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これで安心?!自己診断センサー登場

日本やアジア太平洋地域では生活習慣病が増加しています。複数の症状を素早く正確に検査できるテクノロジーの登場によって、早期診断のチャンスが増え、予防治療の促進が期待されます。

日本は、世界で最も健康な国の 1 つとされてきました。しかし近年の西洋化の波と経済の目覚ましい発展により、脂肪と糖分を多く含む食生活が定着。座ってする仕事も多くなっています。

世界保健機関 (WHO) では BMI (肥満指数) が 30 以上を肥満と定義していますが、この数値だけを見ると、日本の肥満率は依然として先進国の中で最低レベルです。しかし日本人は、メタボリック症候群と言われる肥満症、糖尿病、高血圧の影響を受けやすいため、日本では BMI 25 以上を肥満と定義しています。この基準で見ると、日本の肥満率は西ヨーロッパ諸国と同レベルの 20% となり、しかも 1962 年から 2002 年にかけて 3 倍に上昇しています。

世界で最も高齢者人口が多い国として、深刻な高齢化問題を抱える日本では、メタボリック症候群に関連する生活習慣病リスクの高い患者数が増え続けています。検査と診断の簡素化と迅速化を図るテクノロジーの開発が急務となっているのはこのためです。

息をのむほど素晴らしいテクノロジー

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検出結果をスマートフォンに表示してくれる富士通の呼気センサー (試作品)

検査と診断がより簡単に行えるように開発されたツールの 1 つに呼気分析があります。これは、体を傷つけたり器具を挿入したりすることなく、呼気に含まれる揮発性有機成分の変化を検出できる診断ツール (非侵襲的診断ツール) です。こうした成分の変化は、メタボリック症候群に関連する病気も含め、具体的な症状と密接に関係しています。

ただ、このツールの欠点はガス・クロマトグラフィー (気体中に含まれる特定のガスの濃度を測定する装置) を使用する点です。装置が非常に高額で、熟練したオペレーターも必要です。結果の分析にも数時間かかります。これでは気軽に診断を受けるにはハードルが高すぎるでしょう。

そこで日本の富士通研究所は、胃ガンの診断を主眼とした携帯型呼気センサーを開発しました。胃ガンは日本で最も発症率の高いガンの 1 つで、メタボリック症候群にかかるとさらに発生リスクが高まるとされています。今後富士通は、このセンサーの診断機能を、肥満症、糖尿病、高血圧、さらに肺ガンなど、メタボリック症候群に関連するその他の生活習慣病にも拡大する計画です。

富士通が目指すのはテクノロジーの利便性です。結果を素早くスマートフォンなどに表示することで、患者が病院で検査や診断、治療を受けるのを促し、予防治療に間に合うように配慮しています。

「日本では、病院の待合室で長時間待たされるのは日常茶飯事です。待ち時間に自分で呼気を調べて結果を検査に利用できれば、診断効率は向上します」と、富士通研究所の基盤技術研究所で研究マネージャーを務める壷井 修氏は語ります。

呼気センサーに似たイノベーションの 1 つに、米国のジョンズ・ホプキンス大学が開発した「MouthLab」があります。これは唾液と呼気サンプルを分析して健康状態を示すマーカーを検出する仕組みです。このほかにも、イスラエルの Exalenz Bioscience 社が開発している肝機能を評価するための呼気検査ツールや、英国で開発が進む結核菌呼気アナライザーなどもあります。

信頼性の高い自己診断の実現に向けて

富士通のセンサーをはじめとした自己診断ツールは、いつでも気軽に自宅で検査できる点で、患者にとって大きなメリットがあります。病院での診療を後回しにしがちな人にとっては迅速に結果が得られるメリットもあります。

また、メタボリック症候群に関連する生活習慣病の患者は、瞬時に終わる定期チェックで安心を得られるでしょう。正確に自己診断できる患者が増えれば、病院の待ち時間も短くなる可能性があります。

わずか 5mm2 を測定する反応コンポーネントを搭載した富士通のセンサーは、携帯性の高さも強みです。

壷井氏は、「スマートフォンに呼気センサーを組み込むことも可能です。あるいは、ウェアラブル・デバイスに組み込むことで、皮膚ガスを測定するセンサーにもなります」と説明。

こうしたウェアラブル診断テクノロジーを開発しているのは富士通だけではありません。例えば、スマートウォッチの「InfraV」は、自分の血糖値や心臓の健康状態などを簡単にモニタリングできます。

米国の DNA Medical Institute 社が開発した診断ツール「rHEALTH」は、スマートフォン・アプリを使って、たった 1 滴の血液から数百種類の病気を数分以内に診断できます。

しかし、一方で問題もあります。結局のところ、モバイル・ヘルス・テクノロジーの普及は、ユーザーがデジタルツールを使いこなせるかどうかにかかっているからです。特に高齢者にとっては容易ではありません。

医療・ヘルスケア分野の市場調査を手がけるカンター・ジャパン社の池田 育弥氏は、こう語っています。「高齢者層のスマートフォン普及率は、依然として若い世代より低い状態です。新たに開発するデバイスでは、うまく使いこなせない高齢者を考慮して、直観的な操作性を重視する必要があります」

さまざまな課題を残しつつも、デジタル・ヘルス・ツールには、生存率を高めて医療コストを削減する効果があることは確かです。「医師は、患者が普段どのような生活をしているのか把握することで、患者を総合的に理解できます」と池田氏。

現在、高齢化が進む日本では、その健康と長寿の長い歴史が生活習慣病の脅威にさらされています。新しいセンサーを使った自己診断機能が、日本人の命を救い、医療費の削減に力を発揮することが期待されます。

 

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