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音楽フェスティバルの社会的意義を考える

Rolling Stone Magazine

アメリカのローリングストーン誌は、社会変革や環境変革への参加意識を高めるために、音楽フェスティバルが音楽ファンにどのように働きかけているかに注目しています。

音楽フェスティバルは、単に音楽だけを楽しむ場ではありません。何十年にもわたり、人々が集い、互いのつながりを確かめ合い、より良い方向に変わったことを実感しながら帰っていく機会を提供してきました。「地球を救おう」という気風を醸成したり、若者に投票に行くよう呼びかけたり、音楽ファンにコンフリクト・フリーの鉱物 (紛争地域で採掘・取引されたものではない鉱物) で作られた電子機器を買うよう促したりなど、音楽の力を使いながら多くの人の心を啓発してきたのです。

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その最も象徴的な例が、ウッドストックでしょう。

1969 年、ニューヨーク州郊外のベセルにある農場で開催されたウッドストック・フェスティバルには、50 万人以上が参加しました。その時代の行動主義や慈愛の精神を示すために集う彼らを見て、世界中が、音楽フェスティバルが持つ大きな影響力に気づきました。

フェスティバルの共同主催者であったマイケル・ラング氏は、2009 年に執筆した著書「The Road to Woodstock (日本語タイトル: ウッドストックへの道)」のプロローグにこう書いています。「あの 8 月の週末、アメリカが激動の時代を迎えていたときに、我々は最高の姿を世の中に示してみせました。たとえわずかな時間だったとしても、自分たちが望んでいた社会を作ってみせたのです」

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今日の大規模なフェスティバルで重要なテーマとなっているのが、「テクノロジー」や「環境」、「社会に良い影響を与える方法」です。ここでは、特に先導的な役割を果たしているフェスティバルをいくつかご紹介しましょう。

グラストンベリー

イギリスで開催される世界最大規模の音楽フェスティバル、グラストンベリーには、毎年 10 万人以上が参加します。このフェスティバルは、1970 年に、60 年代のカウンターカルチャーに影響を受けた農場経営者、マイケル・イービス氏が始めたものです。

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コミュニティーとつながりが重要視されるグラストンベリー。

イービス氏は、会社登記を行ったとき、このフェスティバルについて、「環境に優しいテクノロジーやテクニックを展示するグリーンエリアと、環境、社会、モラルに関するさまざまな問題を議論するフォーラムを用意する」と書いたそうです

このミッションは現実のものとなりました。グラストンベリーの収益の大半は、オックスフォード飢餓救済委員会、ウォーターエイド、グリーンピースなどの慈善事業に寄付されています。また、このフェスティバルでは、政治が中心的なテーマになっており、「レフトフィールド・セクション」として、政治離れ問題に取り組むイベントが行われています。例えば、2015 年のイベントでは忘れ物の長靴をフランスにいる難民に寄付し、2016 年には、イービス氏が EU 離脱の是非を問う住民投票への参加を呼びかけました。

ボナルー・ミュージック&アート・フェスティバル

イギリスのガーディアン紙は、米国テネシー州マンチェスターで開催されるボナルー・ミュージック&アート・フェスティバル (以下、ボナルー) を、「アメリカのグラストンベリー」と表現しました。

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「ボナルーは、世界規模の音楽フェスティバルを開催しようというだけでなく、人々の暮らしや世の中に大きな変化をもたらそうと努力し続けています」と、2002 年の共同主催者を務めた Superfly 社の新規事業およびパートナーシップ担当シニア・ディレクター、アレックス・マチュロフ氏は語ります。

ボナルーでは、「プラネットルー」と呼ばれる村が特別に作られます。この村では、音楽ステージで太陽光発電を利用したり、最近増えている「地球に対する意識が高い」参加者を対象にヨガや瞑想などさまざまなアクティビティーを催しています。

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今年のプラネットルーでは、「世界を変える: 一度に 1 つ買おう」や「情熱を支援に変える方法」といったテーマの討論会が開かれました。コンフリクト・フリー鉱物の使用に関する世界的な動きがあることを、このフェスティバルで初めて知った参加者も少なくありません。家電製品の製造に使われているタンタル、スズ、タングステン、金などの鉱物は、コンゴ民主共和国で暴力行為や人権を無視した残虐行為を行う武装集団の資金源として利用されてきました。

こうした状況を変えるべく、現在は、倫理的かつ責任ある供給源から調達した鉱物だけを使用してコンピューター・デバイスを製造できるようになっているのです。

2016 年末までにすべての製品に関してコンフリクト・フリーへの移行を約束しているインテルは、ボナルーに映画製作者のポール・フリードマン氏を招待し、彼の新作映画「Merci Congo」を上映。参加者たちはこの映画を通して、コンゴ民主共和国の実態を知ることができました。

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デジタル時代に生まれ育った若い世代に正しい認識をもたらすことによって、彼らが何かを購入する際に、十分な情報に基づき、コンゴの鉱山労働者やその家族、地域の暮らしへの影響を踏まえた適切な意思決定を下せるようになります。

