サイエンス

テクノロジーで宇宙ゴミを取り除く

Julian Smith Writer

地球の衛星軌道上を周回するデブリ (宇宙ゴミ) は、宇宙航行や人工衛星にとって問題となる可能性があります。そのため、科学者たちは、レーザーキャノン (宇宙船などに搭載される標準的な兵器) による事前除去をはじめとする革新的な解決策に共同で取り組んでいます。

2013 年に公開された映画『ゼロ・グラビティ』のオープニングでは、人工衛星の爆発で生じたデブリがスペースシャトルやハッブル宇宙望遠鏡を破壊するという、緊迫感あふれるシーンが描かれています。

この場面設定は、ハリウッドで描かれた単なる夢物語ではありません。人工衛星の軌道上にある物体の数が増えると、デブリの数が一気に雪だるま式に膨れ上がる恐れがあります。デブリは宇宙船での通常活動、衝突、まれに起こる爆発などによって発生しますが、発生したデブリ同士が衝突して新たなデブリが生成されていきます。こうした連鎖反応によって、デブリが大気圏の摩擦熱で地球に自然落下するよりも早いペースで増え続ける現象をケスラー・シンドロームと呼びます。

この現象が発生すると、長期にわたり宇宙航行や衛星利用ができなくなる恐れがあります。

デブリ除去計画の主任研究員として NASA に 17 年間勤め、ケスラー・シンドロームの名称の由来ともなったドナルド・ケスラーは、「現在は重大な転換点にある」としています。

デブリ問題に対処するために多くの技術的な解決策が考案されているものの、具体的な解決を見ないまま時間ばかりが過ぎていきます。ケスラーは、この点も懸念しています。

現在 NASA で確認されている 0.4 インチ (約 1 cm) を超えるデブリは 500,000 個を超え、それらの移動速度は最大 17,500 MPH (時速約 28,200 km) にも達します。4 インチ (約 10 cm) を超える物体は約 20,000 個ありますが、その中で現在稼動中の宇宙船や人工衛星は 1,300 個に過ぎません。

「宇宙船と宇宙ゴミの衝突リスクを最小限に抑えるため、米国宇宙監視ネットワークでは 10 cm を超えるすべてのデブリを追跡しています。これらの画像は、すべて現在確認されている人工物体です。この中には、現在稼動中の物体もあればデブリも含まれています」
写真提供:NASA

ケスラーによれば、1957 年に世界初の人工衛星スプートニクが打ち上げられて以来、物体同士の衝突は分かっているだけでも 4 回起こっています。

最も重大な事例は、2009 年に発生したイリジウムの通信衛星とロシアの通信衛星コスモス 2251 号が、北シベリア上空で秒速 7.2 マイル (秒速約 12 km) で衝突した事故でしょう。現在確認されているデブリの 2/3 は、この事故と中国が 2007 年に実施した衛星破壊実験によって生じたものです。

ほとんどの物体は、多くの衛星が利用する高度 430 ~ 620 マイル (約 690 km ~ 1,000 km) の極軌道上に集中しています。

「リスクが高まるにつれて、各国の宇宙関連機関の関心は緩和策 (デブリの数を抑えること) から積極的な除去策へと移っています」と、デブリの専門家である Integrity Applications のダレン・マクナイトは述べています。ほとんどの解決策がまだ計画段階にある中で、いくつか着手されているものもあります。

スイス連邦工科大学ローザンヌ校では、2018 年に宇宙ゴミを回収する人工衛星「CleanSpace One」によって、大学の研究室などが製作するキューブサットと呼ばれる小型衛星を捕獲する計画を立てています。この計画は、大きな網を使って 4 インチ (約 10 cm) 四方の物体を捕獲するというものです。このミッションが成功すれば、CleanSpace One は大気圏に再突入し、自ら燃え尽きることになっています

米国国防高等研究計画局 (DARPA) による Phoenix 計画でも、やはり網を使って衛星を捕獲しようとしています。ただし、再利用可能な物体は回収するのが Phoenix の基本構想です。

