テクノロジー・イノベーション

自動運転車に未来はあるか?

Deb Miller Landau iQ Managing Editor

自動運転車実現への道のりには哲学的、技術的な障壁が立ちはだかっています。エンジニアたちにとって、この障壁こそが、信頼性の高い安全なシステムを構築するためのモチベーションとなっています。

1939 年のニューヨーク万国博覧会で General Motors 社が発表したライド型展示アトラクション「フューチュラマ」は、テクノロジーを埋め込んだ道路システムによって自動車を制御するもので、新時代の到来を予感させました。自動運転車の開発がスタートしたばかりのころは、車自体の機能よりも、それらをサポートするインフラストラクチャーに焦点が置かれていたのです。

当時は、ドライバーの要らない自動運転車が実現するとは到底信じがたいものでしたが、その後数十年をかけての技術的進歩や、さまざまな業種間でのパートナーシップのおかげで、いよいよ現実のものになろうとしています。米国ニュースメディア大手の BI Intelligence 社のレポートによると、2020 年までに自動運転車の台数は 1,000 万台に達すると予想されており、米大手調査会社の IHS 社は、2035 年までに自動運転車の売り上げ台数が 2,100 万台に到達するとしています。

現代に話を戻すと、センサー技術、コンピューター・プロセッサーの能力、機械学習 (コンピューターがデータを蓄積、学習し、膨大な量のデータに基づいて数学アルゴリズムを作成する能力) の発展のおかげで、今はまさに自動運転車を完成させるための条件がすべてそろった千載一遇のチャンスであると言えるでしょう。インテルの自動運転車ソリューション部門で主任システムエンジニアを務めるジャック・ウィーストは、このチャンスを、あらゆる可能性が一度に押し寄せたことを意味する「パーフェクト・ストーム」と呼んでいます。

BMW グループ、インテル、Mobileye 社の 3 社は、2021 年に BMW の完全自動運転車の量産を開始することを目指して提携関係を締結。

「長い道のりを経て、ようやく機が熟したと言えるでしょう。自動運転車の実現に欠かせない基礎的、科学的条件がそろうまでに、これだけ時間を要したということです」と語るウィーストは、まだ最終地点には到達していないものの、だいぶ近づいたと考えています。

完全自動運転へのギアチェンジ

SAE International (モビリティー関連の技術者および専門家を会員とする世界規模の団体) は、自動運転のレベルを 5 つに分類しています。レベル 1 と 2 は、アダプティブ・クルーズ・コントロール (定速走行・車間距離制御装置) 、レスポンシブ・ブレーキ (衝突被害軽減ブレーキ)、パーキングアシスト (駐車アシスト) といった機能を備え、ドライバーによる運転制御を必要とします。レベル 3 は基本的にオートパイロット (自動操縦) ですが、必要なときはいつでもドライバーが制御できます。

レベル 4 では、ドライバーがうたた寝をしても大丈夫なほどドライバーによる制御を必要としなくなり、レベル 5 では、自動車が完全に自動化され、ドライバーのためのシートやコントロールすら必要なくなります。

完全な自動運転車または自律走行車を実現するには、想像を絶するほどのデータ処理量を必要とします。ウィーストによれば、現代の携帯電話の契約プランでは、ビデオや音楽のストリーミングなどを含めて毎月数ギガバイト分のデータをカバーしていますが、自動運転車の場合は毎時数テラバイトのデータ量を消費することになります。この量はクラウドに転送するにはあまりにも膨大なため、とてつもないデータ量をリアルタイム処理できる高性能なコンピューターを搭載する必要が出てきます。

また、自動運転車には、さまざまな情報を感知する独自のカメラ、ライダー (レーザー光を使ったレーダー)、レーダーといったセンサーが搭載されています。例えば、カメラは人を見ます。一方、深さを感知できるレーダーは、本当の人間と、厚紙を切り抜いた人の形との違いを認識します。このようにシステム全体が連携している必要があるのです。

