イノベーションを生み出す母たち

音楽×テクノロジーの未来を担う女性たち

Kristin Houser Writer & Editor, LA Music Blog

音楽技術関連のフェスティバルで新しい境地を開いた 4 人の女性をご紹介しましょう。彼女たちは音楽業界におけるテクノロジーの未来についてパネル・ディスカッションを主催し、進行役を務め、専門知識を共有してきました。 毎年、音楽ファンやテクノロジー業界の関係者は、次の目玉製品を発見したり、キャリアについての貴重なアドバイスを得たり、オタクらしく熱中したりするために、国中のカンファレンスに群がります。今年は、これらのフェスティバルで開催されるパネル・ディスカッションに多数の女性が登壇し、専門知識を共有しました。 「デジタルメディアのおかげで参入障壁が徐々に低くなるにつれて、業界に女性が増え、新しい風が吹き始めています。若い人々や、さまざまな人種・民族のクリエーターやイノベーターが積極的に関与し、そこから未来のリーダーが生まれつつあります」New York Media Festival の共同制作者であるネッド・シャーマン氏はこう語ります。

Revolt Music Conference Panel. Photo by Andrew Whitfield
Revolt Music Conference のパネル・ディスカッション。撮影:アンドリュー・ホイットフィールド

音楽技術業界の人口動態が多様化するにつれ、たくさんの新しいアイデア、パネル・ディスカッション、製品が必ず生まれてきます。これからご紹介する 4 人の類まれな女性たちは、4 つの個性的なフェスティバルで活躍することで、業界の変化に貢献しています。そして、そのプロセスを通じてより良い未来を築こうとしています。

Revolt Music Conference の 2015 年のテーマは、「音楽、テクノロジー、イノベーションの融合」でした。呼び物のパフォーマンスでダンスに興じている参加者以外は、スージー・リョー氏が進行役を務める「Music, Tech, and Startups: Download This」などのパネル・ディスカッションに参加していました。 リョー氏は Atom Factory 社のベンチャーパートナー兼テクノロジー&イノベーション担当副社長であり、Uber、Lyft、Dropbox、Spotify、Warby Parker など、80 社の投資ポートフォリオを管理しています。また、同社に登録しているエンターテインメント・アーティストのためのパートナーシップ開発も行っています。 Suzy Ryoo 「私の役目は、市場の状況やビジネスモデル、各企業の日々の運営などを深く理解し、アドバイスすることです。新しい投資機会を判断、評価し、Atom Factory 社のアーティストたちとのテクノロジーに関するパートナーシップを促進します」とリョー氏。 彼女は Atom Factory 社によるエンターテインメントに特化したスタートアップ支援プログラム SMASHD LABS の監督も務めました。現在彼女が担当している新興企業には、コンサート商品の購買アプリを開発する Sidestep 社、スニーカーとストリートウェアのモバイル向けマーケットプレイスを手がける Throne 社、個性的な製品を購入できるだけでなく、購入者がそのメーカーのコミュニティー開発を直接サポートできるソーシャル・インパクト・プラットフォームを提供する Enrou 社などがあります。 彼女は忙しいスケジュールを縫うようにして、今後も音楽とイノベーションのカンファレンス Revolt Music Conference などに参加し、ほかの若い女性たちを刺激していくつもりだと言います。 「カンファレンスの登壇者として招待されたときは、できる限り応じることにしています。私のような立場の人はあまりたくさんいませんからね」(リョー氏)

音楽技術関連のフェスティバルよりも幅広いイノベーションの領域を扱うのが、ニューヨーク州マンハッタンで 3 日間にわたって開催される New York Media Festival です。 このフェスティバルの共同制作者であるネッド・シャーマン氏は、「私たちは音楽だけでなく、ゲームから音楽、映像、映画、テレビまで、あらゆるメディアとエンターテインメントの創造性とイノベーションに焦点を当てます」と説明。 フェスティバルでの 50 を超える討論会とパネル・ディスカッションの 1 つである「The Latest Music Industry Research (最新の音楽業界の研究)」の進行を務めるのがギギ・ジョンソン氏。彼女は UCLA  音楽イノベーション・センター のディレクターです。 Gigi Johnson ジョンソン氏の略歴に、「クリエーターとテクノロジー関連企業の利益の調和を図る代弁者」とあるように、彼女は、新しい音楽配信システムの倫理的意味や、アーティストとレーベルの力関係など、音楽業界での社会的つながりにテクノロジーのイノベーションがどう影響を及ぼすかについて考察します。 また、アーティストとテクノロジー・イノベーターとの間で妥協点を見つけることにフォーカスし、メディアや文化的システムにおけるデジタル・ディスランプション (デジタル時代の創造的破壊) の将来的な影響についてもよく話します。 「音楽技術関連のイベントでは、私はアーティストの視点でデータを語る稀な人間なのよ、とよく冗談を言っています」とジョンソン氏。 https://youtu.be/ySLU7PagXKY そんな彼女は、今年、South By Southwest (SXSW) 2016 でのパネル・ディスカッション を含め、音楽の将来に関する「Music 20/20」シリーズの陣頭指揮を執っています。このパネル・ディスカッションでは、音楽業界が「創作、協働、共有し、音楽収益以外で生き残っていく方法」について具体的なディスカッションが行われる予定です。 テクノロジーが音楽業界の将来に与える影響について、正確に予測することは不可能なことのように思えます。しかし、彼女のバックグランドと専門知識を持ってすれば、貴重な見識を提供できるに違いありません。

