テクノロジー・イノベーション

農業の未来を照らすLED~植物工場の今~

Intel Japan Writer

視認性が高く省電力、さらに長寿命である LED(発光ダイオード)は、量産化によるコストダウンも進み、今や白色電球や蛍光灯に代わる照明として確固たる地位を確立しつつあります。この LED、一般家庭やオフィスなどにとどまらず、農業分野でも実用化フェーズが見えてきました。その事例をご紹介していきましょう。

太陽光の代替に。LED で植物工場を成功させるカギとは

かつて、農作物の成長に太陽光は欠かせないものと考えられていました。しかし、テクノロジーの発展により、太陽光の代替として人工の光を利用した植物工場の実現が模索されてきました。日本国内においては、1980 年前後より始まります。「農業をどう変えるか」という観点から開発が進められた植物工場事業は、政府からの補助金などに後押しされ、これまでに幾度かの盛り上がりを見せました。そして、2009 年頃から起こった第三次植物工場ブームでは、植物工場が「農業」の枠組みを超え、あらゆる産業を巻き込み、時代の転換期を期待させるものとなっています。その原動力ともいえるのが、人工光源としての LED の応用です。

従来 LED は、その波長の関係で植物の生育を促進するのには不向きとされ、蛍光灯が利用されてきました。しかし、蛍光灯は電気代がかさむことから、植物工場普及の大きな足かせとなってきました。

しかし、LED の波長をコントロールし、植物の生育にマッチした波長へと最適化する技術が開発されたことで、植物工場への LED 導入が一気に進むことになります。今では国内外で多数の企業がこの事業に参入し、各地で広まりを見せつつあります。

メイド・イン・ジャパンの LED 植物工場は付加価値訴求へ

千葉県に本社を構える MIRAI 株式会社は、もとは野菜栽培が専門のベンチャー企業。2011 年より日本 GE と連携し、植物工場の開発と運営に乗り出しました。2014 年、宮城県多賀市に完成した工場は、LED を全面採用した植物工場として世界最大級の規模なだけでなく、独自のソフトウェアや処理システムなどによる最先端の IT 技術を駆使することで高い効率性を誇っています。

MIRAI では、植物工場で生産した野菜を出荷するにとどまらず、本工場にて蓄積したノウハウをもとに、この工場自体の世界展開を進めています。日本品質の強みを生かした装置の世界展開に注目が集まります。

LED を使った植物工場への取り組みは民間だけではありません。産学連携事業からも新たな商品が誕生しています。玉川大学と西松建設による共同プロジェクト「サイテックファーム」が開発したのは、野菜ブランド「夢菜」。食の安心、安全、高付加価値をコンセプトに、主に葉物野菜を生産しています。

同プロジェクトは、LED から発せられる光の種類や光量をコントロールすることで、風味や食感、栄養価を向上させるなど、露地栽培とは異なるアプローチの商品を開発することに成功しました。植物工場産野菜ならではの魅力で商品の付加価値を高めることで、ブランドの向上に挑戦しています。

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画像提供:玉川大学

植物工場はもともと、食料の安全・安定供給を目指して研究が進められてきました。最近では上記の例のように植物工場ならではの新たな付加価値を提供する方向にシフトしつつあります。

「健康」「無農薬」「環境にやさしい」などの側面をより前面に打ち出していくことで、既存の農業手法の代替という位置づけとは異なるアプローチが模索されています。

生産性をただ上げるためだけの手段としてではなく、未来の食文化や健康産業の創出・維持を担うことで、次世代を担う産業として新たな広がりを見せてくれることでしょう。

自宅での水耕栽培から得られる喜びとは

LED 農業のテクノロジーは、個人の自宅でも体感することができます。株式会社リビングファームの「リビングファーム」や、株式会社ユーイングの「グリーンファーム」といった家庭用水耕栽培キットは、インテリアとも調和するシンプルでモダンなデザインが好評。オリンピア照明から発売された「灯菜」は野菜のみならず、生花も育てることができます。みずみずしい生命力を感じさせる植物の存在は、そこに住む人の心に安らぎとうるおいを与えてくれそうです。

画像提供:株式会社リビングファーム
画像提供:株式会社リビングファーム

数種の LED 水耕栽培キットを試したブロガーの dalahast 氏は、自宅での水耕栽培における最大のメリットは「体験」であると自身のブログでつづっています。コストや手間がかかる水耕栽培を自宅で行うよりは、必要な野菜をその都度買い求めたほうが合理的なのは言うまでもありません。しかし、自宅で無農薬の野菜を育て、収穫できるというプロセスを経験する喜びは、かけた手間やコストを上回るという考えです。確かに、植物の生育を間近で観察できる上、作物を育て、収穫して食す、という一連の楽しみを室内で満喫できるのは、なかなか得難い喜び。家庭用水耕栽培キットの存在は、食に対する人の意識や習慣をも変えうるのかもしれません。

画像提供:オリンピア照明株式会社
画像提供:オリンピア照明株式会社
農業分野での技術活用が新たな未来を創っていく

LED の農業での利用は、これからの農業やその周辺産業における、変革のきっかけのひとつに過ぎません。高齢化や後継者不足の問題をテクノロジーによって解決する取り組みは各所で見られます。センサーや自動制御システムなどの IoT 分野にとどまらず、技術の進化とともに農業の生産フローの大部分が自動化されることも遠い未来のことではないでしょう。

テクノロジーを活用した現代農業の模索は、農作業の省力化、効率化にとどまらず、新たな可能性につながります。テクノロジーが農業を変え、我々のライフスタイルも大きく変わる日は、すぐそこに近づいてきています。


<参考リンク>
MIRAI株式会社 (http://miraigroup.jp/)
サイテックファーム (http://www.scitechfarm.com/about_us.html)
オリンピア照明株式会社 「灯菜」(http://www.motom-jp.com/
dalahast氏ブログ「週末限定ビストロパパの日常関心空間」(http://www.dalahast.jp/)

 

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