サイエンス

「スター・ウォーズ / フォースの覚醒」の世界がすぐそこに

科学者たちが、本物のライトセーバー (スター・ウォーズに登場する象徴的な武器) や惑星を破壊できるスペース・ステーションを本気で完成させるとしたら、おそらく何光年もかかることでしょう。しかし、「スター・ウォーズ / フォースの覚醒」のテクノロジーは、全く手の届かない夢の話ではありません。

12 月14 日に公開された「スター・ウォーズ / フォースの覚醒」は、英雄や悪党がひしめき、ハイテクとローテクが絶妙に混在する銀河系へとファンを再び誘います。TIE ファイター (架空の宇宙戦闘機) から医療ドロイド、ストームトルーパー (銀河帝国のエリート兵士)、レーザー兵器にいたるまで、このスター・ウォーズの SF の世界に、現代の科学は果たしてどれだけ追随できているのでしょうか。ちょっと検証してみましょう。

  • イオンエンジン

フィクションの世界:「ジェダイの帰還」から 30 年、スター・ウォーズの世界も様変わりしました。 しかし、ファースト・オーダー (帝国の残党) は、「フォースの覚醒」でいまだに TIE ファイターを乗り回しています。

スター・ウォーズの世界を象徴するこの 1 人乗りの宇宙戦闘機は、2 枚のソーラーパネルによる電力でツイン・イオン・エンジン (「TIE」) を駆動。高速飛行と高い機動性を確保しています。ジョン・ボイエガ演じるフィンは、新作で TIE ファイターを操縦し、クラッシュしています。予告編をご覧ください。

現実の世界:イオンエンジンはすでに存在しています。実際の宇宙船の推力として使用されているものの、高速飛行や高い機動性とは程遠いものです。 TIE ファイターのように、NASA の無人探査機ドーンの探査用装置 (ロケット) にイオン推進エンジンセットを搭載。2 枚のソーラーパネルで電力を供給し、 イオン化キセノンガスをエンジンから放出することで推進力を発生させます。

唯一の難点は推進力が非常に小さいことです。正確には 19 ~ 91 ミリニュートンしか得られません。ドーンのイオンエンジンで宇宙船を 60 mph (約 96 km/h) まで加速させるには 4 日かかる計算です。実際に NASA のロケットがセレスという矮星 (わいせい:恒星に準じる天体で大きさが特に小さいもの) に到達するまで 24,000 mph (約 38,616 km/h) まで加速した記録もありますが、その連続推進速度に達するまでに 5 年もかかっています。

  • 水分抽出農場

フィクションの世界:スター・ウォーズに登場するルーク・スカイウォーカーは、惑星タトゥイーンのおじとおばの水分抽出農場で育てられました。水分凝結機は「フォースの覚醒」の砂漠の惑星ジャクーにあるとされています。 オリジナルの装置は中央にある円柱状のものとそれを支える何本かの冷却チューブで構成されており、水分を含んだ大気を凝結させて、落ちてくる水分を集める仕組みでした。

Image © starwars.com / Lucasfilm Ltd. All Rights Reserved.
画像 © starwars.com / Lucasfilm Ltd. All Rights Reserved.

現実の世界:2011 年、オーストラリアの発明家エドワード・リネアクレ氏は、太陽光発電で動く Airdrop でインターナショナル・ダイソン・アワードを獲得しました。Airdrop は、大気中から凝結した空気を地面に取り込み、作物に水を供給する装置です。 一方で、それほどハイテクではない水分抽出装置もあります。チリのアタカマ砂漠の外れにあるチュングンゴの住人は、霧回収ネットで水を回収しています。 National Geographic 誌はこう説明しています

「非常に目の細かいメッシュで作られたネットを一連のトラフ (家畜の飼料や水を入れる細長いかいばおけ) の上に垂直に垂らします。霧がネットの表面で凝結すると、水分がトラフに落ち、その水分をパイプで集めて村に送るのです。この霧回収装置は毎日平均 2,600 ガロン (約 9,800 リットル) の水を村に供給しています」