ウィーストはこう説明します。

「高精度センサーが必要であるだけでなく、これらのセンサーから取得したデータを処理する高性能で中枢的な役割を担う知能が必要です。この知能が、車両周辺の現実世界を映し出す仮想環境を作り出し、例えばステアリング、ブレーキングといった動作を的確に行うための非常に複雑かつ高速な意思決定をリアルタイムに下さなければならないのです。クローズドループ (閉ループ) と呼ばれるこの位置決め制御方式は、車に必ず搭載しなければなりません」

また、自動運転車の自律性は、その時々の状況をどれだけ認知できるかにもかかっているとして、ウィーストはこう続けます。

「私たち人間は、現実世界に存在するすべての異なる対象物を捉えようとします。特に複雑で、認識および理解すべき対象物がいたるところに存在する都市環境では、絶え間なくその作業が続きます。自動運転車はそれらすべてを正確に特定できなければならないのです」

そこで、データ科学者が大規模なデータセットを使ってセンサーデータを分析し、機械学習モデルを作成。自動運転車は、このモデルを使って学習し、トレーニングを重ねることで、視界に入ってきた対象物に対する意思決定を確率論的に行います。

人々の考え方や暮らしを変える

自動運転を実現するためのテクノロジー開発が加速するなか、果たしてコンピューターが人間の直観にとって代われるのかという疑問も残ります。

これについて、インテルで自動運転車両の開発に取り組む UX クリエイティブ・ディレクターのマット・ユルダナはこう語ります。

「自動運転車は、技術的なチャレンジであるだけでなく、人間および社会全体にとってのチャレンジです。もし人々が自動運転車によって安心感を得られず、感情的にも心理的にもその信頼性に納得できないのなら、私たちが技術を駆使して試みていることには何の意味もなくなってしまいます」

さらに、こんなことも語っています。

「新しいテクノロジーを採用しようとするとき、そのプロセスはゆっくりでよいのだと思います。現在、古いポンコツ車両が電気自動車のテスラと道路を共有しているのと同じように、きっと自動運転車も、時間をかけて当たり前のものになっていくでしょう」

医療機関を例にとってみても、一部のハイテク研究所では最新式のデジタルサーバーを使って情報を共有していますが、それ以外の事務所では、まだまだ医療記録を印刷し、紙の書類で情報を管理している状況です。

完全な自動運転車の中には、路面電車や地下鉄と同様に、最初に指定されたルートを忠実にフォローし、特定の行き先との間を往復するものもあるでしょう。しかし、私たちはすでに、バスやタクシー、タクシー配車アプリの Uber、さらには Zipcar や car2go などのカーシェアリング・サービスを利用することで、運転に付きものの「コントロール」をやめるという選択をしています。

つまり、A 地点から B 地点に移動するということに対するコンセプト自体が変わりつつあるのです。

BMW グループの エルマー・フリッカーシュタイン氏が自動運転車の BMWi3 で IDF 2016 のステージに到着。インテル、BMW グループ、Mobileye 社は、2021 年までに市場投入することを目指して完全自動運転車の開発に共同で取り組んでいる。

「自動運転車は人々の考え方や交通手段の優先順位を変える可能性があります。いずれは今と全く異なる交通手段を選択するようになるかもしれません。新しい交通手段の登場によって、ちょっとした用事で出かけただけのに、駐車場探しに苦労したり、交通渋滞にはまってイライラすることはなくなるかもしれませんね」とユルダナ。

ウィーストも、「ガソリン車が世界を変えたように、自動運転車は、世界中の人々の暮らし、働き方、都市の構造やデザンに変化をもたらすでしょう。それこそ現時点では想像もできないようないろいろな変化や混乱が起こり、さまざまな産業に影響を及ぼすと思います。非常にワクワクする進化です」と語っています。

 

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