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e スポーツをテレビで楽しむ?

Jason Johnson Freelance writer and editor

e スポーツ (対戦型ゲームを使った競技) をテレビで放映するのが最近の流行となっています。しかし、インターネットから生まれた e スポーツは、もっと早くからライブ・ストリーミングを通じて人気を博していました。

初めてビデオゲームの試合が開催されてから 40 年。5 月 27 日に e スポーツ大会の ELeague で、ケーブルテレビの米 TBS が e スポーツをテレビ放映しました。

e スポーツへの関心が世界中で急上昇する一方で、Twitch や YouTube でのライブ・ストリーミングを通して数百万人のファンを興奮の渦に巻き込んできたビデオゲーム。その夢の対決が、果たしてケーブルテレビでも成功するかどうかはまだ誰にも分かりません。

「ELeague がどのように評価されるのか、誰もが固唾をのんで見守っています」と語るのは、GMR Marketing 社のグローバルスポーツ・エンターテインメント部門シニア・バイス・プレジデントのマット・ヒル氏です。

初の TwitchCon イベントにて

ゲーム大会の歴史は、ひっそりと始まりました。一説によると、1972 年 10 月、スタンフォード大学の学生たちが初めての e スポーツ大会となった Intergalactic Spacewar Olympics に参加し、グランプリ優勝者たちは「ローリング・ストーン誌」の年間購読権を獲得したそうです。

今日では、世界最長の開催記録を持つ e スポーツ大会 Intel Extreme Masters (IEM) が、総額 100 万ドル (約 1 億 400 万円) もの賞金を掲げてゲーマーたちを惹き付けています。2015 年、ポーランドのカトヴィッツェで開催されたイベントは 10 万人もの集客を記録。Twitch で生中継を視聴した人の数は IEM 史上最多の 100 万人に上りました。

つまり、e スポーツがテレビ放映される前から、すでに非常に多くの視聴者がいたのです。視聴者の中には、熱狂的なファンだけでなく、たまに視聴する人たちも含まれていました。調査会社の Newzoo 社によれば、視聴者数は 2016 年の 2 億 5,600 万人から、2019 年には 3 億 4,500 万人以上に増加すると予想されています。

「このように成長著しい e スポーツ界において、TBS が果たした役割は非常に大きいでしょう」とヒル氏。特に、新しい観客たちをプロの e スポーツに惹き付けた点が功績として挙げられます。

ストリーミング放送からライブ放送への移行は、新興スポーツにとってみればユニークなチャレンジであると同時に、とてつもないチャンスでもあります。

ヒル氏はこう説明します。

「120 万ドル (約 1億 2,500 万円) という多額の賞金に加えて、ELeague の最初の 2 つのシーズンだけでも、さらに多くのチャンスが待っています。夏の間ずっと放送されるというだけでなく、人気のシューティング・ゲーム『カウンターストライク:グローバル・オフェンシブ』が登場するからです。世間の認知度という観点から見た場合、テレビ放映される最大のメリットは、e スポーツ=地下産業という見方をされなくなることでしょう」

Eleague で「カウンターストライク:グローバル・オフェンシブ」をプレイするプロチームのOpTic Gaming (ロサンゼルス、CES)

コンピューター・ゲームに特化したライブ・ストリーミング配信プラットフォームの Twitch は、1 日 850 万人という膨大なアクティブユーザーを惹き込む力を持ち、その視聴数のかなりのシェアを占めているのが e スポーツです。こうした数値の裏付けにより、デジタルスポーツはテレビで放映する・しないにかかわらず、すでに「主流」の域に達しているのではないかという意見も出てきています。

「既存のスポーツの大半がこれからのデジタル化に向けた道を模索しているときに、デジタル領域から生まれた eスポーツは、これからテレビの世界を目指すという、真逆の道を歩んでいるわけです」とヒル氏。

しかし、国内舞台での成功は、まだ不安を抱えている大手広告主の参入を呼びかける上で、良い説得材料になりそうです。有力なブランドを味方に付けられれば、e スポーツを国民の娯楽の 1 つに位置付けるための論理的なステップとなりえるでしょう。

これらの潜在的な広告主にとって、ELeague は単なる配信の役割を超えています。それは市場を探るための最終テストの場とも言えるのです。

テレビには真似のできない Twitch の強

ELeague では、10 週間にわたるトーナメントを毎週金曜日に放送し、様子を見ています。このトーナメントには 24 チームが参加。どのチームもみな過去 1 年間に「カウンターストライク:グローバル・オフェンシブ」で優勝経験があり、FPSゲーム (ファースト・パーソン・シューティングの略で一人称視点のゲームのこと) のシューターとして人気を得ています。

