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ゲーム感覚でフィットネスを楽しめるアプリ

Shawn Krest Writer, Movable Media

最近は、ゾンビ、エイリアン、スーパーヒーローを使ってエクササイズをより楽しいものにしてくれるアプリが登場しています。

ナショナル・フットボール・リーグの「Play 60」では、フットボールをあちこちに投げたり縄跳びなどをして毎日 1 時間体を動かすことで、米国の子供の肥満問題解消を目指しています。生活習慣の改善に着目する従来の方法では、なかなか目標を達成できません。そこで、人々のアクティビティーそのものを変えようと開発されたのが、新しいフィットネス・アプリです。テクノロジーが可能にする革新的な手法によって、あらゆる年代の人々をソファから立ち上がらせています。

フィットネス・トラッカー (身体の活動量を測定するための健康管理ウエアラブル・デバイス) は、アクティビティーやバイオリズムを記録するにはとても便利ですが、果たしてそれだけで健康を維持するための正しい行動を維持できるのでしょうか?この問いが新しいアプリ開発を促し、フィットネス・トラッカーをアクションゲームへと変えたのです。

フィットネス・アプリを開発する Six to Start 社の CEO、エイドリアン・ホン氏はこう説明しています。

「フィットネス・トラッカーでウォーキングやランニングへのやる気を高めることはできても、実際にエクササイズそのものを変えてくれるわけではありません。当社は、エクササイズをもっとエキサイティングなものにすることを目指しています」

同社のアプリは、記録したランニングデータを物語の筋書きの要素として使用。ランナーは、このアプリを使うことで体を鍛えられるだけでなく、物語のキャラクターとなり、生き残るために走ることになります。

エクササイズにおけるゲーミフィケーション (ゲームの力を課題解決などに活かす手法) とは、点数を稼ぐ、モンスターを倒す、報奨を獲得するといった一般的なゲームプレイの特徴を、ランニングやウェイト・リフティングなどのフィットネス・アクティビティーに応用することです。こうした考え方を取り込んだ新世代のアプリとウェアラブル・テクノロジーは、あらゆる種類のエクササイズをゲームに変える可能性を秘めています。

従来の制約から人々を解

エクササイズにおけるゲーミフィケーションの流れは、フィットネス・アプリが使われ出す以前から始まっていました。例えば、音楽ゲームの「ダンス・ダンス・レボリューション」や、リビングで楽しめるフィットネス・ゲームの「Wii Fit」などは、世界中で 2 千万を越えるユニット数を販売。ゲームプレーヤーたちをソファから立ち上がらせ、エクササイズを促しました。こうしたゲームは、運動するきっかけを与えるだけではなく、プレイするのが楽しいという理由で高い人気を集めました。ソファから立ち上がって少しでも汗をかくことに意味があったのです。

それでもこうした初期のフィットネス・ゲームでは、プレーヤーは依然としてテレビやゲーム機の前にいなければなりませんでした。屋外や外出先での自由なエクササイズを可能にし、この課題の解決に寄与したのが、フィットネス・アプリとウェアラブル・テクノロジーです。

ゾンビから逃げるために走る

ランニングは最も人気のあるエクササイズのひとつですが、ダンスや競技スポーツの楽しさにはかないません。

「ルームランナーでのジョギングは退屈で飽きてしまい、苦痛です。ランニングの速度や距離などの履歴管理に役立つアプリは数多くあるものの、必ずしも楽しいものではありません」とホン氏。

Six to Start 社は、まさにこの点を解決する方法を見い出しました。同社の開発した最初のフィットネス・アプリは、人はゾンビの恐怖が迫れば逃げるという、単純な事実に目をつけたのです。

こうしてゾンビから逃げるランニング・アプリ「Zombies, Run!」はまたたく間に世界的大ヒットを記録。「健康になるためではなく、ランニングを楽しくするためにこのアプリを作りました」とホン氏が語るように、「ダンス・ダンス・レボリューション」「Wii Fit」「Zombies, Run!」などは、エクササイズである前にまずゲームであることが成功に結びついたと言えます。

「Zombies, Run!」の複雑に展開する物語は、とても良く練られています。ユーザーは、ある街で増えていくゾンビの脅威から逃れて生き残ろうとします。任務を与えられたユーザーは、生き残った仲間たちのために医療用品を探したり、ひたすら逃げたりするのです。

ランナーはイヤフォンで物語を聞きながら走り、アプリはランナーの動きを追跡して物語の展開速度を調整します。このアプリは、Apple Watch や、RunKeeper と同期する従来のデバイスで使用できますが、現時点では、ほかのフィットネス・デバイスやウェアラブルとのデータ共有には対応していません。もちろん、ランナーは両方の製品を同時に使うことができます。

まるでテレビ番組のように毎年アプリを書き換え、新シーズンをローンチしている「Zombies, Run!」。シーズンごとに、プレーヤーが走り続けるための新しいストーリー展開と新しい使命が用意されます。現在シーズン 5 になるこのゲームは、2015 年の 10 月に 200 万件を超えるダウンロード数を記録。明らかに人々の心をつかんでいます。

