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加齢なんか怖くない!外骨格装置で飛躍する日本

画期的なウェアラブル・チェア「Archelis (アルケリス)」は、高齢にもかかわらず、長時間立ちっぱなしの過酷な肉体労働を強いられる人たちの救世主になるかもしれません。

デスクに 1 日中座りっぱなしの仕事は、「喫煙と同じくらい体に悪い」と言われます。一方、長時間立ちっぱなしで座ることすらできない仕事では、体にどれほどの負担がかかるでしょうか? これは、医師が抱える大きな問題でもあります。医師を対象とした調査では、外科医の 82% が手術中に痛みを感じ、43% が痛みや疲労を和らげるために手術中に休憩を余儀なくされています。

世界中で高齢化が進む中、手術中の痛みに医師の注意がそらされることが増えれば、これまで以上に大きな問題となる恐れがあります。「Archelis (アルケリス)」などのウェアラブル・テクノロジーが開発されたのもそのためです。

「Archelis (アルケリス)」を使用する日本の医師 (写真提供:株式会社ニットー)

2020 年までに 340 億ドル (約 3 兆 5,000 億円) 規模への成長が見込まれるウェアラブル・テクノロジー業界において、横浜にある金型製作会社の株式会社ニットー、日本高分子技研株式会社、西村拓紀デザイン事務所、千葉大学フロンティア医工学センターが共同開発した「Archelis」は、非常に有望な製品として注目されています。

ニットーによると、「Archelis」は、足とでん部をストラップで固定し、太ももの上部、すね、足首などの主な力点をサポートすることで、実際に座ることなく体重を預けられる仕組みになっています。ユーザーは、立ったままひざを少し曲げることで、高い丸椅子に座っているような感覚が得られます。

柔軟で軽量なカーボンフレームと、調節可能なフックおよびループストラップを採用しているため、装置を付けたままでも普通に歩くことができます。また、不快感もなく、歩行の動きを全く妨げないため、何度も着脱する必要がありません。

高齢労働者をサポート

医療スタッフの補助装置としての役割が期待される「Archelis」ですが、先進国の高齢労働者にとってはそれ以上のサポートになるかもしれません。株式会社ニットー代表取締役の藤澤 秀行氏は、こうした補助装置がさまざまな職業にもたらす効果に言及。特に小売業界での普及に期待しています。

「Archelis を装着すれば、いつでもどこでも座れます。1 分に満たないような短時間でも体を休めることができるので、疲労が軽減され、生産性が高まります。医師、看護師、農家、美容師、調理師といった方々の労働支援に効果を発揮するでしょう」と藤澤氏。

その効果は数値からも容易に予測できます。日本は世界で最も高齢者人口が多い国です。65 歳以上の割合は 25% を超えており、2035 年までに全人口の 3 分の 1 を超えるとされています。1965 年には、1 人の退職者を 9 人の就労者が支えていましたが、現在では 1 人の退職者を支える就労者が 3 人未満になっています。2050 年には、1 人の退職者を 1 人の就労者が支えることになると予想されます。

国連も、2050 年までに世界人口の 21% が 60 歳を超えるとしており、そのほとんどが先進国に集中すると見ています。

最終的に、「Archelis」などのテクノロジーは、作業そのものの肉体的負担を軽減したい人だけではなく、加齢や健康状態の悪化によってそうした補助装置を必要とする労働者が主なユーザーになると考えられます。

製造業や軍隊で活用される外骨格装置

「Archelis」の競合製品には、スイスの Noonee 社が開発した「Chairless Chair (チェアレスチェア)」があります。チタン製の補強材と油圧機構、ロックシステムを使用しており、椅子がなくても座ることができる装置です。

医療スタッフをターゲットとする「Archelis」とは異なるのは、製造業に従事する人たちを対象としている点です。現在は、筋骨格系の疲労軽減やケガによる長期欠勤を防ぐために、BMW 社や Audi 社などの自動車メーカーがテストを行っています。

昨年には、株式会社イノフィスがウェアラブル・バック・ハーネスを発表しています。これは、油圧を使った人工筋肉により 30 kg の補助力を発揮する装置です。「マッスルスーツ」と呼ばれるこの製品は、高齢者向け介護施設での使用を想定しています。介護施設のスタッフは、入居者を抱え上げる機会が頻繁にあるからです。

こうした外骨格装置は軍隊でも応用されています。米国やオーストラリアなどでは、重量のある武器や補給品を運搬する兵士の負担を軽減するために外骨格装置の導入を進めています。

一方、欧州連合 (EU) は、ユーザーが持ち上げる重量の 90% を補助してくれる強化外骨格「Robo-Mate (ロボメイト)」に出資。研究所ではすでにテスト段階に入っており、EU はこの「Robo-Mate」が物流と自動車産業に革命をもたらすことを期待しています。

外骨格装置の今後

この開発レースに勝利するのはどのグループでしょうか? 「Archelis」は、他に先駆けて 2016 年末の発売を目指しています。

世界中の人々が、外骨格テクノロジーが大量生産される日を心待ちにしており、実際にそうした方向に向かっているのは確かです。そう遠くない未来に、仕事や遊びの場面で、加齢による肉体の限界点を引き上げるウェアラブル・テクノロジーが普及することになるでしょう。

 

※文中に記載の金額は、日本語原稿執筆時の為替レートで計算しています。

 

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