その他のパートナー企業には、ボナルー会場のシャワーを提供した Kohler 社があります。同社は、シャワーの利用時間を 6 分間に制限。 平均利用時間の 8 分間の場合と比べて水の使用量を 25% 削減する #CommitToSix キャンペーンを展開しました。

「すべての参加者に協力してもらい、Kohler 社は、その収益をボナルーワークス基金と自然保護委員会に寄付しました」 (マチュロフ氏)

さらに、ジュエリーメーカーの Alex & Ani 社は、ボナルーのためにチャームペンダントを製作し、会場とオンラインで販売。その収益は、ボナルーワークス基金と VH1 セーブ・ザ・ミュージック財団に贈られました。

サウス・バイ・サウスウエスト

テクノロジーの進化を奨励し、より明るい未来づくりを支援しているフェスティバルもあります。1987 年、米国テキサス州オースティンで行われる音楽フェスティバルとしてスタートしたサウス・バイ・サウスウエスト (以下、SXSW と略) は、1998 年からインタラクティブ・フェスティバル (SXSW インタラクティブ) を同時開催するようになり、現在は、ソーシャルメディア・テクノロジーの発信地となっています。

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SXSW は、テクノロジーの現状を評価し、これからの方向性を占う信頼性の高いイベントです。30 年に及ぶフェスティバルの歴史の中で、Wikipedia 財団の共同創設者であるジミー・ウェールズ氏や、米国家安全保障局 (NSA) の情報収集活動を告発したエドワード・スノーデン氏など、テクノロジー関連の著名なスピーカーを迎えたこともありました。

SXSW インタラクティブのディレクター、ヒュー・フォレスト氏は、「我々は常に、より良い明日のためのビジョンを共有してくれる、ひらめきに満ちたリーダーたちを紹介したいと考えています」と語っています。

2016 年にはバラク・オバマ大統領が SXSW に登場。市民の社会参画にテクノロジーが果たす役割を強調しました。大統領は「いまや投票よりもピザを注文するほうが簡単だ」と語り、テクノロジー・コミュニティーに対し政治参加を促すとともに、インターネット主導の現代社会を良い方向に変えるよう訴えました。

小規模でも大きな影響力を持つフェスティバル

このほかに、小規模なフェスティバルでも、親しみやすい雰囲気と独特の視点で評判になっているものもあります。

例えば、米国カリフォルニア州のセントラルコーストで開催されるライトニング・イン・ア・ボトルは、社会参画と環境保護の精神を奨励。「ゴミを残さない」というポリシーが認められ、さまざまな賞を受賞しているだけでなく、アメリカ先住民のチュマシュ族と協力し、文化の盗用問題に対する認識も広めています。女性を支援する会場のムードも高い評価を得ており、実際、イベントスタッフの大部分も女性です。

「自分たちが住みたい世界を手元に引き寄せることが、このフェスティバルの主要な目的の 1 つです。テクノロジーは、その達成に向けて重要な役割を果たしています」と、Do LaB 社のオペレーションディレクター、ケビン・ローエル氏は語ります。

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テクノロジーが貢献するシーンは、最新の 3D モデリング・ソフトウェアを使ったフェスティバルの設計、体験向上のための継続的なデータ収集、ドローンを使ったイベント時の人の流れの調査など、多岐にわたります。

米国ネバダ州モハーベ砂漠にあるモアパリバー先住民居留地で開催されるファーザー・フューチャーもまた、テクノロジーと文化に関するフェスティバルの 1 つです。共同主催者の一部には有名なテクノロジー起業家たちもいます。このフェスティバルの目玉は、ビジネス、テクノロジー、メディアに関する TED スタイルのスピーチです。今年は、Google 社の親会社である Alphabet 社の会長、エリック・シュミット氏が登場しました。

「フェスティバルの参加者は、教育の未来、音楽を楽しむ新しい方法、革新的な食のトレンド、機械知能を使ったハッキングシステム、認知のための記憶の性質など、幅広いトピックについてスピーカーの意見を聞き、インスピレーションを得ていました」と、共同主催者の 1 人であるロバート・スコット氏は振り返ります。

また、スコット氏によると、今年のフェスティバル参加者は、「Avegant Glyph VR ゴーグル」や、Hanson Robotics 社の超現実的ヒューマノイド・ロボット、実体験型サウンド設備「ENVELOP」などの「最先端」テクノロジーを体験したようです。

ウッドストック・フェスティバルの開催から長い年月が経ちましたが、1969 年からフェスティバルの基本的な目的はあまり変わっていません。今の時代も、環境意識を高め、政治参画を推進し、世界にプラスの影響を与えようとしています。社会意識の向上やテクノロジーの進化をテーマにした現在のフェスティバルは、もっと深い意味において、あの歴史的イベントから自然に進化したものだと言えるでしょう。

「すべては、自分たちの住む世界に対する考え方や視点の限界を広げようとする取り組みの一環です。参加者には、楽しむことはもちろん、『次は何?』という問いを自分自身に投げかけてほしいですね」とスコット氏は語っています。

 

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