写真提供:キリル・バシキロフ氏

大きな期待が寄せられているだけに、トーナメントは看板番組が並ぶ金曜夜のプライムタイムに放送されます。しかし一方で、e スポーツのコミュニティーでは、そこまで注目を浴びることについて抵抗があるのも事実です。なぜなら、インターネットを主要な舞台としているスポーツにとって、テレビが適切なメディアであるかどうかという疑問が残るからです。

過去に、ビデオゲームを中心としたテレビ・ネットワーク、Ginx TV のチャンネル・マネージャーを務めていたギャレス・マーティン氏はこう語ります。

「テレビは非常に構造化されたメディアです。広告主、適切なコメンテーター、タイミング。一貫性と反復可能な構造に依存しています」

例えば、クォーターやハーフタイムが設けられているバスケットボールのようなスポーツの場合は、決められた時間で動いているため、テレビのスタイルに馴染みやすいのだと言います。これに対し、e スポーツは、永遠に続くかと思うほど試合が長引いたり、逆に一瞬のうちに勝負がついてしまったりすることもあります。

敵の頭部を射撃するヘッドショット、相手が立ち上がれないほどたたきのめすノックアウト、敵のチーム全体を倒すペンタキルといった手法が頻出する e スポーツにとっては、Twitch がベストなメディアだと考える人もいます。

「Twitchは、e スポーツへの情熱から生まれたと言っても過言ではありません。e スポーツを Twitch で観戦し、体験した人のほとんどが、毎日のようにまた戻ってきます」と語るのは、Twitch の e スポーツ部門バイス・プレジデント、アンディー・スワンソン氏です。

Twitch はより競争力のあるゲーム体験ができるようにカスタマイズできることもあり、e スポーツとともに成長してきたプラットフォームです。

写真提供:ジョー・ブレーディー氏

例えば、Twitch はファンであろうとプロであろうと誰もがエントリーでき、敷居が非常に低いのが特徴です。どのようなスキルレベルの人でも、世界中のどこからでも簡単に、すぐに、自分たちの試合や実戦練習の様子を配信できます。

「ライブ体験にフォーカスしている点、またファンが交流しあえる機会を提供しているという点も、Twitch をパーフェクトなプラットフォームにしている要素の 1 つです」とスワンソン氏。

Facebook や Instagram と同様、Twitch のインターフェイスも自然にコミュニティーが促進できるよう設計されています。ファンは、自分の好きな選手やチームのチャンネルを購読することにより、いつでも最新情報にアクセスできます。チャットウィンドウを使って、選手、ファン、ライバル陣営とやり取りすることも可能です。

インターネット用にカスタマイズされたこれらの機能は一体感を高めるだけでなく、e スポーツを楽しむ上で重要なドラマ性も重視しています。ファンのリアクションが一気に盛り上がったりするようなときには、テレビでは真似のできないリアルタイムの反響を捉えることができるのです。

テレビの反

いくらかの欠点があるとしても、テレビ放送の中にも e スポーツの居場所はまだあるはずです。

従来型のテレビでは、インターネットの即時性や適応性には到底かないませんが、最近では人々のテレビの見方もだいぶインターネット寄りに変化し始めています。

テキサス州オースティンのテキサス大学のマシュー・イースティン教授の研究によれば、昨今のスポーツファンは、テレビのスポーツ番組をもっと楽しむための情報収集に、タブレットや携帯電話のようなセカンドデバイスを活用していると言います。

「人々は、単なるファンとして家のソファから『がんばれー!』と応援するだけにとどまらず、チームのコミュニティーに積極的に参画し、貢献するようになってきています」

写真提供:パトリック・ストラック氏

スポーツは受け身で観戦するのではなく、マルチ・プラットフォーム対応のアプリを活用するべきだというわけです。例えば、人気が高まっている「At Bat」は、Web上でメジャー・リーグ・ベースボール (MLB) の試合中継を見られるアプリで、ボックススコア、ピッチデータ、選手統計データといったさまざまな情報をファンに提供します。

セカンドデバイスは、e スポーツの観客が必要とする接続性に欠かせません。「At Bat」に対し、Turner Brodcasting Network は、世界中のスポーツニュースを網羅ししたアプリ「Bleacher Report’s Team Stream」を通じて ELeague に同様の機能を提供しており、セカンドデバイスで楽しめるもう 1 つのアプリとして利用できます。

結局、e スポーツが主流となる上でテレビは必要ないのかも知れません。ELeague の成功を心待ちにしているネットワークや広告主と同様、今後の動向については様子を見ていくほかなさそうです。

 

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