サイエンス

ドローン、動物保護に活躍

Kristin Houser Writer & Editor, LA Music Blog
自然保護用ドローン

革新的な研究者や自然保護活動家は、絶滅のおそれがある動物の個体数調査をはじめ、有益な生体データの収集、さらには密猟の防止にまでドローンを使用しています。

道に迷ったハイカーは、頭上から聞こえるドローンのブーンという飛行音によって、救助がまもなく到着 することを知ります。 人里離れた地域の医師なら、ドローンの飛行音は、待ち望んでいた 医療品 の到着を知らせるものとなるでしょう。 しかし、中には、そのようなハイテク機器が上空から舞い降りてきても、気付かない人たちもいそうです。

アフリカのサイから 海に棲む鯨 まで、地球のいたるところにいる動物の保護に、ドローン・テクノロジーが役立っています。

「自然保護活動家はドローンを使用して、生態系の状況や野生動物の生息地の変化を地図に描いたり、公園や野生動物保護区内の違法行為を発見したりしています」と、Wildlife Conservation Society の保護支援ディレクターであるデイビッド・ウィルキー氏は説明します。

アフリカのサイ
自然保護用ドローンによって密猟者から保護されるアフリカのサイ。

足跡の識別により絶滅危惧種を追跡して密猟を防止したり、鯨の潮吹きの水を収集したりするなど、カメラを搭載したドローンは、有益なデータを収集して、動物の保護に役立っています。

迫り来る大量絶滅

科学者は、現在の地球上で 大量絶滅 が進行しているとして警鐘を鳴らしています。 世界自然保護基金とロンドン動物学協会の 2016 年のレポートによると、地球上の野生動物の約 3 分の 2 が 2020 年までに絶滅する可能性があるというのです。

「地球規模の生態学的災害となるような事態を抑えるには、是が非でも、絶滅危惧種の数と分布に関する信頼性の高いデータを定期的に入手する必要があります」と、動物学者で獣医のゾーイ・ジュウェル氏は言います。

トラの足跡
自然保護活動家は、トラの足跡を使用して絶滅寸前の動物を追跡可能。 画像提供: ConservationFIT。

「絶滅危惧種に関する信頼性の高いデータを収集することは、困難であると同時に費用がかかりますが、 生息地を保護するためには不可欠です」とジュウェル氏。

この問題を解消するため、ジュウェル氏は、野生動物の生物学者であるスカイ・アリバイ氏とともに WildTrack を共同設立しました。これは、生体を傷つけない方法で動物の追跡に取り組む非営利組織です。 この組織の最新のプロジェクト ConservationFIT では、動物の足跡の画像を使用して、12 以上の絶滅危惧種を監視しています。

ジュウェル氏によると、研究者は 足跡識別技術 (FIT: Footprint Identification Technique) を使用することで、自然界の平穏を乱すことなく、絶滅危惧種に関する新しい知見を得ることができるといいます。

足跡のデジタル画像によって、絶滅危惧種、個体の性別や年齢を特定するだけでなく、さらに将来的には同一個体の足跡を認識できるようになるのです。

カメラを所有する人ならだれでも、この組織のウェブサイトに 動物の足跡の写真を送信 できますが、最近になって、足跡画像の収集方法の 1 つとして、ドローンが最適であることが分かってきました。

「作業場所によっては、鳥瞰図が得られることが大きなメリットになります」とジュウェル氏。

ドローンなら人里離れた地域にもアクセスできます。 例えば、ナミビアの広大な砂漠でチーターの痕跡を探したり、中国のはるか北東部の豪雪の中でアムールトラの痕跡を探したりすることは、研究者にとっては難しくても、ドローンにはたやすいことだったりするのです。

ジュウェル氏は、「ドローンを使うと、足跡の発見にかかる時間を大幅に短縮できる上に、徒歩での横断が極めて困難な地域にもアクセスできます。スタッフを 1 ~ 2 名確保できれば、何人ものチームがわざわざ困難な地形を苦労して進む必要もなくなります」と説明します。

チーターの一家
ドローンを使えば、人里離れた地域でもチーターの跡を容易にたどることが可能。

夜空に浮かぶ Air Shepherd

Air Shepherd は、Charles A. and Anne Morrow Lindbergh Foundation が実施するプログラムで、自然保護用ドローンを使用して、アフリカのサイおよびゾウの密猟を防ぐ取り組みを進めています。

