教育

テクノロジーは学習能力の向上を妨げる?

Hal Foster iQ Contributor

テクノロジーは学習能力を高めるのか?それとも低下させるのか?活発な議論が交わされているこの問題。専門家たちも、日ごろからテクノロジーを使用している人々も、賛否両論です。

このテーマに関しては、テクノロジーのヘビーユーザーであるかどうかにかかわらず、大半の人が自分の意見を持っています。

誰にとっても非常に興味深い問題であり、さまざまな分野の専門家たちが自らの研究テーマの中心に据えています。

論争に火をつけた調査結果

東北大学の川島隆太教授とそのチームは、同大学のある仙台の小学生 17,000 人と中学生 25,000 人を対象に、1 日の携帯電話の使用時間を調査。調査結果と生徒の成績を比較したところ、「携帯電話の使用時間が長い生徒ほど成績が低いという結果に衝撃を受けました。勉強時間の長さとは無関係でした」と川島教授。

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川島教授の調査では、携帯電話の使用時間が長いほど成績が低いという結果に。

この調査は、テクノロジーを長時間使用することが学習能力の低下につながることを示唆していますが、カリフォルニア大学サンタバーバラ校で行動心理学を専門とするデボラ・コー教授は、「テクノロジーは学習能力を高める」と確信しています。

コー教授は 10 年近く、人間とテクノロジーとの相互作用や、アジアと西洋の文化の差異について研究してきました。その結果、人は学習過程で複数の感覚を使用することにより、より多くの情報を保持できることが分かりました。

コー教授は、「テクノロジーは学習者に音声、視覚、触覚などのさまざまな感覚情報を提供してくれます。また、テクノロジーを利用することで、自分のペースで、自律的に学習を進められます」と説明します。

若い世代は情報獲得に積極的

「こうした感覚情報と自主性に富んだ学習内容は、総じて教育の場における学習能力の向上につながります」とコー教授。

さらに、「今の世代は、テクノロジーのおかげで、講義などを通じて受動的に情報を入手するのではなく、自分から積極的に情報を求めるようになっています」と付け加えています。

言うまでもなく、川島教授もコー教授も専門家です。では、専門家以外の平均的なテクノロジー・ユーザーは、学習能力へのテクノロジーの影響をどのように見ているのでしょう。

記憶することは学習の一部です。「10 年前の小学校時代より漢字が覚えにくくなりました。小さいころは、簡単に覚えられたんですけどね」と話す大学生の蘭賀未帆さんは、20 歳の埼玉県にある獨協大学 2 年生です。

蘭賀さんは、情報が脳ではなく電子機器に蓄えられるようになったことを背景に、多くの人の「テクノロジーは記憶力を低下させる」という見解を支持しています。

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テクノロジーの時代にあっても、ペンと紙を使った学習効果のほうが高い。

テクノロジーに頼ってしまうと、友人の電話番号などの情報を覚えておく必要がなく、忘れてしまいます。必要なときに、スマートフォンなどの電子機器で素早く情報を呼び出せると分かっているからです。

このように、テクノロジーが記憶力を低下させると考えている蘭賀さんは、覚えておきたいことは、あえて電子機器に入力しません。

その代わり、紙に書き留めます。英単語も書いて覚えます。

蘭賀さんとは異なり、東京で学習とリーダーシップ開発のコンサルタントを務める山田英彦氏 (34 歳) のように、テクノロジーは学習能力を向上させると考える人もいます。

山田氏は、自分の英単語の学習に役立てるため、電子フラッシュカード・システムを作成しました。「12 年前に大学生だったころは、フラッシュカードの作成もメンテナンスもこんなに簡単にできるとは思いもしませんでした。このアプリのおかげで、ボキャブラリーが増えました」と山田氏。

東京のミュージシャン、早川マリア氏も、テクノロジーは学習を後押しすると考えています。「テクノロジーによって効率が高まれば、その分自由に使える時間が増え、勉強時間にあてられる」というのがその理由です。

しかし、テクノロジー肯定派の山田氏でさえ、「最近は、家族の電話番号も、呪文のように口の中で何度も繰り返さないと覚えられません」と語るように、テクノロジーが学習に役立つことを認めつつも、いつでも手軽に使えるようになったことで、物覚えは悪くなったと感じています。

記憶は学習のカギではなくなった

一般に、記憶は学習には不可欠と考えられていますが、行動心理学者のコー教授は、記憶の役割が過大評価されることを懸念しています。

「膨大な情報を記憶することは、必ずしも重要ではありません。質の高い情報にアクセスし、それを合成し、利用することが重要で、それが問題解決力と創造性を高めるのです」と語るコー教授は、さらにこう続けます。

「いろいろな意味で、私たちの記憶は不完全です。何かを正確に記憶することはできません。のど元まで出かかっているのに思い出せない、ということがあるでしょう? 私たちは記憶を誤ったり、できごと全体を捏造してしまったりすることさえあるのです。

そういう意味で、記憶の保管場所となるインターネットは有効ですね。そこに戻れば、実際に記憶を検証できますから。もちろん、その情報が正確であることが前提になりますけどね」

以上のように、川島教授やコー教授のような専門家も、はたまた無数のテクノロジー愛好家たちも、テクノロジーが学習に与える影響については異なる見解を持っています。ただ 1 つ確かなのは、このような議論が今後も盛んに行われ、それが注目に値するということです。

 

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