テクノロジー・イノベーション

商用ドローン向け交通管制システムの設計

Ken Kaplan Executive Editor, iQ by Intel

NASA の科学者とテクノロジー業界のリーダーが、ドローン飛行の効率性と安全性の両立を目的としたドローン自動交通システムの開発を進めています。

2020 年までに、私たちの上空は非常に危険な状態に陥るおそれがあります。 約 260 万機の商用ドローンが運用されるようになるうえ、一般ユーザーたちもドローンを所有して操縦するようになると、さらに数百万機もの飛行ロボットが加わることになるからです。

「一般家庭でドローンを所有するようになると言っても信じない人がほとんどですが、私はそう思っています」と、NASA で無人航空機システムの交通管制の研究責任者を務めるパリマル・コパーデカー氏は語ります。

コパーデカー氏は真剣そのものです。 特に、視認できる範囲を超えてドローンの飛行が許可された場合には、交通量の増加に起因する悲惨な衝突を回避しなければなりません。そのために、無人航空機システム (UAS) の交通管制 (UTM) システムを開発しなければならないほど、事態は深刻なのです。 ※上空の安全性を高める方法については、Talks at Google でコパーデカー氏の講演をご覧ください。

「私は現在開発しているものを『視認交通管理』と呼んでいます。 視認できる範囲を超えてドローンの飛行が許可されるようなら、ドローンを電子的に追跡できなければなりません」(コパーデカー氏)。

ドローン飛行の急増
リノステッド空港で行われた TCL2 のデモで固定翼型ドローンを飛ばす参加者。 .

配達、インフラの調査、科学、捜索救助活動にドローンを使用する方法を企業が模索する中で、商用ドローンの可能性が広がりつつあります。 「ドローン技術は急速に成熟しています。260 万機もの商用ドローンが飛行するようになるまで、航空交通管制システムの構築を待ってはいられないのです」と語るコパーデカー氏は、未成熟なドローン経済を活性化するための航空交通システムを開発することで、先手を打ちたいと考えています。

1958 年に政府と業界が航空交通管制システムを導入したのは、グランドキャニオン上空で 2 機の航空機が衝突事故を起こした後だったことをコパーデカー氏は覚えているのです。

「効率性と安全性を両立させ、低高度空域でのドローン運航が経済的価値を発揮できるように、早めに体制を整えておく必要があります」。

コパーデカー氏と NASA のチームメイトがドローン交通システムの構築を開始したのは 2015 年のことです。 クラウド・コンピューティング、人工知能、ソフトウェア自動化を駆使して強化されたこの交通システムでは、アプリケーション・プログラミング・インターフェイス (API) を使用して、他のサービスのシステムへの接続を提供しています。

「現在の主要な航空システムでは、誰もが航空管制官と話し続けなければなりません。例えば、デルタ航空では、運行計画を管制塔に送ると、管制塔で航空管制官が経路の競合を特定。経路を分離して最終的な飛行経路を指示します。 これからは、コスト効率に優れた信頼性の高いシステムが必要です。操縦者が飛行制限に関する情報や、すぐ近くで操縦している他のパイロットを特定する情報にアクセスできれば、操縦者自身が安全に飛行する場所と時間を決定できるようになると考えています」とコパーデカー氏。

柔軟でスケーラブルな交通管制システムでは、数百万人のドローン操縦者が安全かつ確実な方法でシステムを同時に使用できます。

管制システムの原型

コパーデカー氏は、過去に交通手段の効率性と安全性を両立させる必要性が高まった例として、1930 年代の生活を挙げます。

「馬、馬車、路面電車、車、歩行者が交差点を無秩序に行き交い、大混乱を引き起こしていました。 各交通手段の安全性と効率性を維持するために、車線や一時停止の標識など、あらゆるものが登場したのがこの時代です」。

Ames Research Center
カリフォルニア州シリコンバレーにある NASA の Ames Research Center で、航空管制システムについて説明する NASA のパリマル・コパーデカー氏 (右端)。

コパーデカー氏は、1993 年から航空交通管制に関する研究を指揮してきました。Aircraft Owners and Pilots Association (航空機オーナー・パイロット協会) によると、将来の航空管制の形成において彼以上に中心的役割を果たしている科学者はいません。

UTM の研究が実を結べば、商用ドローンの操縦者は、ネットワーク接続された通信システムに接続するだけで、ドローンが安全かつ効率的に目的地まで飛行できる時間や方法を決定できるようになるはずです。 米国運輸省の自動運転車への取り組みと同様に、このシステムも完全に自動化されることになるでしょう。

「特定の空域で運航する場合、軌道などの運航情報をシステムに送信し、他の操縦者が使用していないことを確認します」(コパーデカー氏)。

交通サービスとその他のサービス

コパーデカー氏が所属する NASA チームは、連邦航空局 (FAA) やさまざまな業界のリーダーと協力して、2019 年まで研究開発を続けることになっています。その後、FAA がドローン技術のイノベーターと協力して 2025 年までに交通管制システムを完成させ、導入する計画です。

データ交信システムは、操縦者と FAA の間で必要な情報だけを無線で共有します。 計画、スケジュール設定、追跡、検知の機能を提供するテクノロジーとサービスは、さまざまな業界リーダーから提供されることになるでしょう。

「今後、商用ドローンの操縦者が作成した飛行計画に基づいて、安全な方法で空域へのアクセスを確保できるよう、さまざまな企業が支援する可能性があります。 例えば、追跡機能は Verizon やインテルなどのテクノロジー / サービス・プロバイダーから提供されるでしょう。 これにより、複数の操縦者とテクノロジー/サービス・プロバイダーが 1 つのシステム上で相互にやり取りできるようになります」とコパーデカー氏。