  • ドロイド

フィクションの世界:スター・ウォーズの世界には、C-3PO のようなプロトコル・ドロイド、R2-D2 のようなアストロメク・ドロイド、「フォースの覚醒」に登場する新しい BB-8 など、あらゆる形やサイズのドロイド (ロボットたち) が登場します。 戦闘ドロイドはもちろん、暗殺ドロイド、医療ドロイド、探査用ドロイド、メンテナンス・ドロイド、「gonking」パワー・ドロイドなど、その種類はさまざまです。

BB-8
「スター・ウォーズ / フォースの覚醒」の BB-8 ドロイド。画像 © starwars.com / Lucasfilm Ltd. All Rights Reserved.

現実の世界:ロボットは私たちの現実世界でも一般的になりつつあります。大型のピック&プレース用産業ロボットや、お掃除ロボットのルンバ、Amazon の倉庫巡回用「Kiva」ロボット日本で発売から数分後に売り切れたコンパニオン・ロボットの Pepper ドロイドなど、普及が進んでいます。

Starship Technologies hopes that its delivery robots will be commonplace on our streets in the future.
Starship Technologies 社は自社製のデリバリーロボットが街を普通に走る未来を想像しています。

ほかにも、da Vinci Xi サージカル・システムは内視鏡下の複雑な手術を支援し、4 輪自動プログラミング・ロボットの Bosch Bonirob は農場の頑固な雑草を一掃しています。Starship Starship Technologies 社が開発する 6 輪のデリバリーロボットが街をゴロゴロ走る日もそう遠くないでしょう。

Aldebaran’s Pepper robot has been designed specifically to interact with humans and to recognize emotions.
Aldebaran の Pepper ロボットは人間とのやり取りのために専用設計され、感情を読み取ります。
  • 義手

フィクションの世界:「帝国の逆襲」のラストで、ルーク・スカイウォーカーはダース・ベイダーとライトセーバーで戦い、手を切り落とされます。 幸い、映画のエンディングでは、医療ドロイド 2-1B によってロボットの義手に交換できており問題ないようです。「フォースの覚醒」では、ルークが (下の写真の手がルークの手であれば) 全く異なる機械の手を装着しているのが分かります。

Image © starwars.com / Lucasfilm Ltd. All Rights Reserved.
画像 © starwars.com / Lucasfilm Ltd. All Rights Reserved.

現実の世界:義手テクノロジーは、現実の世界でも発展し続けており、価格も低下しています。 Limbitless Solutions が設計・開発した芸術作品をご覧ください。カスタマイズされ、3D プリンターで作られた子ども用の人工義手です。 インテルのボランティアは、同様のテクノロジーを使用してハイチで 100 本もの義手を製作しました。 一方、高価格帯の義手の中には、bebionic の人工義手のように 14 種類もの握り方に対応するものも出てきています。これは複数の関節を持つ筋電義手です。ルーク・スカイウォーカーもきっと気に入ってくれるでしょう。

  • ストームトルーパー

フィクションの世界:スター・ウォーズ・エピソード 4 – 6 に登場した白いプラストイド合金製のストームトルーパー・アーマー (ストームルーパーが着用している装甲服) が、「フォースの覚醒」ではスタイリッシュにイメージチェンジしています。 ファースト・オーダーのヘルメットはすっきりとしたシャープなラインでしたが、アーマープレートが重量感を増し、より頑丈になりました。オリジナルの 3 部作では、あまりにも無防備に見えたストームトルーパー・アーマーですが、この最新技術版ならレーザービームにも耐えられそうです。

Stormtroopers from the First Order. Image © starwars.com / Lucasfilm Ltd. All Rights Reserved.
ファースト・オーダーのストームトルーパーたち。画像 © starwars.com / Lucasfilm Ltd. All Rights Reserved.