毎年、ミュージック・テック・ファンたちは世界最大の音楽コンベンションである South By Southwest (SXSW) のMusic and Media Conference に参加するため、テキサス州オースティンに集います。2015 年は、Cyber PR 社の社長、アリエル・ハイヤット氏が「The Rise of Female Entrepreneurs in Music (音楽業界における女性企業家の台頭)」と題したパネル・ディスカッションに登壇。彼女の参加は実に 15 回目でした。 18 年以上前に Cyber PR プラットフォームが開発されて以来、アーティストや業界関係者は、宣伝活動へのテクノロジー活用についての著作を持つハイヤット氏を称賛しています。彼女のデジタル PR 作品は WiredHypebot にも掲載され、さらに大学でも、自身の名前を冠したコースを持っています。 Ariel Hyatt 多くの広報担当者が新聞や雑誌への掲載に重点を置く中、Cyber PR プラットフォームのデジタル・アプローチでは、アーティストとメディアを結ぶ「インターネット・デート・サイトのような役割を担うオンラインシステム」を使用します。 ハイヤット氏はバークリー音楽大学の Music Business Journal のインタビューで、こう説明しています。「広報担当者は、バンドのためにレビュー、インタビュー、またはメディアの広告枠を確保しますが、 https://youtu.be/hpmcSwe318g Cyber PR プラットフォームのプロセスはほかとは違います。できる限り多くの人の興味を喚起し、メールリストに登録したり、ニュースレターを開いたり、ファンクラブに入会してもらうといった、ファンづくりによる具体的な成果を生み出すことに尽きます」 ソフトウェア・プラットフォームがメディアパートナーに関する情報を集め、各パートナーの読者層にどのアーティストがふさわしいかを判断。クライアントとその対象とするメディアメーカーをつなぐのです。彼女のニュースレターと YouTube の動画シリーズ「Sound Advice」には 20,000 人以上の登録者がいます。

2008 年の初開催以来、音楽技術関連のイベント SF Music Tech Summit では毎回、開発者、企業家、投資家、ジャーナリスト、音楽家をウェストコーストに集め、進化し続ける音楽 / ビジネス / テクノロジーのエコシステムについてディスカッションしています。 今年、このサミットで、ドラマー兼プロデューサーのキラン・ガンジー氏 (別名、マダム・ガンジー) が、「The Data-Driven Future of Music (データ主導の音楽の将来)」と題したパネル・ディスカッションを行いました。ガンジー氏は、世界最大の楽曲数を誇る音楽配信共有サービス Spotify のアドバイザーであり、Interscope Records 社の最初のデジタルアナリストであり、「音楽とテクノロジーを使って女性にとってより良い世界を作りたい」という夢を持つ音楽家でもあります。 Kiran Gandhi 「私たちは、すべてにおいて性差のない完璧な世界に住んでいるわけではありません。しかし、パネル・ディスカッションやカンファレンスでは、私たちが住みたいと願う世界をステージ上に再現し、なぜそのような世界が多様性のない世界より良いのかをお見せすることができます」 ガンジー氏は Interscope Records 社でデジタル分析部門を創設。Next Big SoundBig Champagne などのツールを用いてアーティストのデータを追跡し、Spotify ストリーム、YouTube 動画、およびソーシャルメディアのコメントの中からパターンを見つけます。 そして、それらのパターンから、例えば、アルバムの中からどの曲をシングルとしてリリースするかを判断したり、ブレイクする可能性の高い新人を特定します。以前は、収集したデータを適切に処理するためのインフラストラクチャーがありませんでしたが、ツールのおかげで、レーベルに欠落していた重要な部分が埋まりました。 ガンジー氏は分析と同様に音楽制作にも精通しており、ハーバード・ビジネス・スクールで MBA 取得の勉強をしながら、英国のレコーディング・アーティスト M.I.A. とツアーを行っています。最先端のテクノロジーを使うことは、彼女の音楽制作プロセスの重要な要素なのです。 最近 Sensory Percussion tech を用いた演奏を試したというガンジー氏は、「新しいテクノロジーを使ってほかにはない個性的なものを創り出せば、私の音楽サウンドは他人による再現が難しくなり、私だけがそれを表現できるようになります」と説明。さらにこう付け加えます。 https://youtu.be/83Q7hVfAQfo 「ただし、音楽に有機的な人間による要素が欠けていては絶対になりません。 人々は、テクノロジーが美しく使用されたときには刺激を受けますが、テクノロジーが主役になってはいけないのです。テクノロジーはあくまでも、音楽で物語を紡ぐのを手助けするツールであるべきです」  

この記事をシェア

関連トピック

エンターテインメント 教育

次の記事