テクノロジー・イノベーション

風力発電、イノベーションで新たな高みへ

Julian Smith Writer

風力には、エネルギーコストを削減し、化石燃料への依存を軽減して、あらゆる文明活動の電力を生み出せる可能性があります。最大限活用しない手はありません。

高速道路を走っていると、ものうげに回っている巨大な風力発電タービンが点在しているのを見かけます。この風車がほぼすべての電力を生み出せるとは想像しがたいでしょう。しかし、全世界の発電量の約 4% は風力発電によるものであり、大いに役立っていることは確かです。

その割合も上昇傾向にありますが、それでも現在の発電量は、風力発電の持つポテンシャルからはほど遠いレベルです。しかし高高度風を利用したイノベーションがその状況を打破するかもしれません。

それは、高高度の風 (高高度とは地上 7,000 ~ 8,000 メートルから 1 万メートル前後) で発電して地上に送電するというアイデアです。このアイデアを実現するために、ハイテク凧やヘリウムガスで浮遊させるタービン、8 の字を描きながら自律飛行する機体など、さまざまなアプローチが提案されています。

地上で風力発電を行う場合は、どこに設置しても発電量が安定しません。一方、風は上空に行くほど強く安定することが科学的に証明されています。つまり、上空には膨大な量のエネルギーが存在するわけです。風力が 2 倍になると、発電量は 8 倍に増加するとされています。

高高度風力発電に関する初のグローバル調査の共同執筆者であるデラウェア大学のクリスティーナ・アーチャー氏は、上空 1,640 ~ 40,000 フィート (約 500 ~ 12,000 メートル) の風には、地上風の 4 倍以上のエネルギーがあり、すべての文明活動の 100 倍を超える電力を供給できると試算しています。

「風力は素晴らしい資源であり、途方もない可能性を秘めています」 (アーチャー氏)。

高高度風を利用した発電

Google が 2013 年に買収したカリフォリニアの新興企業 Makani Power 社は、凧を使って雷が電気であることを証明したベンジャミン・フランクリンのお株を奪うようなデバイスを製作しようとしています。それは、「エネルギーカイト」と呼ばれるもので、最終的な電気料金は、石炭や天然ガスによる発電に匹敵するほど安くなると見込まれています。

エネルギーカイトは、虫のように薄い飛行機のような形状で、羽根の先端に 8 基のプロペラを搭載しています。500 ~ 1,000 フィート (約 150 ~ 300 メートル) の高度で円を描いて飛行するように設計されており、アルミとカーボンファイバーで作られた柔軟性の高いロープで地上施設に固定されます。回転ローターがブラシレス DC モーター (負荷が変化しても安定した速度制御が行える仕組みを持つモーター) を回転させて電力を発生させる仕組みです。

全エネルギーの 70% を発生させるように、風力タービンブレードの先端のシミュレーションを行い、風や天候の変化に応じて、コンピューター・システムが飛行経路を微調整するようになっています。例えば、風速が低い場合は、ローターがヘリコプターのブレードのように回転し、推進力を高めてカイトを上空に留め、完全に無風状態になると、カイトは逆のプロセスで安全に着陸します。

カイトの設置面積は従来の風力タービンよりはるかに小さく、資材の量も約 10% に抑えられます。出力 600 kW のエネルギーカイトの運用試験は、2016 年後半から 2017 年初頭に実施される見込みですが、このカイトの実用化が求められる理由として、高い運用性が挙げられます。Makani Power 社が、エネルギーカイトは米国本土の 3 分の 2 以上の土地で運用できると試算しているように、高高度風力システムは地上型タービンよりはるかに多くの場所 (例えば峡谷など) で運用できるのが利点です。

運用開始当初は現行の標準的な電気料金に太刀打ちできないとしても、軍施設、災害現場、孤島など、発電機と高価な輸入燃料に依存するしかない孤立した地域では大きなメリットがあります。

グリーンエネルギーを生み出す上空飛行デバイス

マサチューセッツ州の Altaeros Energies 社は、発電機と燃料への依存度を軽減できる上空飛行デバイスを開発しています。このテクノロジーは、特に電気料金が国内平均の 10 倍に達するアラスカなどの地域を想定したものです。

アラスカ電力公社は、Altaeros 社に 130 万ドル (約 1 億 4,000 万円) を出資して世界初の商用高高度風力タービンの試験を許可し、辺境地域への電力供給を目指しています。

Altaeros 社の浮遊エアタービン (以下、BATと略) は、ヘリウムが充填された円筒状のデバイスで、内側には回転タービン、外側には 4 つの太いフィンを搭載し、3 本の耐荷重導電ロープで地上施設に接続されます。

2012 年、Altaeros 社は試作機の試験に成功。上空 350 フィート (約 106 メートル) で 100 フィート (約 30 メートル) の 2 倍の電力を発電できることを確認しました。同社は 18 セント/kW/時での電力供給を目指していますが、これはアラスカの辺境地帯における電気料金の約半額です。

しかも、BAT は素早く組み立てることが可能で、豪雨や毎時 100 mph (約 160 キロメートル) 超の暴風でも機能するように設計されており、携帯アンテナやインターネット・アンテナ、カメラ、気象センサーを搭載して飛ばすこともできます。悪天候になると、自動制御システムが BAT を地上のドックに引き戻し、天候が回復するまで待機させる仕組みです。

可能性は無限大

従来の風力発電と競争するためには、飛行型風力発電はほぼ全自動で長時間にわたり安定して動作しなければなりません。さらに、回転ブレードで覆われた巨大な装置を、風力だけで上空に留めるというリスクもあります。

オランダの企業 Ampyx Power 社が開発した PowerPlane は、直径 0.8 インチ (約 2 センチ) のロープが切れたとしても複合センサーで離着陸を制御することで、この問題を解消しています。

上空に浮かんだ機体は、水上スキーでボートの後ろをスラロームするように、8 の字を描きながら風よりも速い速度で飛行。機体が上昇するとロープが引き出され、その先にある地上の発電機が回転して発電します。

機体がロープの長さの限界値である 1,500 フィート (約 460 メートル) まで上昇すると、下降モードに切り替わり、発電機がロープを一定の距離まで巻き取ります。その後、機体は再上昇し、ロープを再び引き出すという繰り返しです。

試作機体は翼長 40 フィート (約 12 メートル) で、50 kW の電力を発電可能です。これは約 30 世帯をまかなえるだけの電力です。チームは 2016 年末までに 2 機の PowerPlane を飛行させる予定で、早ければ 2018 年には、2MW の商用モデルを発売したいとしています。この機体は翼長 100 ~ 130 フィート (約 30 ~ 40 メートル) で、同等の地上タービンのわずか 8% の資材しか使用しません。

ただし、高高度システムはどこでも使用できるというわけではありません。空港、発電所、政府施設の近くの飛行禁止区域では当然飛ばせませんし、発電装置の規制や保証をどうするかという課題も残ります。

「現状では、飛行型風力発電装置が属する正式なカテゴリーは存在しません。カテゴリーが存在しないと保険会社もお手上げです。『無人の乗り物』なのか、『航空障害物』なのか、はたまた趣味の機械なのか、いまだに議論が続いています」とデラウェア大学のアーチャー氏。

とはいえ、テクノロジーの有用性を証明できれば、可能性は無限大に広がります。ちなみに、電力密度が最も高い最速の風は、上空 5 マイル (約 1.5 キロメートル) のジェット気流です。

 

イメージ写真:Tony Webster、Creative Commons、2.0、https://flic.kr/p/pskKMf

 

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