テクノロジー・イノベーション

侍魂を持った対話型人工知能「A.I.Galleria」が挑むAIのネクストステージとは?

Intel Japan Writer

兜と鎧を身にまとい、バリトンボイスで英語を話す。彼は日本の長い歴史の中で、刀の代わりに A.I.(人工知能)を持ち、世界中の人々と対話し始めた最初のサムライです。名前は「AI-Samurai」。クール・ジャパンにおけるクール・テクノロジーを持ち合わせた、次世代のロボットです。

英語をしゃべるサムライの正体は、人工知能

今、世界中が人工知能の話題で溢れています。スマートフォンはもちろん、人間の碁のプロ棋士を打ち負かしたのも、自動運転車の制御も人工知能。そんな中、人工知能を持つ侍、AI-Samurai に今、世界中から注目が集まっています。

AI-Samurai を生み出したのは、東京・板橋の人工知能ベンチャー「ネクストリーマー」。

AI-Samurai は、毎年 3 月にアメリカ合衆国テキサス州オースティンで行われる最先端テクノロジーとアートの祭典「サウス・バイ・サウスウエスト(SXSW)」にも出展され、世界中から大きな関心を持って迎えられました。

「昨今話題の人工知能は、ぱっと見てその魅力が分かるものが少ない。世界中の人に対話の人工知能と身近に接してもらうために、AI-Samurai を開発したのです。AI-Samurai は、持ち前の意外性で、“使われる対話 AI ”を世界で具現化しています」とネクストリーマーの代表取締役 CEO の向井永浩氏は語ります。

人工知能をサムライに搭載するという奇抜なアイデアは、偶然の出会いによって生まれました。ある日、向井氏は銀座で夕食をとっていた時、アメリカで日本文化を紹介するイベントを主催する財団法人の理事長に出会います。そして理事長に「丸武産業という会社の鎧を展示するのだが、喋るようにできるか」と相談されます。丸武産業はかつて武将たちが身に着けていた本物の鎧兜を当時の設計で今に蘇らせる職人技術を持った鹿児島の会社でした。

「弊社の人工知能を使えば、サムライをしゃべらせることができると話すと、理事長が大いに喜んでくれて。ふたりで盛り上がって AI-Samurai のコンセプトが生まれました。」(向井氏)

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「人工知能の魅力が分かりにくいのは、人の役に立つ、適材適所のアプリケーションがほとんど見当たらないから」と語る向井氏。

AI-Samurai はこれから、「世界の人々との対話の中で学び、リアルな世界にチャレンジし続ける」ために、ワールドツアーへと旅立とうとしています。すでにアメリカで延べ 3000 人以上と対話を行ったデータが蓄積されているほか、次のイベントに向け、現在は英語の他にも日本語も学習中です。

A.I.Galleria インサイド! 活躍が広がる「対話する人工知能」

AI-Samurai に搭載されているのは、対話する人工知能、マルチモーダル対話エンジン「A.I.Galleria」(詳しくは、http://www.ai-galleria.com)。ネクストリーマーが開発したこの人工知能は、AI-Samurai に搭載されたかと思えば、世界最大のバイク市場を持つインドで、運転しながらスマートフォンを操作するためのデバイス「スマートヘルメット」にも採用されています。またアパホテルの社長をモデルに開発した人工知能ボットが、フロント業務を担当するデモンストレーションを実施するなど、そのインターフェースは多岐にわたります。(詳しくは、http://www.nextremer.com/blog/2969/

「一般的な人工知能は、基本的には産業ロボットを進化させることに使われてきました。人工知能を活用し、より効率的に、人間にしかできなかったことを代行できるようにする。しかし我々はそうしたアプローチではなく、人と対話し、コミュニケーションができる知能を目指しています。A.I.Galleria はユーザーとコミュニケーションをするために必要な形状にマッチさせて、あらゆるものに搭載することができます。」と久保寺氏は話します。

「人間とコンピュータが対話をするシーンの数だけ、A.I.Galleria の利用の形がある」と久保寺氏。
「人間とコンピュータが対話をするシーンの数だけ、A.I.Galleria の利用の形がある」と久保寺氏。

こうした人間との対話を可能にする技術が「自然言語処理」。これは人間の言葉をコンピュータに処理させる技術であり、たとえば iPhone の『Siri』などスマートフォンの音声認識ガイダンスに採り入れられています。

雑談から意図を理解するのは AI のチャレンジだ

実は、人間との“対話”には、高度な自然言語処理に加え「意図を理解する」ことが求められます。今の人工知能が最も苦手としているのは、私たちの何気ない“雑談”なのです。

「人と対話をするためには、意図を理解することが求められます。例えば、レストラン検索では場所やジャンル、予算などを聞かれて答えるような、簡単な意図の把握は、人工知能の得意分野です。しかし僕たち人間同士の対話では、雑談の中で相手の意図やトピックの重心がどこかを探り、話の脱線を見抜くことが求められる。さらに相手の本心は何かを、顔の表情などの、言外の意味を手がかりに汲み取らなければならない。そうしなければ、対話がキャッチボールにならず、破綻してしまうのです。私たちが何気ない雑談で行っていることは、まだまだ人工知能にとっては高度なコミュニケーションなのが現実です」(久保寺氏)

現在の人工知能にできることは、「ゴールありきの対話」だといいます。つまり情報の検索や商品の購入など、明確な答えがあるところへ向かうための対話です。それを実現したのが、ネクストリーマーが開発したアパホテル社長「元谷芙美子氏ロボット」。元谷氏を再現したロボットに A.I.Galleria を搭載し、アパホテルで実際のチェックインなどのフロント業務を行います。

今後はキャリア・コンサルタントなど、対話を重ねることで相手を理解し、提案を行うような職種で、A.I.Galleria の活躍が期待されます。

「僕たちは人の未来を脅かすような人工知能は作りたくありません。Scary(脅威)な人工知能ではなく、Scale up(向上する)するものこそをつくりたいと思っています」(向井氏)

A.I.Galleria の強みは、対話を通じて新たな情報をつくり出し、蓄積し、再利用できること。AI が仕事を奪うという風潮がある中で、AI が仕事を生み出していくような状況をつくれるのではないでしょうか。日本で深刻化している少子化問題などについても AI を通じた解決策があるかもしれません。「今はその前段階として、対話データからパーソナルな課題や趣向を分析する取り組みを進めています」(久保寺氏)

AI ベンチャーだからこそできる、野心的な試みに大きな期待が集まります。

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