テクノロジー・イノベーション

ドローンが救う多くの命

フライング・ロボット・テクノロジーは、遠隔地の医療援助や環境の監視などにおいて、研究者に新たな手法をもたらしています。

世界保健機関 (WHO) は、2014 年に西アフリカを襲ったエボラ出血熱で 11,314 人が死亡したとしています。このエボラ出血熱は、さまざまな理由から、ものすごい勢いで広まりました。ウイルス感染の初期段階における死者が孤立した地域で発生したために、次々と感染が広まるまで気付かなかったのも理由のひとつです。

こうした結果を受け、研究者は、遠隔地の患者を迅速かつ安価に診断する手段としてドローンを評価しています。

ジョンズ・ホプキンス大学医学部の病理学者ティモシー・アムケレ博士は、「一番近い病理検査室が、村の病院から 2 日間歩き、さらに連絡船に乗らないと着かないような場所にある場合、患者の血液検査は難しくなります」と指摘します。到着するころには、生体サンプルの検査期限が過ぎ、患者を救うどころではなくなっているからです。

アムケレ博士は、大学院生がドローンを使って血液サンプルを輸送するアイデアを提案したとき、はじめは懐疑的でした。

「結局、Amazon から本や靴を送るようにはいかないのです。血液はそれよりはるかに繊細ですから、完全な状態を維持しなければなりません」

しかし、考えれば考えるほど、彼はそのアイデアが魅力的に思えてきたのです。

「バイクはアフリカの一般的な輸送手段ですが、ドローンはバイクより安価です。さらに、道がなくても険しい地形であっても、カラスみたいに飛んでいくんですからね」とアムケレ博士。

2015 年 7 月、アムケレ博士は UAV (ドローン・マルチコプター) のエンジニア 2 人と協力し、ボルチモア郊外の施設で実証テストを行いました。ボランティアから採取した 56 個の血液サンプルをドローンに積み込み、38 分間の空輸プロジェクトを実施したのです。

比較のため、別の 56 個のサンプルは車で運びました。

その結果、ドローンで運んだサンプルでも、赤血球数やグルコースレベルなどの重要な特性は劣化せず、ドローンがサンプル輸送の代替手段として有効であることが証明されました。

ドローンによる輸送方法は、一般的な検体検査のほとんどで有効であり、全検体検査の 80% がこの方法で実施できるようになると考えられます。

この実証テストを足がかりとして、アムケレ博士は 10 月後半に第二弾のテストを実施。細菌サンプルを生きたままドローンで輸送できるかどうか検証しました。この細菌サンプルは、特定の抗生物質に対する感度を判断するために肺や尿路感染のバクテリアを培養するなど、あまり一般的ではないものの、血液サンプルと同じくらい重要な細菌生体テストで使用されるものです。

現在、アムケレ博士はデータの分析とコンパイルの真っ最中ですが、中間集計の結果は良好だとしています。

こうなれば、次は実世界でのテストです。パイロット・プロジェクトとして、ドローンを東アフリカの農村地帯上空を飛ばす計画です。

ナイジェリアでの少年時代から、サブサハラ・アフリカ (サハラ砂漠より南の地域) の臨床研究室の品質改善に取り組んできたアムケレ博士は、政府や地域の医師と協力し、数カ月かけてこのパイロット・プロジェクトを始動しようとしています。

「うまくいけば、その効果は絶大です。遠隔地へのアクセスが改善されれば、患者を早期に診断して処置できるようになるでしょう」と語る彼は、

ドローン・テクノロジーが命を救うと考えているのです。

ドローンは現在の輸送手段に比べてコストが安いため、必要な医療援助を遠隔地に提供できます。ドローンによる輸送が実用化されれば、サンプルの輸送方法が大きく変わるとするアムケレ博士の元には、インドネシアから早くも問い合わせが入っています

インドネシアにある 900 以上もの有人島の多くは、サンプルをテストできる臨床研究室がないからです。

また、米国の大都市にあるクリニックや病院も、ドローンを使ったサンプルの輸送手段について問い合わせています。地域で収集したサンプルを中央検査室に迅速かつ安価に輸送する手段として、彼らもドローンに注目しているのです。

「ドローンは人のために活用され、世界的な問題解決に貢献しています」と語るのは、エディー・コーデル氏です。デジタル・フォトグラファーである彼は、サンフランシスコで 11 月 19 日に開催された第 1 回 フライングロボット国際映画祭を発案したドローン愛好家でもあります。この映画祭には、「Drones for Good (人のためになるドローン) 部門」があります。

「ドローンは消火活動の支援や、行方不明者の探索、環境の監視などに役立っています。ドローンなら、閉ざされた地域にも飛んでいき、人々に支援品や物資や届けることができます。用途はイマジネーション次第で無限に広がっていきます」とコーデル氏。

映画祭に参加した「Drones for Good (人のためになるドローン) 部門」の作品から、4 つのドローン・プロジェクトをご紹介しましょう。

Syria Airlift Project
内戦で疲弊するシリアに、ドローンを使って食料や衣料品を届けます。これなら、物資を届ける際に誰一人として危険にさらされることがありません。

救援活動を支援する Uplift Aeronautics の創設者兼エグゼクティブ・ディレクターであるマーク・ジェイコブセン氏は、「我々がドローンを使うのは、武器を使う代わりに人々を飢餓に追いこみ、人々から医療機会を奪おうとする組織と戦うためです」と語っています。

Skycatch Relief
今年 4 月に、マグニチュード 7.8 の大地震によって街が瓦礫と化したネパールを支援しています。300 万人近い避難民にマイラー・ブランケットやレインコートなどの支援物資を送り届けるほか、3D マッピングを使用して建物や歴史的建造物の損傷を評価。居住可能な状態かどうかを判断し、建て直しを支援します。

Rainforest Airforce
2014 年、ペルーのアマゾンに渡った Tushevs Aerials は、Rainforest Airforce を立ち上げ、ドローンを熱帯雨林の保護に役立てるようにと、原住民のリーダー向けにトレーニングを実施しました。

トレーニングはペルー最大の原住民ネットワークである AIDESEP が主催。参加者はロレト県やマドレ・デ・ディオス・アマゾン県から集まりました。

Waterfly
MIT とトロント大学の共同プロジェクトで、最先端の検出テクノロジーとドローン群を使って湖や河川をスキャンしています。目的は、野生動物や、人類の健康、飲料水にとって脅威となる非常に小さなシアノバクテリアを検出することです。

チーム一丸となって作業を進めることで、ドローンは超高画質画像や水質調査機を使って水界の生態系に関するデータを収集し、Web 経由で科学者に転送します。

「テクノロジーの絶え間ない進化に伴い、新たなチャンスが生まれています。

ドローンは可能性の限界を広げ、私たち人類の能力を高めてくれる存在です」とコーデル氏は語っています。

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