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描画ロボットはダ・ヴィンチになれるのか?

Kristin Houser Writer & Editor, LA Music Blog

写真を絵画にしたいというニーズに着目した Instapainting 社の創設者、クリス・チェン氏は、同社の顧客を奪おうとした Twitter ユーザーからヒントを得て、描画ロボットを製作。このロボットにはなんと Twitch (ゲーム実況サービス) の閲覧者がネット経由で描画できる機能があるというのです。

自分で名作を描くのが無理ならば・・・と、クリス・チェン氏は描画ロボットを製作しました。

彼が創設した Instapainting 社は、優れたアーティストと契約し、顧客が提出した写真をキャンバスに描いてもらい、絵画作品として提供するサービスを展開する会社です。チェン氏が描画ロボットの製作を思い立ったのは、ある Twitter ユーザーが Instapainting 社の顧客に、ロボットを使って「ご希望の画像を描画してあげましょう」と持ちかけた事件がきっかけです。同社は危うく顧客を奪われるところでした。

その後 3 週間の製作期間と 250 ドル (約 2 万 8 千円) の資金を投じて、最初の試作品が完成。チェン氏のロボットは、当初は人間の筆さばきを模倣するだけでしたが、そこから急速に進化を遂げ、ライブ配信を視聴している TwitchTV ユーザーの描画コマンドに応じて動作するようになりました。

「それまでは Twitch 配信が現実の世界とリンクすることなどあり得なかったと思います」と語るチェン氏は、

それなら自分がやってみようじゃないかと実行に移したわけです。

Twitch は、同じゲームに没頭する人とチャットしたり、通しプレイをストリーミングしたり、e スポーツのゲーム・トーナメントでプロ同士の激しいバトルを観戦したりする場として、長い間ゲーマーたちに支持されてきたソーシャルビデオ・プラットフォームです。Twitch が新しいプログラムシリーズを立ち上げた昨秋は、数百万人のアートファンが「The Joy of Painting」の 9 日間マラソン放送を視聴。このシリーズは、アフロヘアーがトレードマークの画家ボブ・ロス氏が、ゆったりとした語り口で司会を務めた 1980 年代のテレビ番組です。

bob ross

第 1 回に続く企画として、チェン氏は第 2 回となる Twitch Paints ライブストリーム・コラボレーションを開催。第 1 回のコラボレーションは、ユーザー投稿型のニュースサイト Hacker News のトップページを飾りましたが、Twitch の投稿者は、描く場所をロボットに指示するために、わざわざコマンドをプログラミングしなければなりませんでした。

そこで、6,000 人以上の Twitch 視聴者が参加した第 2 回のコラボレーションでは操作性を改善。X 軸と Y 軸の座標を入力するだけで描画ロボットを制御できるようにしたのです。完成した作品は eBay に出品。オークションの収益は Watsi (クラウドファンディングを駆使して世界中の人々に医療を提供する団体) に寄付する予定です。

The end result of the Twitch Paints stream was a bit of a mess because the event was 36 hours long and only one sheet of paper was used. By the end, the famous Mona Lisa smile was covered by three-day’s worth of paint.
Twitch Paints ストリームで完成した作品は混沌とした作品に仕上がっていました。36 時間という長い描画時間に加えて、紙を 1 枚しか使わなかったことが原因です。有名な「モナ・リザの微笑み」を描こうという試みでしたが、最後には、 3 日間動き続けた絵筆が残した線でキャンパスが覆いつくされてしまっていたのです。

描画ロボットの歴史

チェン氏が製作したロボットは、インターネットを介してクラウド上で操作できる点では前例がありませんでしたが、史上初の描画ロボットというわけではありません。

例えば、バーゼル・アカデミー・オブ・アート・アンド・デザインの美大生が作ったロボット、BNJMN が自分の署名付きの絵画を描けるようになったのは 2013 年でした。また、「Drawing Apparatus for Vivid Interactive Display (ビビッドでインタラクティブな画像表示のための描画ツール)」の頭文字をとった E-David (油絵が描けるロボット) は、2009 年には、コンスタンツ大学の研究者らによって視覚的に最適化されたアート作品が描けるようになっていました。しかし、描画ロボットをクラウド操作できるという新しいレベルに引き上げたのはチェン氏です。

