エンターテインメント

広がるライブストリーミングの活用

投稿した動画がブレイクし、「チューバッカ・ママ」として一躍時の人となった母親から、注目の eSports 大会にいたるまで、ライブストリーミング動画はすぐに視聴できるパワフルなツールとなっています。

キャンディス・ペインさんは、学校に子供を迎えに行くまでの時間を使って、デパートにヨガウェアを返品しに行くことにしました。出かけた先で彼女の目に留まったのが、チューバッカのマスクです。ペインさんはこのマスクを自分のために購入。そう、誰よりも熱い「スター・ウォーズ」ファンを自負する彼女自身のためです。

車に戻ったペインさんは、チューバッカの特徴的なうなり声が出る電子マスクを着けて、購入したばかりのこのマスクを Facebook Live で紹介。面白すぎる様子をストリーミング配信したのです。

「私がライブ配信したのは、私のおもちゃで遊ぶ子どもたちの写真をママ友たちが Instagram で目にする前に、“そもそも私のおもちゃだからね!”と主張しておきたかったからです」とペインさん。

スマートフォンの画面に「いいね!」や「うけるね」のアイコンが次々と表示される中、これまで一度も笑ってくれたことのない友達から「うけるね」が届いたことに気付き、ペインさんは思わず笑ってしまいました。

ライブ配信中に動画を視聴したのはわずか数百人でしたが、再生回数はまたたく間に数百万回に伸び、ペインさんはチューバッカ・ママとして知られるようになりました。

「25 万回だった再生回数が、4 分後にブラウザーを更新すると 50 万回になっていたんです」とペインさん。

数日のうちに、彼女はメディアの取材を受け、「The Late Late Show with James Corden」という番組で「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」のプロデューサー、J.J.エイブラムス氏と対面し、Facebook 本社にも招待されました。

ペインさんの動画の再生回数は、2017年8月現在で 1 億 7,000 万回を超えています。このケースは極端な例かもしれませんが、ライブ動画の影響力と影響範囲の大きさは否定しようがありません。

シェアの力

Koeppel Direct 社によれば、20 億人の Facebook ユーザーのうち、3 億 6,000 万人が積極的に Facebook Live を利用しています。Instagram Live、YouTube ライブ、Twitch、Live.ly などはすべて数百万人というユーザーを獲得しており、最近では Twitter が独自のライブ動画戦略を掲げて参画しています。

世界規模で繰り広げられる eSports の対戦をプロデュースする eSports 団体 ESL のように、大々的にライブ配信を使用する組織にとって、こうしたプラットフォームの拡大は朗報です。デジタルゲーム専門の市場調査会社 Newzoo 社では、eSports の市場規模は今年、6 億 9,600 万ドル (約 790億円) に達すると見込んでいます。

ESL プロゲーミング部門の部長、ミハウ・ブリチャーズ氏は、「年齢も住んでいる場所も異なる、かつてないほど幅広いユーザー基盤に製品を届けることができるのです」と説明します。

アメリカではミレニアル世代の男性の約 22 % が eSports を観戦します。Koeppel Direct 社の調査によれば、ゲーマーや eSports ファンたちが Twitch のライブストリーミング・コンテンツを見て過ごす時間は、1 日当たり最大 106 分間にも上ります。

eSports には固有のファンが付いていますが、ライブ配信の視聴者に何がうけるのかはいまだに謎です。

Facebook の重役たちでさえ、ペインさんの動画が大きな話題を呼んだ理由が理解できなかったと言います。

この事実を Facebook 本社を訪れた際に知ったペインさんは、「私の動画の一番良かった点は、非常に親しみやすい点だとおっしゃっていたように記憶しています。まさにシェアの力ですね」と分析します。

Facebook Live で、大きな話題を呼んだペインさんのチューバッカ動画に続いて再生回数が多いのは、全米ハンマーダルシマー・チャンピオンのテッド・ヨダー氏 がティアーズ・フォー・フィアーズの曲「Everybody Wants to Rule the World」を演奏している動画です。その視聴回数は9,700 万回に上ります。

また、YouTube ライブで最も再生回数が多かったストリーミング動画は、ニューヨーク州ハーパーズビルにある動物園 Animal Adventure Park で、出産を控えた母キリンの エイプリル が出産を迎えるまでの様子を数週間にわたって撮影した動画でした。ストリーミング動画の再生回数はなんと 2 億 3,200 万回。この人気ぶりがきっかけとなって、エイプリル専用のウェブサイト、洋服ブランド、さらにはオリジナルの絵文字まで生まれています。

