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中南米でインディーゲームが過熱

Jason Johnson Freelance writer and editor

Dandara、UnderHero などのリリースにより、中南米でインディーゲーム開発が加熱しています。

ブラジルの伝説的人物として有名なダンダラは、常にケンカ腰で、カポエイラで右に出るものはいない女性戦士でした。ダンダラの一家は、ポルトガルの奴隷商人の手で拉致され、拷問を受け、ブラジルのプランテーションで強制的に働かされました。

このような犯罪的な行いに巻き込まれたことで、ダンダラは不公正に、蜂起することになったのです。奴隷の子孫である女性兵士たちを率いて、かつて自分たちの先祖を拉致した人々と戦ったという英雄伝説もあります。

「このストーリーからアイデアを得て、今まで誰も見たことがないことをしたいと思ったのです」と語るジョアン・ブラント氏は、Long Hat House 社のゲーム開発者です。ブラジルに拠点を置く同社は、ブラント氏が開発者のルーカス・マトス氏とともに設立した、社員 2 名のインディー・スタジオです。

2 人はダンダラのストーリーをさらに展開させ、伝説的人物であるこのアフリカ系ブラジル人をアクションヒーローに仕立てたゲームを制作しました。今年 Nintendo Switch、PlayStation 4、Xbox One で発売予定の Dandara は、いわば、重力に逆らう自由の歌とも言えるでしょう。

最近までゲーム開発とはほとんど縁のなかった中南米にとって、Dandara のようなゲームが制作されることは新たな進歩です。中南米は、2016 年の世界全体のゲーム市場のうち 4% しか占めていません。

この地域は、これまで必ずしも快くゲームを受け入れてきたわけではありません。

かつて、ベネズエラ当局では違法なビデオゲームをかき集め、ロードローラー (地面を押し固めるための大型車輪を持つ建設機械) で粉々に砕いたことがあるほどです。こうした出来事を考えると、中南米のインディーシーンがゲーム市場のせいで遅れているのも無理はありません。

しかし、Dandara から読み取れるのは、もっと大きな動向です。ブラジル以外ではあまり知られていない民話にヒントを得たこのゲームは、中南米のストーリーという特徴を明確に打ち出しています。これは、Dandara に限ったことではありません。中南米全体で、現在、インディーの開発者がビデオゲームに地域の特色を取り入れています。

中南米にゲームを展開

サンパウロで毎年開催されるゲームイベント Brazil’s Independent GamesFestival (BIG Festival) の共同設立者であり、エグゼクティブ・ディレクターを務めるエリアナ・ルッシ氏は、「当社がゲーム開発を始めたときには、中南米にゲームをするような環境があるという認識はありませんでした」と語ります。

しかし、この認識はすぐに変わりました。現在 5 年目を迎える BIG Festival は、中南米の才能ある人々が集まる活気に満ちたコミュニティーの舵取りに役立ってきました。このフェスティバルでは世界中のインディーゲームを紹介しますが、中でもラテン系のゲームには特に重点を置いています。

「当社は中南米のハブになろうとしているのです」とルッシ氏。

ビデオゲーム Dandaraのスクリーンショット
ゲーム Dandara がよりリアルになるように、ブラジルの日常生活のイメージを反映 。画像提供: Long Hat House 社。

これまでのところ、この戦略はうまく機能しています。史上最大となった 2017 年のイベントでは、54 カ国から 768 点ものゲームが提案されました。これらの提案のうち半分以上が、地元で制作されたアルゼンチン、ペルー、ベネズエラ、ブラジル、チリのゲームでした。

幅広い中南米のゲームを会場の至るところに展示するなど、このフェスティバルは、サンフランシスコの Independent Games Festival (IGF) のようなほかのインディー・フェスティバルよりも草の根の精神にあふれています。

例えば、このイベントのゲームの多くには独特の文化的要素が含まれています。例えば、Paper Castle Games 社の UnderHero には、極めてベネズエラらしい特異性があります。それは、ベネズエラの現在の経済的・社会的危機を表現した悪名高いブラックユーモアのセンスです。

「ベネズエラ人は、たとえ悲劇的な事件でも、最悪の事態の中にユーモアを見いだすのです。このような文化的要素を必ずしも誇りに思っているわけではありませんが、泣くよりも笑うほうが良いでしょう」と語るアルバーロ・ドミンゲス氏は、UnderHero を ゲーム配信サービスSteam に登録した ゲーム開発者の 1 人です。

ベネズエラらしく、ゲーム UnderHero のヒーローは、最初に遭遇する弱々しい敵に殺されます。その後、子分がショーを乗っ取り、プレイ可能なキャラクターの役割を奪ってしまうというストーリーです。これは、正義の味方が必ず勝つという言葉に対するジョークであり、実に腹黒いコメディーとも呼べる見せ場へとつながっていきます。

文化をゲームに取り込む

同様に、地域の文化を取り込むことによって Dandaraは魅力的な体験となっています。Dandara の開発者が住むベロオリゾンテは、ブラジルのスラッシュメタル (ヘヴィメタルのサブジャンルの 1つ ) の誕生地として知られる山間部の都市で、Sepultura など世界的に知られているスラッシュメタルのバンドが「故郷」と呼んでいる場所です。

また、落書きが有名で、開発チームは毎日、スニーカーを履いたカップケーキなど、素晴らしく風変わりな作品を見ながら仕事場に向かいます。こうしたこの都市ならではの特徴がゲームの中にもたくさん現れます。

「ブラジルの日常生活から取り込めるものはすべて取り込もうとしています」とブラント氏。

もともと旅行者の少ないブラジルの都市の要素をゲームの中に織り込むことで、架空の世界がミステリアスで、独自性の高いリアルなものになるとブラント氏は信じています。

ブラント氏は、一時、ブラジルを離れて華やかなゲーム業界で仕事に就こうと考えたことがあります。国内には大規模なゲーム会社がないため、それが唯一の選択肢のように思われたのです。

しかし、中南米でゲーム機運が高まり始めたため、ブラント氏は留まることにしました。

「私はパイオニアみたいなものですね。ここで始めれば、すべての人が一緒に始めてくれます」とブラント氏は語っています。

 

 

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