また、欧州宇宙機関 (ESA) では、デブリ除去を目指す e.DeOrbit ミッションの一環として、さまざまなサイズのネットにおもりを付け、圧縮空気を使用して対象の物体に向けて発射する実験を行っています。この実験で、対象の物体から網を切り離す作業が必要になったのは、実験がうまくいった証拠と言えるでしょう。ESA では、2021 年にこのシステムを打ち上げ機「Vega」に搭載して稼動させようとしています

2015 年9 月 17 日、NASA の宇宙飛行士スコット・ケリーは、国際宇宙ステーションが早朝、米国上空に達したときの映像をソーシャルメディアで公開。「Clear skies over much of the USA today. (今日は米国全域で快晴です)#GoodMorning from @Space_Station!#YearInSpace.」とコメントしています。
写真提供:NASA

日本の研究機関に所属する科学者たちは、国際宇宙ステーション (ISS) にレーザーキャノンを取り付け、必要に応じて進路上にある障害物を取り除くというアイデアに取り組んでいます。ISS には、今まで打ち上げられた宇宙船の中で最も厳重な防護シールドが施されています。それでも、大きな宇宙ゴミへの接近を回避するために、およそ年 1 回の割合で進路を変更しなければなりません

この計画は、レーザーで浮遊物を破壊しようというものではなく、レーザーによって浮遊物の表面を蒸発させて進路をずらし、その物体を大気圏に突入させて燃やそうという考えです。

また、物体に少量の気体を吹きかけて進路をそらす方法も検討されています。この方法は、衝突の危険がわずか数日後に迫った場合に有効です。

こうした行き当たりばったりの衝突回避策はあくまでもデブリ除去システムを補完するものですが、費用はかなり抑えられます。このアイデアの考案者であるマクナイトは、

「つまりは、短期的なリスクと長期的なリスクの間でバランスを取ることになります」と説明。

また、宇宙ゴミを動かす作業は、失敗するとさらに多くのデブリを生じさせる原因となるため、常にリスクを考慮すべきであると付け加えています。

その他の宇宙ゴミの除去策としては、ロボットのアームや複数のパーツで構成された触手を使う方法、銛 (もり) を打ち込む方法などが挙げられます。また、長いロープを使って電気的に磁界を発生させ、浮遊物の速度を落とす方法も検討されています。

マクナイトは、どんなシステムであっても、大きな物体に重点を置くことが重要だとしています。

現在、衛星ネットワークのイリジウムでは、66 機の衛星が軌道上で稼動。1 機当たりの重さは 1,500 ポンド (約 680 kg) 以上で、すべてがほぼ同一の高度を周回しています。

また、役割を果たして放棄された環境観測衛星 Envisat は、長さが 85 フィート (約 26 m)、重さが 18,000 ポンド (約 8,200 kg) あります。これは、現在 10 マイル (約 16 km) 上空に浮かぶ 17 機の SL-16 ロケットとほぼ同じ重さです。

「例えば、この中のわずか 2 機の間で衝突事故が起きたとしても、そのたった 1 回の事故で、デブリの数が急増する恐れがあります。

デブリ問題は、衛星軌道上の“共有地の悲劇”と言えます。

誰もが影響を受けるのにもかかわらず、放棄された物体には誰も責任を持ちません」と語るマクナイトは、

実際の除去活動が非常に複雑なプロセスであることにも言及しています。物体がゴミかどうかを見定め、位置を特定し、それに近づかなければなりません。しかし、宇宙条約によって、その物体に何らかの操作を加えるには元の所有者の許可が必要になるのです。

ケスラーは、この問題に関しては楽観的であるものの、各国政府や宇宙機関の問題解決への動きが鈍いことを懸念しています。

「対策を先延ばしにすればするほど、宇宙ゴミも増えてしまいます。

あと 1、2 回衝突が起こらないと、人々はこの問題の大きさに気づかないのかもしれません」(ケスラー)

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