熱心なファン、高い視聴数

大きな話題を呼ぶ動画に決まった法則はないように見えますが、熱心なファンが付いていれば、ライブ配信イベントで高い視聴数を獲得できます。

新たな視聴者層を増やすのにライブ動画が最適であると気づいた各ブランドが、早くも動き始めています。例えば、Red Bull社は、フェリックス・バウムガートナー氏の超音速フリーフォールをライブイベントとしてストリーミング配信し、視聴者を熱狂させました。現在は Red Bull TV で音楽フェスからオートバイレースまで、さまざまなイベントのライブ配信を行っています。

一方、LEGO 社のように、記者会見をライブストリーミングする企業もあります。8 月にはインテルが Facebook Live イベントを利用して第 8 世代インテル® Core™ プロセッサー・ファミリーを発表。インテルが新製品の発表イベントをライブ配信したのはこれが初めてです。

ライブ動画分野の先駆けとなったのはゲーム業界で、誰かがプレイする「グランド・セフト・オート」の画面をただ見るだけのために YouTube を利用していた頃にさかのぼります。

しかし、2011 年に Twitch とそのライブ動画配信が始まって以降、視聴者数が急増。ESL がプロデュースを手がける世界最大規模の e スポーツ大会Intel® Extreme Masters (IEM) などの大会は、チケットが完売するほどの観客を会場に動員するだけでなく、数百万人もの視聴者がライブ動画を視聴します。

ESL がオーストラリアのシドニーで開催した最近の IEM 大会は、毎日会場を埋め尽くす 7,000 人ものファンを動員。さらに、延べ 800 万人がライブ動画を視聴しました。ポーランドのカトヴィツェで開催される IEM ワールド・チャンピオンシップは今年、視聴者数延べ 4,600 万人、週末 2 日間にかけて会場の Spodek Arena を訪れたファン数 17 万 3,000 人という eSports の歴史に残る記録を打ち立てました。

「にわかにコンテンツを見つけるのが簡単になりました。ESL を知っている人たちだけでなく、単にゲームが好きで、ライブ配信動画を見るのが好きな人にも見ていただけます。これまで対話したことがなかったような視聴者層を開拓するきっかけにもなりました」とESL のブリチャーズ氏は語ります。

ライブ動画の未来

今後数年間でライブ動画はどこへ向かうのでしょうか。インテルの eSports マーケティング・マネージャーであるジョージ・ウーは、よりエンターテイメント性が高く、臨場感あふれる配信を行っていくと述べており、今年になって仮想現実 (VR) のイベントにライブストリーミング配信を導入しました。

インテルと ESL は Oculus 社と共同で VR チャレンジャー・リーグを発足。参加者は「The Unspoken」や「Echo Arena」などの VR ゲームで対戦します。Oculus Rift の VR ヘッドセットがあれば、誰でもライブストリーミング配信で観戦できます。

IEM eSports 大会
常に数百万人もの視聴者と数千人もの観客を動員する世界最大級の eSports 大会、IEM。写真: アデル・スズナジダー

「経験豊かな観客の目線があることに加え、オープン・トーナメントを開催することで、より臨場感あふれる体験を作り、公の場で継続的な VR プロモーションを展開したいと考えています」とウー。

オンライン予選の勝者たちが今年秋に世界各地で開催される 4 大地区決勝へと駒を進めます。最終決戦の舞台は、2018 年の IEM イベントで開催される VR チャレンジャー・リーグ最終戦です。

チューバッカ・ママは、80 万人の Facebook フォロワー向けに毎週投稿しています。彼女は、新たに始めたこのトークショーのように、ユーザーが作成したライブ配信動画がネットワークづくりのきっかけになると考えています。ペインさんの著書「Laugh It Up!」も 2017 年秋に発売予定です。

「エンターテイメントの手法に、ライブならではの大胆さと信憑性を取り戻すための手段。それが Facebook Live であると心から信じています。フォローしたい人は誰でもフォローできます。見たいと思ってくれる人がそこにいます」(ペインさん)

 

冒頭の写真はキャンディス・ペインさんのご厚意によりご提供いただきました。
※文中に記載の金額は、日本語原稿執筆時の為替レートで計算しています。

 

 

 

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