仮想現実

100 歳の元パイロット、仮想世界を飛行

ライル・ベッカー氏が 100 歳にして初めての仮想現実 (VR) を体験。テクノロジーは、高齢者の仮想世界の探検にどのように役立つのでしょうか。

テクノロジーは 100 年間で大きく変化します。それはライル・ベッカー氏自身がよく知っています。

ウッドロウ・ウィルソンがアメリカ大統領だった 1917 年は第一次世界大戦の真最中で、照明のトグルスイッチが発明されたばかりでした。元航空管制官であり元陸軍航空隊パイロットでもある 100 歳 のベッカー氏はこの年に生まれました。ベッカー氏は、文字どおり大草原の小さな家で育ちました。進歩的な考え方を持っていたベッカー氏の父親は電気を引きこむ方法を考え出し、12 歳のベッカー氏に電球を見せてくれました。

ベッカー氏はこれまで、人類の月面着陸、テレビの誕生、パーソナル・コンピューター、インターネットの始まりをリアルタイムに目撃してきた人物です。しかし、オレゴン州にあるインテルの VR 研究室でゴーグルをかけるまで、デジタル世界のようなものは全く経験したことがありませんでした。

おそらく VR を体験した初めての 100 歳でしょう。

感動したベッカー氏は、「新しいテクノロジーを見るのは、本当に面白かったです」と語っています。

ベッカー氏の VR 体験はどのようにして実現したのでしょうか。それは、かつてインテルの社員だったベッカー氏の娘、パティー・バイス氏が、友人であるインテル VR マーケティング・アナリストのマイハン・イーステップに、ベッカー氏が VR に興味を持っていると伝えたことに始まります。その後、さまざまなことがつながって、イーステップは VR プログラム・マネージャーのアイーシャ・ボーエンとともに試験的な体験環境を準備することになりました。

「皆さんが父のために、非常に大きな労力を割いて VR 体験の機会を作ってくださいました」とバイス氏。

知的で知識欲も旺盛なベッカー氏は、VR 体験の被験者に最適だと思われました。

ベッカー氏の古くからの友人で、かつてインテルに 30 年間勤務していた未来派のスティーブ・ブラウン氏は、「そもそもライルは人生に対して好奇心旺盛なのです。人間だけでなく、人生のあらゆることに関心のある、極めて多才で博識な人です」と説明します。

新しい世界で再び飛行した 100歳のパイロット

ベッカー氏が椅子に腰かけ、HTC Vive VR ゴーグルを装着したとき、研究室にいた人たちは、よく見えるだろうか、圧倒されるだろうか、目が回るだろうかなど、その反応をだれも予測できなかったとブラウン氏は振り返ります。

しかし、第二次世界大戦中に、カーチス C-46 コマンド輸送機を操縦していた 100 歳のパイロットに、心配は無用でした。

Aerofly FS 2 VR フライト・シミュレーターの世界に入り込んだベッカー氏は、専門家らしく単発機を操縦。それは、コックピットにいたころに匹敵する体験でした。

元フライト・インストラクターで商用パイロットでもあったベッカー氏は、「まるで本物です。本当に空を飛んでいるように感じました。計器盤が分かりやすくて良かったです」と感想を述べています。

緑の幕の前で微笑むライル・ベッカー氏
常にテクノロジーに関心を持っていた元航空管制官のライル・ベッカー氏。

この体験では、海、陸、空など、あらゆる地形を仮想空間として、網羅していました。

海中深くを探検したベッカー氏は、魚、ウニ、その他の海洋生物が周りの至るところで泳いでいる驚異的な水中の世界を体験しました。この theBlu: Encounter と呼ばれる海中 VR 体験について、ベッカー氏はこう語っています。

「水槽の外側にいて中を見ているというよりも、自分が完全に水の中に入り込んでいるように感じました。クラゲが身体の中に入り込んでくるように感じたときもあります。危うく食べてしまうところでした」

陸については、Google Earth VR と呼ばれる体験を通じて、イタリアのフィレンツェとワイオミング州のデビルスタワー国立公園を探検しました。

仮想現実の有益な活用

ブラウン氏がベッカー氏に出会ったのは 20 年前、ベッカー氏が「元気な」 80 歳だったときです。ブラウン氏には、この友人がすぐに仮想テクノロジーを好きになるであろうことが分かっていました。VR は、活動的な高齢者だけでなく、身体的な活動に制約のある人々の生活も改善できるだろうとベッカー氏は考えています。

「バケツリスト (死ぬまでにやっておきたいことのリスト) にはあっても、実際に訪れる機会がなさそうな場所を訪問できます」とベッカー氏。

また、VR によって、現在のソーシャルメディアでは真似のできない方法で、高齢者が友人や家族と絶えず連絡を取れるようになるでしょう。

仮想現実の海を探検する 100 歳の男性
クラゲなどの海洋生物でいっぱいの仮想の海を探検するベッカー氏。

「VR を使って家族に訪問してもらえる、つまり、おそらく物理的には好きなだけ行き来できない人たちに会いに行けるようになることで、大切な人たちと同じ物理空間を共有しているかのような体験ができます」と語るベッカー氏は、72 年前に結婚し、6 人の子どもがいます。

もちろん、すべての高齢者がゴーグルをかけてイタリアのトスカーナ州を訪問したり家族と話したりするわけではないでしょう。しかし、ベッカー氏のようにテクノロジーに興味があり、つながりを維持している人は、VR に飛びつくだろうとブラウン氏は確信しています。

ベッカー氏には、VR で待ち望んでいる体験が 1 つあります。それは、ニューオーリンズのバーボン・ストリートで演奏するディキシーランド・ジャズ・バンドです。しかも、世界的に有名なニューオーリンズの謝肉祭マルディグラの歌と踊りを一緒に見たいのだと言います。

「テクノロジーの進化には驚かされます。100 歳の私には、待っている時間はあまりありません。だから急ぐのです」とベッカー氏は語っています。

 

ロブ・ケルトン氏に執筆のご協力をいただきました。

 

 

 

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