イノベーションを生み出す母たち

旅の写真はプロにお任せ

Dana McMahan Writer

ある旅好きの母親が、「きちんとした旅の写真を残したい」という願いからビジネスを立ち上げました。おかげで旅行者は、旅先での面倒な自撮りから解放されます。

2011 年、友人とパリへ旅に出たニコル・スミス氏は、その文化的な景観をバックに撮影した写真が、実は完全な失敗作であると気づきました。

「自撮りしたときに頭が大きく動いていたのでしょう。 きちんとした写真を撮るのはとても難しいのだと分かりました」とスミス氏。

しかし、その認識が変わったのは、スミス氏がパリに住む友人に撮影を依頼したときのことです。

「友人に自分の iPhone を渡して、散策中にスナップ写真を撮ってもらったのです。 撮影後、iPhone を返してもらった瞬間、鳥肌が立ちました。まさに旅の気分がリアルに捉えられていたからです。

第三者がいなかったら、このような写真は撮れなかったでしょう。

最高のお土産になりました」とスミス氏は語ります。

スミス氏はパリから帰ると、今後、旅先で写真家を雇ったらいくらかかるのかを調べました。しかし、手ごろな価格で気軽に頼めそうな人はいないと判明。

この一連の経験にヒントを得たスミス氏は、旅行写真を撮影する Flytographer 社を設立しました。 同社では、世界中の約 200 カ所でプロの写真家を手配。旅行者のスナップ写真をまるで写真報道のようなスタイルで撮影します。撮影場所の候補もどんどん増え続けています。

ビジネスの構築

「今までの人生の中で、これほど楽しかったことはありません。 また、これほど一所懸命に働いたこともありません」とスミス氏。

国際ビジネスとマーケティングを学んだ経験を持つスミス氏は、Flytographer 社を設立した当初、まだ幼い 2 児の母親であり、Microsoft 社でのコンサルティングという安定した職にも就いていました。

「波風を立てたくないと思っていました。 スタートアップには不安があったのです」とスミス氏は振り返ります。

しかし、そうした恐れや未知の要素をはねのけて、40 歳の誕生日を目前に Flytographer 社を立ち上げたのです。 最初のクライアントは、誕生日にパリへ旅行する友人でした。 スミス氏は、Craigslist (Craigslist Inc. 社が運営するコミュニティー・サイト) で見つけた写真家に撮影を依頼。Skype でミーティングを行い、撮影は無事に成功しました。ちなみに、この写真家は現在 Flytographer 社に常勤しており、世界で最も忙しい写真家の一人として活躍中です。

Flytographer 社の設立者、ニコル・スミス氏
旅行者の記念になる写真を撮影する Flytographer 社の設立者、ニコル・スミス氏。 写真提供: Flytographer 社 (ローマ) のロバータ氏

スミス氏は、各地域の写真家たちと撮影の予約を取り付ける中で、

「こうした撮影は人々が心から喜んでくれるだけでなく、写真家にとっても素晴らしいサービスであると確信しました」と語ります。

そこで、スミス氏は会社を法人化し、スタートアップを支援する地元のアクセラレーターに参加。2013 年 3 月にウェブサイトを立ち上げました。

「立ち上げ当初はぱっとしませんでした。 私自身もまだフルタイムで働いていましたし、2 週間たっても予約が入りませんでした」とスミス氏。

そして、ある晩午前 3 時のこと。 ついに、ロンドンのカップルがフランス旅行の撮影を予約してくれたのです。 「予約が入ったことを知った瞬間、泣きましたね」とスミス氏。

また、そのちょうど 2 カ月後、NBC ニュースが新しい休暇写真のトレンドについて取材を行い、Flytographer 社を取り上げてくれました。

「この記事が非常に大きな転機になりました」 (スミス氏)。

ゆっくりと、しかし着実に

スミス氏は、パートタイマーを雇って予約を管理し、1 年後にはフルタイムの仕事を辞めました。 そして、サービスを提供する都市や、撮影を依頼する写真家を追加するなど、事業の拡大に向けて動き出したのです。 地元のエンジェル投資家の支援を受けながらチームを育成する一方、地元であるブリティッシュ・コロンビア州ビクトリアにオフィスを開設し、技術面の構築も開始しました。

彼女が最初に立ち上げたウェブサイトは Squarespace サイトで、1 カ月 20 ドル (約 2,200円) のソフトウェア・システムと電子メールで何とかしのいでいました。 現在、Flytographer 社には、宿泊施設の予約サイトとして知られる Airbnb と同様の独自のカスタム・ダッシュボード・システムがあります。

別荘の予約サービスが宿泊先の写真を紹介するように、Flytographer 社では各地域の写真家の写真を紹介しています。 顧客は、気に入った写真家を選択し、旅行先での撮影について希望日を連絡できます。

Flytographer 社の設立者、ニコル・スミス氏とその家族 (ルイーズ湖)
スミス氏一家は、カナディアン・ロッキーのルイーズ湖への旅を撮影。 写真提供: Flytographer 社 (ルイーズ湖) のリンジー氏

これまでは、すべてを電子メールで処理していましたが、 ダッシュボード・モデルを使用するようになって以来、利用者による問い合わせの送信、その後の写真家や撮影に関する情報の受け取りはすべてダッシュボード上で行われています。 もちろん、撮影した写真はダッシュボードで提供されますし、潜在顧客が写真家の評価を確認することも可能です。

「このダッシュボードのおかげで当社の撮影コンシェルジュは通常の 4 倍の予約を処理できます」とスミス氏は自信を覗かせます。 Flytographer 社の予約の 3 分の 1 は、 リピーターと、既存顧客から紹介された人です。

大切な記念

「Facebook や Instagram での写真の共有は、これまでにない速度で広がっていますが、品質の低い自撮り画像では、旅の良さを十分に表現できません。 そもそも、お客様のほとんどは、ソーシャルメディアで写真を見せびらかすために予約をするわけではないでしょう?」とスミス氏は指摘。

ほとんどの顧客は、高品質な写真を壁に飾りたいだけなのです。

Flytographer 社は、「Passport Magazine: The Magic of Travel」誌の発行とともに成長を続けています。この雑誌は、オンラインおよび紙で発行する季刊誌で、休暇旅行の写真、各都市のローカル情報、感動的な顧客の逸話などを掲載しています。

スミス氏は、これらすべてを、自分が生まれ育ったビクトリアで実現できたことに幸運を感じているといいます。

「最新のテクノロジーのおかげで、もはやニューヨークやシリコンバレーにいる必要はありません。 夢のようでときどき自分をつねってみているほどです。 この状況を心の底から楽しんでいます」 (スミス氏)。

※文中に記載の金額は、日本語原稿執筆時の為替レートで計算しています。

メイン画像の写真提供: Flytographer 社 (ローマ) のロバータ氏

 

 

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