Twitch Robot Painting 1

彼がクラウドベースで絵画制作しようと思いついたのは、ある Twitch ユーザーグループが科学的なプロジェクトでコラボレーションしていることを知ったのがきっかけでした。

そのプロジェクトとは、みんなで Linux をインストールする実況チャンネル「Twitch Installs Arch Linux」です。

Linux は、Apple OS X や Microsoft Windows のようなオペレーティング・システムの 1 つですが、無料で使えるオープンソースである点が異なります。プロジェクトでは、Twitch チャットで参加者が打ったキーのうち最も数が多かったものを 5 秒おきに計測。そのキーを Arch Linux で作成した仮想マシンのコマンドとして入力するというルールでした。つまり、Twitch ユーザーのコミュニティー全体で 1 台のマシンを操作したことになります。このプロジェクトの目標の 1 つは、Arch Linux をハードディスクから起動することと、完全に動作する X サーバーを構成することでした。

レンブラント・ロボット (模写ロボット) の製作

模写ロボットを実現するためのテクノロジーは一見複雑そうですが、実際の作業はシンプルだと言います。アーティストの筆の動きを、X 軸と Y 軸 (キャンバス上の上下左右の動き)、さらに Z 軸 (キャンバスへの筆圧) という 3 次元のデジタル情報として記録。

記録した筆の動きをロボットが忠実になぞり、作品を再現する仕組みです。ロボットに休憩などないため、人間よりも短時間で正確な複製画を再現できます。

「このロボットは 2 つのステッピング・モーターと 1 つのサーボモーターを使用しています。キャンバス上でペンや器具を移動させて作画する 2D プロッティング・システムに改良を加えたものです」とチェン氏。このプロッティング・システムは、要するに X 軸と Y 軸の情報を使用してキャンバスに塗っていく仕組みです。

A robot painting comparison
ロボットと人間の描画の比較

チェン氏は、その仕組みにウォーターブラシ (水筆) と DC ぜん動ポンプを追加することで、ロボットが水彩パレットを濡らして紙に絵の具を塗れるように改良しました。

「モーターは Arduino Due に接続されています。そこからコンピューターに接続し、追加ソフトウェアで Arduino Due を制御したり、Wacom タブレットやマウス、さらにはジェスチャー入力が可能な Myo アームバンドのような入力装置からの入力を処理します」とチェン氏は説明し、さらにこう続けます。

「Twitch に接続したロボットと同じくらい簡単ですよ。

Twitch Paints プロジェクトでは、コンピューターではなく、マイコンボードの Raspberry Pi からロボットに送信しました。Raspberry Pi がチャットウィンドウからコマンドを読み取り、専用データベースにアクセスして、Twitch ユーザーによる GUI ベースのポイント・アンド・クリック操作 (マウスなどのボタンを押して放す操作) からコマンドを読み取る仕組みです」

視聴者は、GUI を使ってチャットウィンドウに座標を指定できたため、苦労してコーディングする必要はありませんでした。

Twitch Robot Painting

この未来的なテクノロジーは、誰でもプロのような絵が描けるようになる可能性を秘めています。チェン氏は、新たにアナログ・フィードバック機能や自動で絵の具を混ぜる機能を備えたロボットを設計しようとしたこともありますが、

当面は、本業の Instapainting 社のビジネスに専念する考えです。現在の課題は、人の手が生み出すようなアートの種類を広げることです。

「ロボットは確かに魅力的です。しかし、人間が作り出すアートの幅と深みには、そう簡単に勝てそうもありません」(チェン氏)

 

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