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VR とはいったい何なのか?

アカデミー賞を受賞したクリエイティブ・デベロッパーのジョハネス・サーム氏が、仮想現実 (VR) そのものと、拡張現実 (AR) や360 度動画といった VR に似てはいるものの異なる体験との違いを説明します。

ほとんどの人がまだ VR とは何かを正確に把握しきれないまま、新しい VR テクノロジーや臨場感あふれる体験ばかりが身のまわりにあふれつつあります。

「しばしば『仮想現実』『拡張現実』『360 度動画』といった用語が同義語のように使用されていますが、正確にはこれらは違うものです」と、ビジュアルエフェクトの第一人者であるジョハネス・サーム氏は指摘します。

VR に関する誤解をきちんと整理できる人がいるとしたら、それはサーム氏かもしれません。

サーム氏はアカデミー賞を受賞したクリエイティブ・デベロッパーで、かれこれ10 年以上ビジュアルエフェクトの最先端で働いています。『マッドマックス 怒りのデス・ロード』では世紀末後のオーストラリアへ、『マイティ・ソー』では北欧神話から創り出した神の国など、サーム氏の作品は観客をあらゆる場所へと連れていきます。

サーム氏は、国際的に有名なビジュアルエフェクト企業、Framestore 社に所属し、シニア・クリエイティブ・デベロッパーとして VR 全般にわたる最先端プロジェクトをリードしてきました。

2017 年末までに、VR は 70 億ドルの産業に拡大し、さらに今後 4 年間で、その数値は 10 倍に増加すると予測されています。VRは、こうした急成長ぶりを見せながらも、まだほとんどの人に十分には理解されていない、進化している最中の荒削りのテクノロジーです。

サーム氏は、まるで熱心な VR の教授のように、単一視点の 360 度動画、臨場感あふれる VR 体験、現実世界へのオーバーレイともいえる AR について、その類似点と相違点を説明します。

360 度動画: VR にハマる「きっかけ」

さまざまな仮想体験がある中で、360 度動画は VR や AR ほどの臨場感はないものの、独特の目的に役立つとして、サーム氏はこう説明します。

「360 度動画のことを、VR への『ゲートウェイ・ドラッグ (より強いドラッグにのめり込む入口となるドラッグ)』と呼んでいます。このタイプの動画では、見たいところを自由に見られますが、通常、インタラクティブな操作や動きを提供するものではありません」

360 度動画は、平面視と立体視の 2 つのカテゴリーに分けることができます。

平面視の動画は、YouTube などのプラットフォームで視聴でき、マウスを使用して操作できます。立体視の動画には VR ヘッドセットの使用が必要で、左右への振り向きや、上を見上げたり下を向いたりすることで操作できます。360 度動画には、サーム氏の支援のもと、Facebook が今年の初めに Surround 360 カメラを使用して制作した動画などがあります。このような 360 度動画を視聴している場合、その世界全体を探検できても、視点は自由に選べません。制作者が制作時に選択した視点からのみとなります。

MLB の試合をバックネット裏から視聴
インテル® True VR Game of the Week アプリを使用すると、ファンはメジャー・リーグ・ベースボール (MLB) の一部の試合をお好みの視点から視聴できます。写真提供: Intel Corporation。

例えば、スーパーボウルなどのイベント中に撮影された 360 度動画で、50 ヤードラインに立っているような感覚を楽しむこともできます。ユーザーは動きの中心にいて、サイドラインの方を見たり、スタンドを見上げたり、エンドゾーンを見たりできるのです。

ただし、その仮想空間における自分の位置は、撮影中のカメラの位置によって完全に決められています。しかし、そのような制約があるからといって、従来のカメラを使用した標準的な動画から 360 度動画への進化のスピードが衰えることはありません。

「360 度動画は、平面的な画面で動画を視聴するというよりも、体験の中に送り込まれる感じなので、臨場感を高める潜在的な力があります」とサーム氏。

インテル® True VR Game of the Week などの体験では、Samsung Gear VR ヘッドセット・アプリを使用することで、MLB ファンは試合に没入できます。ファンは、1 試合当たり最大で 4 つのカメラアングルから好きなものを選んで、選手の視点でゲームを見たり、制作済みの VR 番組の体験を視聴することができます。

VR: コンピューターで作られたデジタル製の世界

360 度動画で提供される受動的な体験で満足しない人は、VR の世界に足を踏み入れることになります。

「VR なら、頭を自由に回転できるだけでなく、テレポーテーションするか物理的に動くことで、目の前に繰り広げられる空間を実際に動き回ることができます」とサーム氏は説明します。

VR にはヘッドセット、すなわちヘッド・マウント・ディスプレイ (HMD) の装着が必要です。体験によっては、ハンドヘルド・ゲーム・コントローラー触覚フィードバック・デバイスルームスケール・センサーなど、その他の機器も必要になる場合があります。

