画像を合成して奥行きのある 3D 映像を作成するシステムです。

これら 2 台の ChyronHego 製カメラの映像から、人間の視覚システムを反映した Statcast の 3D 環境が作られます。

つまり、Statcast で提供される動画は、ボールや選手の動きを 3D グラフィックスで容易に確認できるため、選手の長所や短所、能力の把握が容易になるのです。

3D グラフィックスは、Statcast のすべての動画で提供されており、こちらからご覧いただけます。

Statcast テクノロジーは、上述した 2 つのシステムを併用して野球選手のあらゆる動きを捉え、フィールドで繰り広げられるすべてのゲーム展開を追跡します。

投手については、球速、投手板 (ピッチャーズ・プレート) を基準とした正確なリリースポイント、ボールの回転数など、あらゆる情報を記録。

打者については、スイング速度、打ち出し角度、打球の方向を測定。あわせて、ボールの滞空時間と到達距離、ホームランの予想着地点も記録します。

Statcast テクノロジーがさらなる真価を発揮するのは、ベースランニング・タイム (走者が塁から次の塁へ走る速度) やファインプレーの記録です。

走者と野手については、トップスピード、加速度、最初の一歩を踏み出す時間などを記録して追跡します。以前は得られなかったこうしたデータを利用することで、野手の守備効率や走者のベースランニング・タイムの測定までも可能になりました。

あらゆる情報を組み合わせれば、ファンはお気に入りの選手やチームをさらに詳しく理解できるのです。メリットを得られるのは、ファンだけではありません。

「すでにゲーム自体を変える効果を発揮しています。メジャーリーグのチームは、このテクノロジーを使って選手を評価したり、ドラフトの候補選手を選んだりしています」と、MLB ネットワーク・アナリストのトム・ベルドゥッチ。

統計データを使った選手のパフォーマンス評価は、先発選手の選択方法を左右する重要な判断材料にもなります。

例えば、守備範囲が広い人はダイビングしなくてもキャッチできるはずなので、ダイビングキャッチが多い選手は守備範囲が狭く、「ルート効率」 (選手とボールの落下地点を結んだ直線距離と、選手が実際に動いた距離を比較して算出) が悪いと判断できます。

コーチ陣は、ダイビングキャッチをする選手は、ジャンプのタイミングが遅く、加速が足りないためにルート効率が悪いか、もしくは単に足が遅いのだと評価するかもしれません。

こうした判断基準を得ることで、チームは有名選手との高額年俸契約を回避し、有名ではなくても優れた統計データを残している選手に高額契約を提示することができます。

しかし、他の新たなテクノロジーと同様に、こうしたテクノロジーの限界を指摘し、依然として選手の実力や素養を見抜く「眼力」の重要性を説く人がいるのも事実です。

ワシントン・ポストの記事でマット・ウィリアムズ監督は、レギュラーシーズンの 2015 年 4 月 22 日、試合に初めて導入された Statcast テクノロジーについて聞かれ、こうコメントしています。

「スカウトや評価に使える優れたツールであることは言うまでもない。今夜の試合を観戦しているファンは、なぜこういうプレイになったのか、背後にある理由をリアルタイムで確認できるだろう。調子が良い選手も悪い選手も一目瞭然。正確には測定できないようなことも読み取れる。

みんながどんな反応をするのか興味深いよ。なんといっても、従来とは全く異なる新しい野球の観戦方法だからね」

現実的な評価手法としてのメリットについては議論の余地があるものの、少なくとも MLB が Statcast をポジティブに評価する理由は、このテクノロジーによって生み出される印象的な映像の数々にあります。

参考までに、Statcast テクノロジーによって生成された今シーズンの動画の中から、ベスト 5 を紹介しておきましょう。

5. 非常に詳細なマイク・ボルシンガーの投球の回転速度データ

4. マイケル・テイラーの卓越したルート効率

3. ホームランボールをキャッチするヨエニス・セスペデス

2. 試合を勝利に導いたジョージ・スプリンガーのホームランボールのキャッチシーン

1. ジャンカルロ・スタントンの驚異的なスイング速度、打ち出し速度、圧倒的なパワー

この記事をシェア

関連トピック

スポーツ

次の記事

Read Full Story