テクノロジー・イノベーション

イヤフォンも、充電も、ワイヤレスへ

Dean Evans Technology Writer Twitter

スマートフォンの登場によって、従来からあるテクノロジーの数々が姿を消していきました。ディクタフォン (会話の録音と再生ができる機械)、計算機、カムコーダー (撮影用のビデオカメラと記録用の VTR が一体化した映像記録装置)、MP3 プレーヤーなどはすべて、ソフトウェア・オプションとして提供されるか、ダウンロード可能なアプリに組み込まれるようになりました。また、Apple 社は、先日の iPhone 7 の発売を機に、今後はイヤフォンジャックを廃止するとして話題を集めました。

Bluetooth や USB-C ポート、Lightning ポートがやがて従来の 3.5 mm オーディオコネクターに取って代わるとしたら、残るは電源ケーブルただ 1 つです。

ここで、「ちょっと待ってください。ワイヤレス充電はすでに確立された技術なのでは?」と思うかもしれません。確かにそのとおりです。しかし一方で、そうではないことも事実です。今からご説明しましょう。

2 種類のワイヤレス充電方式

ワイヤレス充電の方式には 2 種類あります。まず 1 つ目は、おなじみの充電式電動歯ブラシで使われている「電磁誘導充電」と呼ばれる技術です。この技術を使うと、充電台と充電対象の機器がコネクターなどの金属接点で接続していなくても電力を伝送できます。

ロンドンにあるスターバックスの一部では、Powermat 社のワイヤレス充電技術を使用 (Powermat Ring が別途必要)。写真提供:Starbucks 社
ロンドンにあるスターバックスの一部では、Powermat 社のワイヤレス充電技術を使用 (Powermat Ring が別途必要)。写真提供:Starbucks 社

この方式では、例えば上の写真のように、スターバックスなどのコーヒーショップに入ってデバイスをテーブルの上に置くだけで、充電が始まります。また、自宅に充電パッドが 1 つあれば、スマートフォン、スマートウォッチ、タブレットのほか、ノートブック PC まで充電できてしまいます。実際、無線充電技術を開発する WiTricity 社は、コンピューター関連総合見本市の Computex TAIPEI 2016 で、置くだけでワイヤレス充電できるノートブック PC 向けの充電台を発表しています。

乱立するワイヤレス充電規格

Samsung 社の Galaxy ハンドセットや Microsoft 社の Lumia シリーズの一部など、いくつかのスマートフォンにはすでに電磁誘導充電技術が組み込まれています。既存の携帯電話でも、ワイヤレス充電ケースに入れれば機能を追加できます。

しかし、ワイヤレス・パワー・コンソーシアム (WPC) が策定したワイヤレス充電の国際標準規格 Qi (チー)、Power Matters Alliance (PMA:ワイヤレス充電規格推進団体) が策定した PMA、Alliance for Wireless Power (A4WP:ワイヤレス充電規格推進団体) が主導する Rezence など、競合する規格の存在が、ワイヤレス充電技術のさらなる普及に「待った」をかけています。おそらく、A4WP と PMA が合併して誕生した AirFuel Alliance が、事態を改善してくれることでしょう。

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TechNovator 社は、ワイヤレスとは言いがたい充電台を進化させ、ワイヤレス給電技術をさらに広めたい考え。

イヤフォンジャックを最初に廃止したのが Apple 社ではなかったとしても、技術が転換点を迎えるには、Apple 社によるワイヤレスの採用は避けては通れなかったでしょう。とはいえ、こうした電磁誘導充電では、単に電源コードが充電台に置き替わっただけで、さほど大々的な進歩ではないようにも思えます。しかも、新しい USB-C 接続では、有線での充電時間が改善されています。

真のワイヤレス電力とは

2 種類のワイヤレス充電技術のうち、2 つ目の方式ははるかに画期的です。例えば、TechNovator 社が開発を手がけるのは、離れた場所にあるデバイスを充電できる技術です。同社は国際コンシューマー・エレクトロニクス・ショー IFA 2016 で、タワー型の充電ステーション「XE」と iPhone 6 のワイヤレス充電レシーバーケースを使ったデモを実施。これは、電磁波を利用して電力を伝送する遠距離向けソリューションです。その伝送範囲は 5 m にも及びます。さらに TechNovator 社では、充電ステーションに加え、フラットアンテナも発表。これを壁や天井に取り付ければ、伝送範囲を拡大することも可能です。

しかし、まだプロトタイプの段階であるため、有線式充電器ほどの速度が出ません。親機から離れるほど伝送速度が遅くなるだけでなく、XE が使用する電磁波は壁を通り抜けることができないという問題もあります。それでも、従来よりはるかに便利であることは確かです。

TechNovator 社の ワイヤレス充電技術では、基地局ユニットから電磁波を使ってワイヤレス電力を伝送。
TechNovator 社の ワイヤレス充電技術では、基地局ユニットから電磁波を使ってワイヤレス電力を伝送。

一方、TechNovator 社のライバルである Energous 社の WattUp 技術では、携帯電話や Wi-Fi の電波を低電力エネルギーパケットに変換する特別なアンテナを利用しています。このパケットを携帯電話で受信すると、充電用の直流電力に変換できる仕組みです。

このように新しい急速充電機能が登場し始めているとはいえ、規格をめぐって各社が勢力争いを繰り広げている電磁誘導充電の市場を見る限り、今すぐ電源コードが不要になるわけではなさそうです。

メイン画像提供:Shutterstock/Mihai Simonia

 

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