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進化する翻訳テクノロジーが企業成長の鍵に

Julian Smith Writer

グローバルに接続された市場では、最新テクノロジーのおかげで、翻訳が原因で顧客を逃すことはなくなりそうです。

世界がますますつながっていく中で、世界市場に参入しようという企業は、顧客の母国語でコミュニケーションする必要に迫られています。 こうした企業は、最新の高度な機械翻訳テクノロジーを利用して言語の壁を乗り越えようとしています。

コンサルティング会社 Common Sense Advisory 社でコンテンツのグローバル化ストラテジストを務めるベン・サージェント氏は、こう指摘します。

「企業が初めて市場に参入すると、それがパーソナルケア製品であろうとハイテク製品であろうと、アーリーアダプターたち (新しく登場した製品やサービスをいち早く取り入れ、他の消費者に大きな影響力を与える人たち) に世界の関心が集まります。彼らは英語でのコミュニケーションに慣れていることが多いため、まるで自社が市場参入に成功したかのように錯覚するかもしれません。しかし、そうした人々はごく一部の層にすぎないのです」

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企業が世界中のオンライン人口の 80% にアプローチするには、少なくとも 12 カ国語でコミュニケーションしなければなりません。さらに 98% にアプローチしようというなら、48 カ国語に対応する必要があります。しかも、企業が顧客との密接な連絡やつながりを求めるほど、正確な翻訳が重要となります。

企業情報や製品情報、販促資料、顧客サポートデータなどを、その地域に合わせて正確に翻訳するローカリゼーション事業は、市場規模にして年間 350 億ドル (約 3 兆 5,000 億円) の産業です。

多くのテクノロジー企業は機械翻訳を利用して、日々発生する莫大な量のコミュニケーションを処理しています。機械翻訳は、書き言葉や話し言葉を自動的に読み取って翻訳するコンピューターシステムです。

効果的な機械翻訳システムにはスピードと正確さのバランスが重要だとするエジンバラ大学の機械翻訳の第一人者、フィリップ・コーン氏は、「言語の形式や構造が定型化されている場合は、機械翻訳が最適です」と述べています。

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しかし、途方もなく複雑なニュアンスをすべてとらえるには、幅広い文脈、スラング、婉曲表現、比喩、口調の変化、さらには国、地域、業界、個人によってさまざまな文の構造を理解しなければなりません。

「そこには膨大なパターンがあり、コンピューターに非常に大きな負荷がかかることもあります。 目下の課題は、インサイトをとらえることより、あらゆる処理に対応できる高速なアルゴリズムを開発することです」とコーン氏。

さらに、人間の言語を理解する機械の実現は、人工知能の主要課題の 1 つであるとして、 「人工知能が一定水準に達するまでは、完璧な機械翻訳の実現は難しいでしょう。当面は“使いものになるレベル”を目指します」と語ります。

昨今の消費者は、質問や苦情に対して即日の回答を求めてきます。特に、コミュニケーション・スピードの速いソーシャルメディアであればなおさらです。 機械翻訳は、企業の対応の迅速化に役立つのです。

世界最大の言語テクノロジー企業である SDL 社の研究および製品開発担当バイスプレジデント、アブデッサマッド・エチハビ氏は、「企業では、Facebook や Twitter などのプラットフォームを活用して顧客とコミュニケーションする機会が増えています。 オンラインでの会話やコメントをリアルタイムに翻訳できれば、企業は何百万人どころか数十億の人々との交流が可能になるでしょう」と語っています。

機械翻訳を活用するビジネス

もちろん、世界規模で市場拡大を目指す企業にはいくつかの選択肢もあります。例えば、Google 翻訳は最も使われている無料の機械翻訳システムで、文章を 100 を超える言語間で変換し、モバイルアプリ、Web インターフェイス、ブラウザーに統合することが可能です。

Twitter で使用され、ツイートを 40 の言語間で変換できる Microsoft 社の Bing 翻訳と同様、Google 翻訳もいわゆる「統計的機械翻訳」と呼ばれる方法を使用しています。統計学や確率論に基づいて訳文を作成するこの方法では、生データのクランチング技術 (データから意味のある情報に加工する技術) を使用して、ある言語の特定の単語が別の言語の特定の単語に対応する確率を推定します。当然ながら、 データベースが大きくなるほど確率は高まります。 しかし、基本的な英文翻訳の場合はうまく機能するものの、文法が複雑で、あまり一般的ではない言語を対象とした場合はたちまち精度が落ちてしまいます

このほかにも、1 月には Skype がソフトウェアを公開しました。このソフトウェアでは、ニューラルネットワーク (人間の脳における情報処理の働きをモデルにした人工知能システム) を使用して、複数の言語間でリアルタイムの音声翻訳を可能にしています。人工知能は基本的に、学習と改善を重ねることで翻訳精度が向上していきます。

ニューラルネットワークは、7 月に発表された Facebook の簡易翻訳システムでも採用されています。このシステムでは、数十億を超えるユーザーが、ボタンをクリックするだけでその他の 44 カ国語に変換して投稿できます。 当初は英語とドイツ語間の翻訳にニューラルネットワークを使用していましたが、将来的にはより広範囲への適用が計画されています。

機械翻訳をビジネスに活用

世界最大級のオークションサイト eBay もまた、多大な努力を続けています。製品リストに自動翻訳を適用するだけでなく、さらにユーザーの閲覧行動を翻訳プロセスの改善に役立てているのです。

eBay の人工知能担当責任者、ハッサン・サワフ氏は、「ユーザーが検索し、商品をクリックし、説明を読んで購入に至ったら、このユーザーに表示された翻訳は役に立ったと考えてよいでしょう。商品が購入されたのですからね。こうしたフィードバックを元に翻訳を改善するよう教えることで、システムが学習していくわけです」と説明します。

言語の壁をなくす次のステップは、あの『スター・トレック』に登場する万能翻訳機のように、人間が普通に会話している言葉を理解したうえで、その場で複数の言語に翻訳できるデバイスの開発です。

こんなことはまだまだ先の話かもしれません。しかし、機械翻訳システムは着実に発展を続けていることも事実です。

コーン氏も、「外国でメニューや道路標識を翻訳してくれるアプリはすでに存在するのですから、現時点では完璧ではなくとも、いつの日か実現することでしょう」と語っています。

 

編集メモ: この記事はこちらの原典の最新版です。

 

※文中に記載の金額は、日本語原稿執筆時の為替レートで計算しています。

 

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