この組織によると、サイの角や象牙は需要が高く、アフリカのサイやゾウは 10 年以内に密漁による絶滅に追い込まれる可能性があるとのこと。

アフリカで Air Shepherd のドローン操縦主任を務めるオットー・ウェルトミューラー・フォン・エルク氏によると、違法な密猟は動物を脅かすだけでなく、年間 700 億米ドル (約 7 兆 8 千万円) の利益を生み、組織犯罪やテロリスト集団の資金源になることも多いそうです。

日中は監視員によってほとんどの密猟行為が防止されるため、現在はほぼすべての密猟が夜間に行われます。 そこで、Air Shepherd が威力を発揮します。 赤外線カメラを使用することで、ドローンチームは公園内の夜間の密猟行為を発見。地上の監視員を送り込んで、密猟者を捕まえることができます。

Air Shepherd は、実際に行われている密猟を阻止するだけでなく、ドローンの視認性が高いおかげで密猟の抑止にもなります。

「ドローンの非常に大きな利点は抑止効果です。 Air Shepherd のドローンが地域の上空を飛行するだけで、密猟が止まります。 ドローンが飛行しているという噂が村中に広がり、密猟者の行為を止めさせることができるのです。有益なデータを収集できるドローンは、

まさに新しくて価値あるツールだと言えます」とウェルトミューラー・フォン・エルク氏。 目的意識を持って、さまざまな自然保護プロジェクトや自然保護組織と協力することが最も重要です。

協力や連携がないと、ドローンだけでは密猟問題を解決できないからです。

現在 Air Shepherd は、南アフリカ、マラウイ、ジンバブエで活動しており、近いうちに新しい地域や国に活動範囲を広げたいと考えています。

「地上の密猟対策チームと連携するドローンをもっと飛ばしたいと思っています。そうすれば、さらに多くのゾウやサイを救える確率が高まるでしょう」とウェルトミューラー・フォン・エルク氏は語ります。

Ocean Alliance

Air Shepherd のドローンはサハラ以南のアフリカをパトロールしますが、Ocean Alliance とインテルのドローンは、世界中の海で水面に浮上している鯨の上を飛行します。 Parley SnotBot と呼ばれる、この特注の自然保護用ドローンは、単にこの巨大生物をより詳しく観察できるようにするだけではありません。大規模な探検にコストをかけることなく、鯨の潮吹きの水を収集 できるのです。

「噴気」とも呼ばれる潮吹きは、鯨が水面に浮上したときに肺から息を吐き出すもので、研究者はその成分を通じて、鯨のさまざまな生態を知ることができます。

アラスカ州フレデリック・サウンドで行われた最新の潮吹き水収集ミッションは、National Geographic の TV 特番「Earth Live」向けに撮影されました。

「この全く害のない方法で収集する情報量は膨大です」と、Ocean Alliance の CEO、イアン・カー氏は語っています。

ドローンが鯨の上空を飛行している間に、鯨は何度か息を吐き出します。 そのタイミングを狙って、DNA やストレスホルモン、妊娠ホルモン、さらにはウイルス、バクテリア、毒素までを容易に収集します。

研究者たちは、近くの船の上で SnotBot がサンプルを持ち帰るのを待つだけです。 その後、潮吹き水は人工知能 (AI) を使用して分析され、研究や自然保護の取り組みに役立つリアルタイム・データが生成されます。

観察者効果の問題を解決

ドローンの使用によって、研究者や自然保護活動家は、調査対象の動物に直接接することなく、プラスの影響を与えることができます。 WildTrack のジュウェル氏によると、このように動物との距離を置くことは、動物の調査で重要な要素であるといいます。

自然保護用ドローンを水上に放つ人
飛翔準備の整ったインテル® Falcon™ + SnotBot ドローン。 写真提供: テッド・ウィルク氏。

「調査対象の動物の行動や生態を変えると、正規母集団を表さない、信頼性の低いデータが得られるリスクがあります」とジュウェル氏。

自然保護用ドローンの存在そのものが十分に 動物にストレスを与えるだろう と懸念する人もいますが、ジュウェル氏は、十分な高度での飛行、現地の規制の遵守など、適切な予防措置を講じれば、そのようなストレスは避けられると考えています。

「ドローンは、自然保護に役立つ大きな可能性を秘めています。 優れた機能が搭載されるようになるに伴い、責任ある使用の必要性も増しています」とジュウェル氏は語っています。
※文中に記載の金額は、日本語原稿執筆時の為替レートで計算しています。

 

 

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