一方、NASA の仕事は、業界間や大学間のコラボレーションを促進することです。

6 月上旬、Alphabet 社の Project Wing、インテル、Virginia Tech 社は、Project Wing チームが開発中のドローン宅配交通管制システムをテストするためにさまざまな演習を実施しました。

Google の親会社である Alphabet 社によるドローンプロジェクト Project Wing の共同責任者、ジェームス・ライアン・バージェス氏はブログでこう説明しています。
「数年のうちに、Project Wing をはじめ、さまざまな企業が数千もの無人航空機 (UAS) を同時に飛ばすようになるでしょう。そうなると、ほかの UAS との衝突を避けるだけでなく、有人航空機、ビル、地形、天候パターン、特別なイベントを避けながら UAS のルートを動的に決定できるシステムが必要になります」

ライアン氏のチームは、バージニア工科大学 の Mid-Atlantic Aviation Partnership (MAAP) が運営する FAA 認可のドローンテスト飛行場で、UTM プラットフォームのテストを行いました。 インテルは、自動捜索救助活動で 2 機のインテル® Aero レディー・トゥー・フライ・ドローンを操縦。MAAP が DJI Inspire を飛ばす中、同じエリアで、Wing 社のパイロットの 1 人が操縦する 航空機 3 機が、荷物の集荷および配達の任務を実行しました。

「操縦者はこれまで手動で障害物を避けながら操縦する必要がありましたが、UTM プラットフォームを使うと、あらゆる UAS の飛行経路を自動的に管理し、競合が発生する場合は各航空機の確実なルートを新規に計画できることを実証しました」とライアン氏は説明しています。

また 1 カ月前には、インテルが、商用ドローンのインテル® Falcon 8+ Systemで実行される新しいアプリケーション、インテル® ミッション・コントロールを使用して、自律型ドローンによる橋梁検査のデモを行いました。 . 通常の橋梁検査では、熟練パイロットがドローンを飛ばしてさまざまなアングルから構造を撮影。後日、橋の画像を比較し、新たな亀裂や弱点を確認するために、再び同じ作業を繰り返す必要があります。しかし、インテル® ミッション・コントロールを使用すれば、橋の画像撮影に最適化された飛行経路を作成できるため、橋梁検査を簡素化し、自動化できるというわけです。

「従来の現地調査方法や現地測量方法では、数時間のダウンタイム、収益の損失、作業の遅れが発生する可能性があります。また、検査官や測量技師が特殊な場所や到達しづらい場所に立ち入る必要がある場合には、ケガの危険性も高まります」と、インテル副社長兼無人航空機システム担当ジェネラル・マネージャーのアニール・ナンデュリは説明し、さらにこう続けます。

「同様の目的でドローンを導入して航空データを取得すれば、作業を迅速化でき、安全性と効率性が高まります。 自動化により、ドローン技術が使いやすく信頼できるものになり、ドローンを使用する企業は高い投資収益率 (ROI) を実現できるでしょう」。

信頼性の高い追跡システム

航空交通量や天候などの情報を安全に交換する交通管制システムでは、十分な無線通信帯域幅が必要になります。

「ドローンはデータを取得、処理、送信する航空機であり、堅牢で低レイテンシーのワイヤレス・ネットワーク接続にますます依存するようになります」とナンデュリ。

彼によると、業界リーダーたちは、商用ドローンの操縦者にとっての5G ワイヤレス・ネットワーク・テクノロジーのメリットを調査していると言います。

ドローンの交通
2020 年までに予測されるドローンの交通量の大幅増加に備えて、低高度での航空管制システムが必要。

今のところ、コパーデカー氏は、商用ドローンのパイロットが作成した運航エリアのスケジュールと計画に基づいて、他の操縦者パイロットが飛行経路を回避または調整できるようにするために、既存のテクノロジーを活用しています。

「携帯電話、航続距離、衛星ベースまたはビーコンベースのシステムを利用して追跡できます。 私たちの目標はテクノロジーを選択することではなく、これが将来のドローン飛行に必要な性能であると伝えることです」とコパーデカー氏。

いまや世界人口のおよそ 95% に携帯電話の電波が届いていますが、それでもサービスエリアは陸地の 55% にすぎません。 携帯電話を利用できない場所では、衛星ベースの通信方法が有効だとコパーデカー氏は説明します。

ドローンの検出能力の強化

現時点では、パイロットが FAA から特別な許可を受けていない限り、操縦者が視認できる範囲を超えてのドローンの飛行は許可されていません。 しかし、多くの人が、まもなく規制が解除されるであろうと考えています。 ゴーグルやドローンのカメラを使用するパイロットもいるでしょうが、ドローンの商用利用においては、自動化を活用する可能性が高まります。

ドローンの交通量が増え、上空が混雑し始めると、ドローン同士が接近して飛行するようになります。 インテル® RealSense™ デプスカメラ・マネージャーや人工知能をはじめとするコンピューター・ビジョン (画像の処理や理解) のテクノロジーにより、ドローンは対象物を確認、検出し、電線、木、あるいは飛行中の他のドローンとの衝突を素早く回避できるようになります。 コパーデカー氏は、一部の宅配ドローンは人が近くにいるかどうかを検出し、配達場所を調整できるだけのスマートさを備える必要があると指摘します。

5 月に、国際民間航空機関 (ICAO) は、航空業界が低高度空域でのドローンの交通を管理するための世界的な枠組みを提供できるよう国連機関が支援することを発表しました。この発表を大躍進と捉えるコパーデカー氏は、 たとえ競合相手であっても、各国政府や各業界の協力が必須であると主張。

「そこには、空域への安全なアクセスという共通の関心事があります」と語っています。

 

 

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