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VR でゲームセンターに復活の兆し

Jess Joho Author, Kill Screen

ゲームセンターの低迷は今に始まったことではありません。多くの国々で、すでに数十年も前から廃れた状態にありました。しかし、バーチャル・リアリティー (VR) が登場してきたことで、世界中のゲームセンターの復活が期待されており、日本がこうしたトレンドをリードしつつあります。日本のゲームセンター経営者は、いわゆる「ゲーマー」ではない一般大衆にも利用しやすいアプローチを採用し、VR ゲームセンターの間口を広げているのです。

海外では、「ゲームセンター」といえば、昔ながらの格闘ゲームやレースゲームの筐体が並び、ゲーマーが腕試しに集まる場所、というイメージがあります。

一方、ゲームセンターが廃れたことのない日本では、これまで積み重ねてきたノウハウによって、「ゲーマー」に限定せず、幅広い客層を集めることに成功しています。

ダイバーシティ東京プラザ「VR ZONE Project i Can」。写真提供: 株式会社バンダイナムコエンターテインメント
ダイバーシティ東京プラザ「VR ZONE Project i Can」。写真提供: 株式会社バンダイナムコエンターテインメント

JapaneseArcade.com のジム・ブルーム氏が、「日本のゲームセンターは、従来のゲームコンテンツを多数設置するだけでなく、ゲーマーから非ゲーマーまで、それこそファミリー層や若年層までをすべて取り込めるように戦略的に展開しています」と語るように、人気のディズニー・キャラクターや任天堂のおもちゃを獲得できるクレーンゲームを導入する一方で、パチンコ機などのギャンブル・シミュレーターや、大人がお酒を楽しめるバーまで設置されています。

VR の登場で世界中のゲームセンターが復活の兆しを見せる中、幅広い層を取り込もうという日本の特異なアプローチがいっそう際立っています。日本以外の国では、ゲームセンターはいまだにゲーマーのための場所だからです。

例えば、米国はどうでしょうか。ワシントン州の VRcade 社が自社テクノロジーを投入するのは、大人向けのゲームとエンターテインメントを楽しめる「Dave & Buster’s」という米国型ゲームセンターです。ドバイでは、2016 年夏に、1,393 平方メートルにも及ぶ広大な施設「Hub Zero」がオープンしましたが、「Time Zombies」や「Interstellar Marine’s Bullseye」などのサバイバル・ホラー・シューティング・ゲームをフィーチャーしたバーチャルアリーナを備えるこの施設もまた、ゲーマーのみをターゲットとしています。

ダイバーシティ東京プラザ「VR ZONE Project i Can」。写真提供: 株式会社バンダイナムコエンターテインメント
ダイバーシティ東京プラザ「VR ZONE Project i Can」。写真提供: 株式会社バンダイナムコエンターテインメント
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ダイバーシティ東京プラザ「VR ZONE Project i Can」。写真提供: 株式会社バンダイナムコエンターテインメント

ほかの国々が、幅広い客層の獲得が見込める VR ゲームセンターの重要性を認識し始めるなかで、日本のゲームセンターはいち早く VR シーンへの大々的な進出を果たしています。

今年の 4 月には、株式会社バンダイナムコエンターテインメントが、人気スポットであるお台場ダイバーシティ東京プラザ 3 階に「VR Zone Project i Can」という施設をオープンしました。お台場ダイバーシティ東京プラザは、普段はゲームをしない顧客層がぶらりと立ち寄るショッピングセンターであり、まさに戦略的な立地です。

「VR ZONE Project i Can のコンテンツは、いわゆるゲームではなく、新しいエンターテインメントの形だと考えています」と語る VR ZONE プロジェクト責任者の田宮幸春氏は、VR には、従来のゲーマー向けゲームセンターより多くの一般大衆を集客できる大きな可能性があると見ています。

実際、VR ZONE Project i Can のこれまでの来場者は、VR を初めて体験するファミリーや、友人同士、カップルが大半を占めています。同施設が選択したアプローチは、確かな効果をもたらしているようです。

同じく 4 月に、池袋にあるサンシャイン 60 の最上階も、VR ゲームセンター「SKY CIRCUS」として生まれ変わりました。来場者は、キャノン砲から撃ち出されてみたり、バーチャル・ジェットコースターで街の上空を飛び回ることができます。

家庭外インタラクティブ・エンターテインメントを専門とするケビン・ウィリアムズ氏は、SKY CIRCUS について、「多様な客層を狙った VR テーマ・アトラクションを集めた展望台であり、日本のゲームセンターならではのアプローチです」と評価しています。

同様に田宮氏も、バンダイナムコエンターテインメントは VR を単なるゲームの延長ではなく、ゲームをやったことがないファミリーや友人同士が VR のスリルを気軽に楽しめるようなハイテク・テーマパークとして売り出していく考えであると語っています。

確かに、VR の説明でよく使われるプレゼンス (実在感)」という言葉は、気軽に利用できる物理的なエンターテインメント体験を連想させます。従来のゲームセンターで見られたゲーマーの勝負へのこだわりとは、かけ離れたイメージでしょう。

遊園地にあるジェットコースターと同じように、VR ZONE Project i Can でも、「体験中に気分が悪くなった場合はスタッフに申し出てください」という注意書きを目にすることができます。

VR ZONE Project i Can で人気を集めるアトラクション、「高所恐怖 SHOW」と「脱出病棟Ω」では、体験者から大きな悲鳴が頻繁に上がり、ほかのモール来場者をぎょっとさせています。

ダイバーシティ東京プラザ「VR ZONE Project i Can」内の「脱出病棟Ω (オメガ)」。写真提供: 株式会社バンダイナムコエンターテインメント
ダイバーシティ東京プラザ「VR ZONE Project i Can」内の「脱出病棟Ω (オメガ)」。写真提供: 株式会社バンダイナムコエンターテインメント

「VR ZONE Project i Can の大きな成功を受けて、私たちは事業の拡大を計画しています。ただし、単にゲームセンターに VR アクティビティーを導入するということは考えていません」と田宮氏。

もし、バンダイナムコエンターテインメントがこの方針を貫くなら、最終的に日本では、従来のゲームセンターで遊ぶか、ゲームをしない人たちにも利用しやすい「VR アクティビティー」に特化した全く別の施設で遊ぶか、どちらかを選べるようになるかもしれません。

その他の国内大手ゲームセンター運営会社は当記事へのコメントを控えましたが、IGDA (国際ゲーム開発者協会) 日本代表の小野憲史氏は、「VR が他の大手ゲームセンターを変革するのも時間の問題でしょう。セガ、カプコン、コナミも VR アーケード市場の調査と開発を行っていますが、結果を出すにはもう少し時間が必要です」とコメントしています。

ダイバーシティ東京プラザ「VR ZONE Project i Can」内の「脱出病棟Ω (オメガ)」。写真提供: 株式会社バンダイナムコエンターテインメント
ダイバーシティ東京プラザ「VR ZONE Project i Can」内の「脱出病棟Ω (オメガ)」。写真提供: 株式会社バンダイナムコエンターテインメント

海外の VR ゲームセンターが引き続きシューティング・ゲームのようなゲーマー向けコンテンツに力を入れる中、日本は再び、あらゆる人を取り込むことの重要性を世界に示すことになりそうです。

VR Zone Project i Can から響く悲鳴や歓声を聞いていると、VR が日本だけでなく世界中で全く新しいゲームスタイルを生み出していく可能性を感じます。

 

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