仮想現実用ヘッドセットを装着した男性
VR ヘッドセットを装着して Framestore 社のビジュアルエフェクト・プロジェクトの作業をするジョハネス・サーム氏。写真提供: Framestore 社。

「複数の知覚を利用する VR の手法によって、ユーザーの仮想体験のリアルさを大幅に向上することができます

インテル® RealSense™ テクノロジーによって、VR ヘッドセットは奥行きの知覚、スキャン、マッピング、さらに 3D 環境での操作を行うことができます」と、インテルの商用 VR / AR 体験担当マネージャーのラジーブ・プラン氏は語り、こう続けます。

「仮想現実は完全な没入感がポイントです。おかげでユーザーは、ヘッドセットで見ているものが別世界であると信じられます。ヘッドセットを装着した人は、VR の中のものが非常にリアルに見える、まるでアイスランドの火山の中に本当にいるようだ、などと表現します。こうした VR を実現するシステムには、従来の PC とは異なる要件があります」とプラン氏。

インテル® Core™ i7 プロセッサー搭載の VR 対応コンピューターなら、リッチな 360 度 3D ビジュアル、正確なコントロール、臨場感あふれる 3D 音響を実現するだけの処理能力を有しています。また、インテル® Optane™ メモリーによって、データを素早く読み込み、待ち時間を短縮して、スムーズで臨場感にあふれた体験を実現できます。

「言い換えれば、テクノロジーによって目の前の現実、目の前に広がる世界の眺めをシミュレーションの世界に置き換えるということです。これは画期的なことです」とプラン氏は主張します。

VR を体験しているユーザーは新たな環境にいるように感じるだけでなく、その世界を自由に操作することもできます。

例えば、Framestore 社が Time 社向けに制作を支援した LUMEN という VR 体験では、ユーザーがサイケデリックな森を操作し、植物の成長速度から頭上の空の色まで、あらゆるものをコントロールできます。

「リアルタイム・エンジンによる体験で、仮想空間にあるアイテムを操作できます」とサーム氏。

AR によって、現実世界を強化

VR で体験するような完全に人工的な環境とは異なり、拡張現実では、ヘッドセット、スマートフォン、タブレットなどのデバイスを使用して、デジタル世界と自然世界を融合します。

「AR 体験では、実世界を遮断しません。ただし、実世界を見ることができても、それは 3D グラフィックスで拡張されたものです。AR 体験でも空間を自由に動き回ることができますが、そこには実世界が背景として存在しているのです」

Microsoft 社の Hololens や期待されている Magic Leap などの AR システムを使用すると、空想的な要素を日常世界に取り込み、リビングでスペース・インベーダーと戦ったり、小さなゾウを手に乗せたりすることができます。

プラン氏によると、AR では、現在利用できる手法だけでなく、まだ開発中の手法も一部使用しているといいます。プラン氏は、劇団 Royal Shakespeare Company が「テンペスト」の公演で AR を使用して観客を魅了したことを例に挙げ、こう説明します。

「画像を投影することでステージ上に何かを表示できるホログラフィー用スクリーンがあります。また、スマートフォンとそのカメラを利用して、実世界のライブビューを提供し、そのビューに仮想 (ホログラフィック) のオブジェクトを挿入するテクノロジーもあります」 ポケモン Go や Apple 社の ARKit で実現される体験がそれです。

「さらに、メガネやヘッド・マウント・ディスプレイに投影することによって、目の前にある拡張オブジェクトや拡張キャラクターを、実在する世界の一部であるかのように容易に見ることができます。この場合、両手が使用できるなど、ユーザーはさらに自由に動くことができます」とプラン氏。

AR には、もっと実用的なアプリケーションがたくさんあります。ユーザーは、ノートブック PC を取り出さなくても、天気の確認や電子メールのチェックを行えます。また、AR によって、ショッピングにも全く新しいシーンが生まれます。

タブレット上で展開される拡張現実の画面
タブレットを使用して、ローカルビジネスに関する情報やグラフィックスで実世界を拡張。

「ある商品を購入し、自分の環境でどのように見えるかを確認したい場合、拡張現実は実に素晴らしく役に立ちます。例えば、IKEA のソファを自宅のリビングに置いたら、どのように見えるかを確認できるわけです。実際にはホログラムですが、リビングでどのように見えるかを正確にプレビューできます」とプラン氏は説明します。

進化を続ける VR / AR のテクノロジー

サーム氏は、360 度動画、VR、AR の実例が増え、主流になるにつれ、これらの体験の違いが理解されるようになるだろうと期待しています。

現在は、VR 開発者でさえ、すべてを完全には把握していないとして、「いままさに用語の定義を明確にすべく取り組んでいる最中であり、まだこれだと言えるものが確定されていないのです。今もなおルールを作っては壊し、また新しいルールを作っているところです。このテクノロジーは、例えるなら『開拓時代のアメリカ西部』のようなもので、それがこのテクノロジーの面白い部分でもあります」とサーム氏は語っています。

 

 

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