ほかにも似たようなコンセプトのアプリはいくつかありますが、いずれも単純なジョギングを、命をかけた走りに変えています。

Six to Start 社はさらに 2 つの強力なゲームを市場に投入。爆弾の爆発を阻止するために、プレーヤーにイギリスを隅から隅まで歩かせる「The Walk」(英国保健省と共同で開発)、エイリアンの攻撃から地球を守るために、プレーヤーに体幹を鍛えるための有酸素運動をさせる「Superhero Workout」の 2 つです。

競合他社もストーリー性のあるフィットネス・アプリを市場に投入しています。例えば、「Battlesuit Runner」では、エイリアンから逃れるためにユーザーを走らせ、ランニング速度を変えることで筋書きを決められるようになっています。アプリ側から、「人質を救出したければ、数秒間ペースを落としてください」「後退する敵を追跡したければ、数秒間ペースを上げてください」といった指示が飛ぶのです。

同時に美しい音楽の効果

どんなに物語が素晴らしくても運動する気になれないとき、心地よい音楽があればうまくいくでしょう。「Zombies, Run!」をはじめとするストーリー性のあるゲームの多くは、適切なサウンドトラックの重要性を認識し、音楽をモバイルデバイスからゲームに取り込むようユーザーに勧めています。

音楽の力をもっと積極的に利用しようとするアプリもあります。テレビ番組「Shark Tank (シャーク・タンク)」でプレゼンをして開発資金を調達したアプリ「 Sworkit パーソナルトレーナー」では、音楽をトレーニング計画の完遂を支援する「秘密の成分」と呼んでいます。実際、音楽とエクササイズの成果には強力な因果関係があるという研究結果もあります。音楽はお金よりも強力なモチベーションになり得るのです。その結果、アプリが、現実社会で割引特典を受けられるようなポイントベースのフィットネス製品にとって変わることさえあります。

また、「Sworkit」ではプロのトレーナーが実演するビデオ・エクササイズが提供され、パーソナライズされた短いサーキット・トレーニング (比較的小さい負荷の運動を何種類か組み合わせて繰り返し行う練習法) の運動を通じてユーザーを導いてくれます。

Sworkit のコミュニティー・マネージャーを務めるリアナ・オルビンスキー氏は、「カスタマイズ機能もポイントです。トレーニング・メニューは、自分自身で作る必要があります。何をするべきかを細かく指示されたくないのが人間ですからね」と説明。

おそらく Sworkit をダウンロードした 1,400 万人を越える人々もそうだったはずです。この中には、アメリカ大統領選で注目を集めるトランプ氏の娘、イヴァンカ・トランプ氏も含まれています。

Sworkit はウェアラブルではなくスマートフォンのアプリとして機能し、現在のところ、ほかの製品とのデータの同期は行いません。

最後までやりぬくため

結局、こうしたフィットネス・アプリはエクササイズをより楽しくすることに成功したのでしょうか。それとも、単に一時の流行に過ぎず、いつかは、長い間一般大衆の関心を集めて結局は捨てられたフィットネス機器の仲間入りをするのでしょうか?

テレビ番組や漫画と同じように、ストーリー性のあるアプリは、ストーリーの良し悪しにその価値が左右されます。筋書きに説得力があり巧みに作られていれば、ランニングを続けるのに役立つでしょうが、突飛な演出で安易に人気を得ようとするなら、ユーザーは離れていくでしょう。

その一方で、アプリが成功するためには、ウェアラブル・デバイスとの連携を用意することも必要です。活動量を計測してくれる Fitbit やこれに似たデバイスの売れ行きが好調ですが、顧客が求めているのは、単にフィットネス・データを記録することではなく、製品を使って健康になることだからです。

調査によると、1 年間 Fitbit を使い続けるユーザーは 30% 未満ですが、3 年以上「Zombies, Run!」を使用しているユーザーは 20% 近くに上ります。

ホン氏は、専用のウェアラブルよりもスマートウォッチに将来性があると考えているようです。英ガーディアン紙でも、「人々はウェアラブルについて理性を失っているようです」と述べ、ウェアラブルが多角的で多元的なストーリーやゲームに必要とされる十分な処理能力を持ち、長期にわたり一般大衆の関心をつかみ続けることには懐疑的な見方を示しています。そんなホン氏率いる Six to Start 社のゲームは、Apple Watch に加え、近い将来 Android Wear とも互換性を持つようになる予定です。

もちろん、ウェアラブルなハードウェアはこれからも進歩し続けるでしょうし、ストーリー性のあるフィットネス・ゲームとウェアラブル・データのやり取りを担うというアイデアには可能性があります。テクノロジーはこれからも人々のイマジネーションを刺激する新たな方法を提供し続け、面倒だったエクササイズをよりエキサイティングで楽しいものに変えるフィットネス・アプリを生み出していくことでしょう。

 

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