エンターテインメント

テクノロジーという魔法で、パブリックアートを元気に

Deb Miller Landau iQ Managing Editor

毎年オーストラリアで開催される世界最大級の光と音楽とアイデアの祭典「ビビッド・シドニー」。クリエイティブ・ディレクターのイグナティウス・ジョーンズ氏は、室内で鑑賞するのが当たり前だったアートを、街なかでも楽しめるようにするのが自分の役割だと語ります。

今年は、230 万人もの人々がビビッド・シドニーを訪れ、街に繰り出したところを見ると、触れたり聞いたり体験したりできるアートの人気ぶりがうかがえます。

23 日間にわたる祭典は、インタラクティブに楽しめるものばかりです。このイベントのマエストロとも称されるクリエイティブ・ディレクターのイグナティウス・ジョーンズ氏は、これこそがアートのあるべき姿だと確信しています。

「私たちのやっているのは、言ってみれば室内アートを外に持ち出して街なかでも鑑賞できるようにすることです」とジョーンズ氏。2008 年の初回からビビッド・シドニーに関わっている彼は、 従来のアート作品は静まり返った美術館で見えない柵 (つまりセキュリティー) に守られていて、手で触れられないことが多かったと指摘。

「そんなのバカバカしいことです。アートを街なかに出して楽しみましょうよ。ビビッド・シドニーのアートは実際、手に触れられるようになっています。触れたり、感じたり、匂いをかいだり、なんなら舐めてもいいんです。もっとも、舐めるのはお勧めしませんがね」と笑います。

ビビッド・シドニーはこれまで、アートに目がない人々を南半球の冬のオーストラリアに呼び込んできました。夏に人気が集中するシドニーでは、観光客がどっと減る時期です。

ジョーンズ氏によれば、ただ冬のオーストラリアに観光客を呼び込むだけではなく、地元の人々を屋外に引き出す効果もあるのだと言います。 ビビッド・シドニーは、小規模店のオーナーも含めたみんながオフシーズンを楽しめる催しなのです。

「パブやレストランの経営者たちが私に言うんですよ。大晦日が 23 日間続くみたいだ、酔っぱらいはいないけどねって」 (ジョーンズ氏)

地元の人々は、春が来るまでじっと身を潜めるように過ごすのが普通でしたが、この祭典のおかげで、冬もそう悪くないものだと考えを改め、外に出て、これまでにないやり方でシドニーを楽しめるようになっています。

この祭典の成功の鍵は、アート、音楽、光、テクノロジーがぶつかり合って生まれるジャンルを超えたイノベーションにあります。

「それを可能にするのがデジタル・テクノロジーです」とジョーンズ氏。 彼いわく、アーティストは、魔法のようなものを使ってアート作品を作る魔法使いみたいな存在だと言います。実際、新たに登場するテクノロジーも、いくらか魔法じみています。

「 2 人の魔法使いが協力して魔法を組み合わせれば、どちらか一方が作るよりはるかに強力な魔法が作れるでしょう」

ジョーンズ氏の言う“2 人”とは、アーティストとテクノロジストを意味し、テクノロジストとは、長年ビビッド・シドニーのテクノロジー・パートナーを務めているインテルを指しています。アーティストは、もともと一般の人とは異なる視点でものを考える人たちであり、テクノロジストは、過去に学んだものごとのパターンに従って思考します

「このパートナーシップは、ビビッド・シドニーの成功に不可欠です。枠をはみ出そうとするアートの力と、枠からはみ出さないようにするテクノロジーの力が出会うとき、まったく違うものが生まれます。それこそ魔法のようなものがね」とジョーンズ氏。

ビビッド・シドニーは、夜、暗くなってから開催されます。これも、ある種ミステリアスな側面を生みだします。キャンバスが変わるのです。 この良い例が、ビビッド・シドニーを代表するアート作品 Lighting of the Sails (ライティング・オブ・ザ・セイルズ) です。シドニー・オペラ・ハウスの白い帆が、素晴らしい映像を投影するキャンバスになります。

2016年の今年は、その帆にオーストラリア先住民アートのアニメーションが映し出されました。 異なる部族をルーツとする 6 人のアーティストが、オーストラリア先住民のスピリチュアルで文化的な歴史をもとにコンテンポラリーな「ソングライン」 (アボリジニの生活の中に刻まれ、受け継がれてきた目には見えない道) を表現。彼らのヒストリーを織り混ぜたビジュアル・タペストリーを作り上げたのです。

帆に映像をスムーズに投影したのは、インテル® Core™ i7 プロセッサーを使用したプロジェクターです。また、別のアート作品 Eyes on the Harbour (アイズ・オン・ザ・ハーバー) では、インテル® RealSense™ テクノロジーを駆使して来場者の顔を 3D で撮影し、それを高さ 25 メートルのウォータースクリーンに投影しました。

アートは身近になればなるほど人々に受け入れられやすくなると考えるジョーンズ氏は、「テクノロジーの力でインスタレーション (展示空間を含めて作品をみなす手法) をインタラクティブなものにすることで、人々はただ見ているだけではなく、アート作品の一部になり、アートを体験できるようになります」と説明。

たとえば、シドニー博物館のドーム状のインスタレーション、Electric Jellyfish (エレクトリック・クラゲ) では、来場者がドーム内の光のリングを動かして自分だけの光と音のショーをコントロールし、さまざまな感覚を刺激する体験ができます。

「過去 6 年間のビビッド・シドニーで素晴らしかったことの 1 つは、みんながアーティストになるのを見られたことです。 インスタレーションを見て、テクノロジーで何ができるかを知り、自分でやってみようと考えるのです。これからはアートとテクノロジーの融合の時代です。テクノロジー抜きにアートは語れません。 アートのないテクノロジーは、魂を抜かれたようなものです」とジョーンズ氏は語っています。

 

編集者より: ビビッド・シドニーは、ニューサウスウェールズ州とデスティネーション NSW が所有、管理、プロデュースしています。この驚きの新体験シリーズでは、コンピューター・テクノロジーの活用による素晴らしい体験をご紹介していきます。

 

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