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少年の夢を叶えた、3D プリンター製義手

Tim Ryan Contributor

BMX のフリースタイル・ライダーになりたい。生まれつき左手のない 8 歳の少年のそんな夢を、メーカーと X Games のチャンピオンが叶えました。

ジミー・ウィルソンくんが世界で一番好きなこと、それは BMX (自転車モトクロス)。でも、生まれつき左手に指がない少年にとって、この激しいスポーツに身を投じてスリルを味わうなんて、夢のまた夢。そんなジミーくんの夢を叶えたのは、3D プリンターの技術と想像力豊かな人たちの力の結晶でした。

BMX は、物おじしない大胆さと高度な機敏さが求められる厳しいスポーツです。しかし、8 歳のジミーくんは身体的な制約があってもなお、BMX への情熱を失うことはありませんでした。

ジミーくんは、COMPLEX 社とインテル向けに制作した一連のビデオの中で、こう語りかけています。「自転車でジャンプできるようになりたいけど、なかなか上手くいかないんだ。ハーフパイプで空中を 360 度回転できるようになりたいんだけどね」

ジミーくんにはもともと勇気がありました。その勇気に加え、3D プリント技術を活用した発明が、彼にプロ並みの操縦技術をもたらしたのです。

夢の実現を助けたのは、ジミーくんと同じ街に住むピーター・ビンクリー氏です。ジミーくんと同様に、生まれつき左手に指のない息子を持つビンクリー氏が、世界的なボランティア団体である Enabling the Future (e-Nable) に加わったのも、息子のためでした。この団体は、手や腕など上肢の補助装置を必要とする人々のために、オープンソースの義肢デザインを使って 3D プリンターで義手を製作しています。

ビンクリー氏は自分の息子のための義手を開発して以来、ほかの人たちのためにも義手を製作するようになりました。ジミーくんの義手製作に取りかかったビンクリー氏には、インテルの先端技術とオープンソース・コミュニティーの支援はあったものの、BMX についての専門的な知識は皆無でした。そこでビンクリー氏は、設計開発にあたり、BMX のプロ、ジェレミア・スミス選手に助言を求めたのです。

2013 年のエクストリームスポーツの祭典「X Games」ロサンゼルス大会で銅メダリストに輝いたスミス選手は、最高レベルの技を完璧にこなすために必要な要素を聞き出すには最適な人物でした。スミス選手は、BMX の選手なら誰もができなければならない動きについて指導。ビンクリー氏はその助言をもとに、ジミーくんに最適な義手を設計したのです。

ビンクリー氏はこう説明します。

「私も自転車に乗ることはありますが、BMX のプロ選手がどんな動きをするかなんて全く分かりませんでした。スミス選手がハーフパイプで空中を舞うときは、すべてが空白状態になるそうです。つまり、空中で何が起こるか、どんなふうに着地するかは予測できないと言うのです。したがって、BMX のための義手は、かなり広範囲な動きを考慮し、あらゆる方向に対応させる必要がありました」

また、「BMX の選手と自転車をつなぐ基礎的な接点は、ハンドルバーです。BMX の技をこなすには、左右のバランスと上下の動きに加えてさまざまな動作をマスターしなければなりません」とスミス選手。

ビンクリー氏はプロトタイプの設計から始めるのが常ですが、今回の試作品は、プロ競技と同程度の厳しい要件をクリアする必要がありました。完成品は、スミス選手がハンドルバーをしっかりと握ったまま 360 度回転をこなせるものでなければなりません。

「義手はシンプルなハードウェアで自転車にがっちり固定し、ソケット (人間と義手の接触面となるパーツ) も安全かつ快適な着用感を追求しました。

しかも、プロのライダーのようにハンドルバーを操作するためには、正しい方向に動かなければなりません。ヒンジやピンを使った複雑な設計も考えましたが、結局はボールとソケットのジョイントを使ったとてもシンプルなものに落ち着きました。

最もシンプルなソリューションこそ、最も信頼性が高く、最も頑丈であることが多いんですよね」と語るビンクリー氏は、さらにこう続けます。

「最終的に必要最低限の構成部品にそぎ落とした結果、ほかの人のためにも簡単に調整してカスタマイズできる設計ができあがりました。

ソケットは人ぞれぞれに異なるので、この義手はジミーくんのためだけのものですが、設計自体は、世界中の多くの人々に役立つ可能性があります。私にとっては、それこそが大きなモチベーションなのです」

ビンクリー氏と e-Nable のボランティア仲間は現在、すべての人が恩恵を得られるように、3D プリンター製義肢のオープン・ライブラリーに取り組んでいます。e-Nable は、こうしたプロジェクトに興味をもつ人たちが集まり、この 3 年で会員が 8,000 人にまで増えました。

ビンクリー氏は、3D の義肢が必要な人やアイデアを求めている人には、enablingthefuture.org で 3D の設計データを探すように勧めています。自分に合う義手は人それぞれ異なるため、データを編集する方法さえ学べば、誰でも既存のデザインをカスタマイズできます。

スミス選手は、ジミーくんの義手の開発支援を通して、BMX とメーカー・ムーブメントとの間に多くの共通点を発見したとして、こんなことを語っています。

「僕がこんなに長く BMX を続けてきたのは、自分が自分でいられるからです。施行錯誤を重ね、とにかくがんばるしかありません。どうしたら落ちるのか。倒れ方を知ることにこそ大きな意義があります。それを知らないのは、人生の中で最も怖いことなのです」

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