ファッション

パフォーマンス・アートの未来をつくるファッション・テック・デザイナー×バイオニック・ポップ・アーティスト

Ken Kaplan Executive Editor, iQ by Intel

バイオニック・ポップ・アーティスト、ファッション・テック・デザイナー、2 人のアーキテクト、義肢製作会社がチームを組み、パフォーマンス・アートの未来を作り変えました。その方法に迫ります。

ハイテクに精通したオランダ生まれのデザイナー、アヌーク・ウィップレヒト氏 は、ここ数年の間、SF のようなウェアラブル・テクノロジーをファッション・ショーや業界イベントに取り入れてきましたが、今こそ身体を楽器に変えるビスチェ型ウェアラブルを製作するときだと考えました。 そこで、マルチメディア・パフォーマンス・アーティストである ヴィクトリア・モデスタ氏 の協力を得て誕生したのが、Sonifica です。

このネーミングは「sonification (ソニフィケーション)」に由来します。ウィップレヒト氏によると、ソニフィケーションとは、非言語音声を使用して情報を伝達する、つまりデータを「知覚化」することです。

Sonifica プロジェクトを通じて、モデスタ氏とウィップレヒト氏は、アート、テクノロジー、アーキテクチャーを融合し、音の出るビスチェや音響効果を組み込んだ義足など、インタラクティブな音響ウェアラブルを 3D プリントで製作しました。

チームは、マイアミに本社を置くMonad Studio 社 のアーキテクトであるエリック・ゴルデムバーグ氏とヴェロニカ・ザルクバーグ氏、また革新的な義肢製作会社である LIM Innovations 社 とが連携し、音と身体の間にかつてないつながりを生み出しました。

3D プリントで製作された音の出るビスチェには、長い牙が付いています。突き出た牙にはセンサーとアクチュエーターを搭載。 どちらもオープンソースのハードウェアとソフトウェアを使用しており、ジェスチャーを認識するコンピューティング・モジュールと、動きを追跡する 6 軸加速度計、ジャイロスコープが組み込まれています。モデスタ氏はこれらを使ってライブ・パフォーマンスの音を調節します。

「モデスタ氏自らが楽器になって、動きと音で環境とやり取りすることができます」とウィップレヒト氏。

ウィップレヒト氏と Monad Studio 社のゴルデムバーグ氏は、この独特なアートを着用したモデスタ氏の体験からフィードバックを得て、数カ月にわたり牙の付いたビスチェに取り組みました。

「このプロジェクトを通じて、生の原始状態、つまり人を動かしている基礎エネルギーを引き出し、音、視覚、触覚、空間、ファッション、アーキテクチャー、衣装デザイン、彫刻が融合した新しい芸術の形をまとめ、育んでいます」とゴルデムバーグ氏は説明します。

Sonifica を実演するヴィクトリア・モデスタ氏
ヴィクトリア・モデスタ氏の身体を楽器に変えるビスチェ型ウェアラブル「Sonifica」

ウィップレヒト氏が音を使うものを製作したのは Sonifica が初めてですが、彼女の特徴である挑発的で遊び心にあふれた魅力はここにもよく表れています。 Sonifica ビスチェを原始的で直感的な「ものを言う」オブジェだとするウィップレヒト氏は、

「私はプログラミングとデザインで知られていますが、音楽についてはあまり経験がありませんでした。 ヴィクトリアとのコラボレーションは、デザインを試作しながら、音への取り組み方を学習するという奇妙な組み合わせになりました。 このコラボレーションを進める中で、どのように音響振動を構成し、影響を与えるかについてアイデアがわいてきました」と振り返ります。

バイオニック・ポップ・アーティスト

ラトビア生まれのモデスタ氏は、パフォーマーであり、科学とテクノロジーに対する情熱を持つ未来派でもあります。 彼女は機能的なアートの一形態として義足を使用する、自称「バイオニック・ポップ・アーティスト」として知られています。

出生後の事故の後遺症で子どものころからずっと痛みに苦しんでいたモデスタ氏は、20 歳のとき自らの意志で左脚の膝下切断手術を受けました。 それでも、彼女は恐れることなく、パフォーマンス・アートへの情熱を追求し続けました。

実際、モデスタ氏は、“主張する変形可能な付属品”として義足を活用する術を身につけました。

ビスチェ型ウェアラブルの作業をするアヌーク・ウィップレヒト氏
テクノロジー、アート、音楽を融合する Sonifica ビスチェをデザインしたアヌーク・ウィップレヒト氏

モデスタ氏は「 On The Inside 」誌に、こう語っています。
「補われた義足を医療器具として捉えるのではなく、機能的テクノロジーとファッションを駆使して 1 つの芸術形態として身を着ける方法を試すことができました。さらに、第 2 の皮膚としてだけでなく、いかに体系的な役割を果たすポップカルチャーとして身に着けることができるかということも検証できました」

また、このビスチェには変革の力があるとして、

「牙はさまざまなシルエットを作ります。 単に動物的な骨格というだけでなく、ある種のセクシーさを身にまとうこともできます」とモデスタ氏は言います。

技術的、感情的なデザイン

ウィップレヒト氏には、ロボット工学、プログラミング、身体信号処理、3D プリント、機械学習など、幅広いスキルを活用してアートと科学を融合した作品が数多くあります。

それらの作品は、「発明の母」ウィップレヒト氏によって、盛り上がりを見せるメーカー・ムーブメントと、遊び心にあふれたハイテク・ファッションのセンスが融合されたものです。 彼女の作る服は、着用者の主観的距離 (他者との間で不快に感じない距離)、気分、感情、動き、世界への視点に反応します。

ステージ上でパフォーマンスを行うヴィクトリア・モデスタ氏
ライブ・パフォーマンスの音を調節できるビスチェ Sonificaを着用したモデスタ氏 (右)

例えば、スパイダードレス は、その襟の部分に、極端に距離を縮めようとする人を攻撃するメカニカルな脚が付いたデザインで、キラー・カクテル・ドレスの概念を変えました。 また、神経科学を利用した ユニコーン・ウェアラブル では、脳波を検知して小型のカメラを作動させ、ADHD (注意欠陥多動性障害) の子どもたちが重要な瞬間を思い出せるように促してくれます。

ウィップレヒト氏の魅力的な衣装デザインを見た人は、思わず触れたくなります。 Sonifica も例外ではありません。

「Sonificaに付いている牙の形を見ると、思わず触ったりつかんだりしたくなります。 それは、ごく自然な情動です。 空間にある音の拡がりを通して、物理的な接触をより原始的な方法で変換すると、アナログとデジタルの間にあるハイブリッドなパフォーマンスになり、興味深いのです」とウィップレヒト氏。

彼女によると、まだ実験段階にある Sonifica はモデスタ氏の身体に合わせて変化しながら徐々に進化するそうです。 彼女のチームは、近々行われるパフォーマンスで、コードとデザインをオープンソース化し、観客がプロジェクトに関われるようにしたいと考えています。

「ただ観るだけのショーを制作しているのではありません。コラボレーションによって一緒にショーを作り上げ、親近感や、そこに参加するという新しい感覚を生み出しているのです」とウィップレヒト氏は説明。

一方、モデスタ氏は、「未来の楽器は、意味のある動きを組み込むことができる、これまでにない演奏を可能にしてくれるでしょう。

私の身体に人工的な拡張機能を融合させることによって、私のパフォーマンス・アートに全く新しいパワーがもたらされました」と語っています。

写真提供: アヌーク・ウィップレヒト氏

 

 

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