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視界から消える!?透明人間ならぬ「透明特急」

高速鉄道を世界で初めて開業したこの日本で、「透明特急」が現実のものになろうとしています。透明な特急列車が田舎の風景を走り抜け、魔法のようにあっという間に乗客をそれぞれの目的地に送り届けるなんて、まるで夢のような話です。デザインを手がけるのは、建築家の妹島和世氏です。

世界でも有数の大規模な鉄道網を持つ日本。全長 27,200 km を超える鉄道交通システムは、世界トップクラスの利用者数を誇り、年間およそ 73 億人もの乗客を駅から駅へと運んでいます。

1964 年に高速鉄道の先駆けとなった最大時速 320 km の新幹線が誕生して以来、日本は一貫して、スピードへの飽くなき挑戦を続けてきました。2015 年には、日本が開発したリニアモーターカーが、時速 603 km という衝撃のスピードをたたき出して世界記録を更新しています。

キャプション: 富士山の前を走り抜ける高速鉄道
キャプション: 富士山の前を走り抜ける高速鉄道

しかし、この最新鋭の日本の鉄道モデルが狙うのは世界新記録ではありません。商業列車としては世界初となる、完全に透明な列車です。

やわらかくその風景に溶け込む

西武鉄道株式会社は、新型特急車両プロジェクトの一環として、2018 年までに「透明特急」を導入することを計画しています。

西武鉄道によると、そのデザインコンセプトは、風景に溶け込むような「やわらかく、やさしいデザイン」。同時に、ゆったりとくつろげるリビングルームにも似た「新しいパブリックスペース」を創設し、特急で過ごすこと自体が目的となるような空間、雰囲気、たたずまいをデザインしようとしています。

ハリー・ポッターの物語と違い、透明人間になるためのマントや、車両を隠すための魔法の道具があるわけではありません。世界的に著名な建築・デザイン専門 Web マガジン「Dezeen」によれば、ミラー塗装された列車の外装は半透明に見え、まさに周囲の風景に溶け込んで見えなくなる“銀の弾丸”を思わせるものです。

この最新列車の外観は、鮮やかな青や黄色に塗装された従来の西武鉄道の列車とは対照的です。これまでの車両はどんな風景を背景にしても目立つものでした。

キャプション: 鮮やかな黄色や青で塗装された西武鉄道の従来車両 。
キャプション: 鮮やかな黄色や青で塗装された西武鉄道の従来車両

「今までに見たこともない新しい特急車両」を目指すため、列車のデザインコンセプトと外装および内装の設計は、妹島和世氏に委ねられました。彼女は建築事務所 SANAA の共同創立者であり、さまざまな受賞歴を持つ建築家です。

「秩父の山の中や都心の街の中など、さまざまな風景の中を走る特急が、やわらかくその風景とともにあるようになれたら良いなと考えました。

また、たくさんの方々が思い思いにくつろげるリビングルームのような、今日もまた乗りたいなぁと思える特急になればと思っています」と妹島氏は語っています。

鉄道ファンたちの複雑な思い

東京で電車通勤しているアカチタカシ氏は、クラシックなデザインが個人的には好みだとして、こう語っています。

「まるで目の錯覚のようで、子供時代によく見ていたテレビマンガを思い出しますね。2020 年のオリンピック開催に向けて 1,350 万人都市がいよいよ準備を進める中で、この手の革新的デザインは海外の関心を引くのではないでしょうか。

キャプション: 高速鉄道における技術上の功績を常に誇りとしてきた日本
キャプション: 高速鉄道における技術上の功績を常に誇りとしてきた日本

このように、妹島氏の革新的なデザインへの期待感は非常に高いものの、一方で日本の鉄道ファンたちからはこの斬新なコンセプトに対する複雑な反応も聞かれます。また、鉄道アナリストの中には、安全面でのリスクを指摘する人もいます。ある匿名希望の鉄道アナリストの意見はこうです。

「オーストラリアでは、安全面において列車の高い視認性が推奨されます。踏切や線路内に立ち入る人に列車がはっきりと見えることが望ましいため、例えば列車の前面を黄色にしてライトを使用するなどして視認性を高めています。

やさしくソフトな外観も十分実用の可能性はあると思いますが、線路をフェンスで完全に仕切る、駅のプラットフォームにホームドアを設ける、踏切や平面交差は使用しない、といった対応が求められるでしょう。隅々までしっかりコントロールされていて、閉鎖された環境の中であれば問題ありません。しかし、日本人がどれだけ事故回避に向けて全力を尽くしたとしても、地震やテロのリスクもありますからね」

果たして夢のデザインコンセプトといえるのか、あるいは列車事故の温床と捉えるのか?西武鉄道では次の 100 年を見据えたフラッグシップ・トレインとして、あらゆるリスクに対する万全な管理体制を整え、成功させたいと考えています。科学技術先進国とされるこの日本で、完全に透明な列車が現れる日もそう遠くはなさそうです。

 

 

(ヒーロー画像)写真提供: Kazuyo Sejima and Associates
キャプション: 世界が待ちわびる日本発の透明特急

 

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