テクノロジー・イノベーション

人工知能が力仕事をラクにする?

Bob Violino Writer

スタートアップ企業の StrongArm Technologies 社では、ウェアラブル・センサー、データ分析、マシンラーニングを使用して、職場の人間工学に関する情報をデジタル化しています。一方、このケガの予防技術の真価を検証しているのが GE 社の製造部門です。

例えば、重い荷物を持ち上げる人には、背中を損傷するリスクがあります。センサーやデータ分析テクノロジーを搭載したスマートデバイスを装着することで、重い荷物をラクに持ち上げるコツを指導してくれたり、実際に負荷を軽減してくれたらどうでしょうか?

スタートアップ企業の StrongArm Technologies 社 が提供するスマート・ハーネス・ベルト「ErgoSkeleton」は、まさにこれを実現するウェアラブルで、仕事中のケガを回避するのに役立ちます。作業者が重い物を持ち上げたり運んだりする間、安全な姿勢を維持できるようサポートするほか、作業者の動きを追跡し、人間工学に関するデータをほぼリアルタイムに提供できます。このデータによって作業者および管理者はケガを回避できるのです。

全米安全評議会 によると、職場のケガは無理をしたことが原因であるケースが最も多く、持ち運び作業もその 1 つです。毎日約 13,000 人の米国従業員がケガをしていることからも、予防策の必要性は明らかです。

こうした取り組みの一環として開発された V22 ErgoSkeleton (V22) について、StrongArm Technologies 社の最高マーケティング責任者であるマット・ノルシア氏はこう説明します。「荷重を上半身から脚に移動させることによって、よくある背中のケガや腕の疲労を軽減する仕組みです。

おかげで、工場作業者は安全に物を持ち上げたり、長い距離を楽に運んだりすることができます」

肩越しに荷重を主要な筋肉へと再分配することで、適切な筋肉を使用して持ち上げ動作を行えるようになり、リスクが低減されるというわけです。

荷重の拡散

作業者は V22 をバックパックのように着用し、ウェストに固定します。付属のコードが支持具の両肩から伸び、作業者はそのクラッチコードを手に取り付けます。

持ち上げるとき、手のクラッチが連動し、物の荷重がコード経由で肩から背骨と腰を通って移動。これにより、腕と腰だけでなく、身体全体を使うことができます。

ErgoSkeleton に取り付けられたウェアラブル・センサーの FUSE が、作業者の身体能力に関するデータを追跡し、マシンラーニングを使用してケガのリスクを判断。作業者はより安全な持ち上げ手順に従って作業できます。

リアルタイムのデータ追跡により安全性のレベルを最適化

「このシステムは、基本的にケガを避け、より適切に作業する方法についてデータの収集と評価を行い、雇用主と従業員の双方を指導するものです」とノルシア氏。

FUSE デバイスは、1 秒当たり 12.5 回、ErgoSkeleton 上に取り付けられたセンサーからデータを収集します。その後、プロセッサーがそのデータを分析。リアルタイムの洞察と触覚フィードバックを各作業者に提供することで、安全に物を持ち上げることができます。

また、FUSE プラットフォームは「安全性スコア」を生成します。このスコアはリスクを等級づけするための指標で、産業環境リスクの一因になり得るあらゆる要因に基づいて重み付けを行います。

「このスコアを改善の指標として使用します。

FUSE は、正確なデータに基づいて、職場、従業員、作業プロセスを最適化するツールとなっているのです」とノルシア氏は説明します。

人間工学についてデータに基づく意思決定を提供

「General Electric (GE) 社は、2016 年に世界中の 7 拠点で StrongArm 社の FLX および V22 システムの試験導入を開始しました」と語るサム・マレイ氏は、GE 社の EHS (環境・安全・衛生) グループのデジタル・アクセラレーション・リーダーです。

マレイ氏は、「当社では、この試験導入について、デジタル・ソリューションを適用して人間工学を追求するとともに、従業員の負担を軽減する方法を試すチャンスとして捉えています」と説明。

実際、このテクノロジーを利用する従業員は、さまざまな身体の動きを伴う選別作業や梱包作業を行うほか、GE 社の複数の流通拠点では、多くの従業員が繰り返し作業や、非常に複雑な作業をこなしているといいます。

マレイ氏は、FUSE プラットフォームをデータに基づく意思決定ツールと呼んでいます。人間工学に関するデータによって、作業者の環境衛生や安全に関する新たな洞察が得られ、最も必要とする人への対処を優先させることができます。

FUSE センサーのドッキング・ステーション
作業者は StrongArm Techonologies 社の FUSE センサーをドッキング・ステーションに保管。写真提供: StrongArm Technologies 社。

「重点的に人間工学を追求すべき分野はどこなのか、あらかじめ取得した情報をフル活用して意思決定が行えるようになりました。これによって各拠点は適切に優先順位を付けることができます」とマレイ氏。

また、GE 社では真剣な対話も活発になっているとして、マレイ氏はさらにこう続けます。

「各拠点の安全衛生の専門家と従業員の間の会話や意思決定が、FUSE ウェアラブルとデータ・プラットフォームから得られるデータに基づくようになりました。

例えば、ケガを防ぐために作業者の行動または作業環境を変更する必要があるかどうかを判断できます」従業員にほぼリアルタイムのデジタルコーチングが提供され、安全性の問題に関する従業員の意識も向上します。

このテクノロジーを使用し始めてまだ間もないものの、マレイ氏は、リアルタイム・データによって、従業員と管理者はケガが起きる前にどこで作業を止めるべきかを特定できると信じています。

さらに、副次的なメリットとして、FUSE センサーを身に着けた従業員の持ち上げ作業に対する意識が向上します。

StrongArm 社と緊密に連携することで、GE 社のニーズに合うようテクノロジーを微調整しているというマレイ氏は、こんな質問を投げかけます。

「変化する安全性スコアがしきい値に達したことを感知し、すぐに拠点のトップに警告するにはどうしたらよいでしょうか?さらに先を見越して、しきい値に達する前に警告するにはどうしたらよいでしょうか?」

こうした質問は、人間工学に関するデータの新しい活用方法に言及するものです。マレイ氏は、GE 社のフィールドテストから得られる定量的なフィードバックに基づいて、StrongArm 社と新機能や機能改善に関する戦略を策定しています。

New Lab のイノベーション

StrongArm Technologies 社は、New Lab に集まる 90 社以上のスタートアップ企業の 1 つです。ニューヨーク・シティーのブルックリン・ネイビー・ヤードにある New Lab は、元機械工場で、その広さは 84,000 平方フィート (約 7,800 平方メートル) にも及びます。ここに、インテルと Lenovo 社がスポンサーを務めるInnovation Workshopがあり、ロボット工学、人工知能 (AI) など新しい分野の企業に幅広いリソースが提供されます。

New Lab
複数のハイテク・スタートアップ企業にリソースを提供する New Lab。写真提供: New Lab。

StrongArm 社をはじめとする New Lab メンバー企業は、この Innovation Workshop でプロトタイプを製作します。例えば、AI オブジェクト検出、IoT、ビッグデータ、ハイパフォーマンス・コンピューティング、ドローン・テクノロジーなど、最先端のテクノロジーを使用できます。

StrongArm 社のノルシア氏は、「FUSE、V22 のような製品の開発にこれらのリソースを使用することで、進化を続ける最新テクノロジーを駆使して、従業員の安全、衛生、生産性を確保するための革新的な方法をいち早く生み出せるのです」と語っています。

 

 

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