現実の世界:英国の国防大臣は先日、 Future Soldier Vision (FSV:兵士装備計画) を発表。その中で、英国兵士が 2025 年までに着用する装備も公開されました。残念ながら全身装着型のボディー・アーマー・ソリューションではありませんでしたが、 その内容は、スマートめがね、スマートウォッチ、内蔵電源など、センサーと機械装置を搭載した軍服でした。

もちろん、Tactical Assault Light Operator Suit (TALOS:戦術的攻撃軽量オペレーター・スーツ) が登場するまでの場つなぎというわけではありません。TALOS とは強化外骨格 (別名パワードスーツ、強化スーツ) に関する米軍プロジェクトで、着用者の身体の 60% を保護することを目指しています。また、兵士の力を強化するとともに、膨大な戦場情報や生体フィードバックを提供します。 CNN はこの「アイアンマン」スーツについて報じ、TALOS スーツの試作品が早ければ 2017 年には試験段階に入るとしています。

  • レーザー兵器

フィクションの世界:「スター・ウォーズ」では、レーザー兵器が広く使用されています。X ウイングや TIE ファイターはもちろん、ストームトルーパーが携帯するブラスターもレーザー兵器です。 レーザーは、悪役のカイロ・レンや、ジョン・ボイエガ演じるフィンが操るライトセーバーでも利用されています。

X-Wings and TIE Fighters battle in The Force Awakens. Image © starwars.com / Lucasfilm Ltd. All Rights Reserved.
「フォースの覚醒」での X ウイングと TIE ファイターの戦闘。画像 © starwars.com / Lucasfilm Ltd. All Rights Reserved.

現実の世界:ライトセーバーは製作できません。 携帯型のレーザーブラスターも同様です。現代の戦闘機に巨大で重い固体レーザーを装備すると、離陸できなくなり、兵器としての意味がなくなってしまいます。

ただし、レーザーは実現不可能な兵器システムというわけではありません。事実、米海軍の輸送揚陸艦 USS Ponce は、2014 年から出力 30 キロワット級のレーザー兵器 LaWS を搭載しています。その価格は、4,000 万ドル (約 48 億円) です。以下のビデオをご覧ください。

これは始まりにすぎません。 米国国防総省は、Northrop Grumman Space & Mission Systems 社と固体レーザーの開発を継続する契約を交わし、こうコメントしています。「レーザー出力、ビーム品質、ビーム・ダイレクターの構造、その他レーザーシステム設計の物理的・光学的特性など、さまざまなシステム特性の熟成と最適化を進めることで、致死率の引き上げを達成できると見込んでいます」

  • ランドスピーダー

フィクションの世界:オリジナルの「スター・ウォーズ」では、ルーク・スカイウォーカーは X-34 ランドスピーダー (スター・ウォーズに登場する乗り物) を所有していましたが、ハン・ソロ (スター・ウォーズに登場する惑星コレリア出身の架空の人物) のミレニアム・ファルコン号に乗船するために売却しています。 X-34 は、浮上走行が可能なリパルサーリフト (大気内を移動するための反重力推進ユニット) として初登場。以来、帝国のスピーダーバイク (別名ホバーバイク)、ジャバが所有するセールバージ、ホバータンク、ポッドレーサーなど、さまざまな乗り物が登場し、「フォースの覚醒」では、レイ (主人公の少女) が箱状の反重力バイクに乗っています。

Rey on a speeder bike in The Force Awakens. Image © starwars.com / Lucasfilm Ltd. All Rights Reserved.
「フォースの覚醒」でスピーダーバイクに乗るレイ画像 © starwars.com / Lucasfilm Ltd. All Rights Reserved.

現実の世界:反重力に秘密があるとしたら、現在の科学者にはいまだ解明できていない技術です。 一見すると、Lexus 社のホバーボードは条件を満たしているようですが、これは液体窒素で冷却した超電導体と永久磁石の組み合わせで浮上する仕掛けです。 しかし、磁気トラックも必要とはいえ、このデモビデオを見ても分かるように、視聴者が目を見張るようなものはありません。

Landspeeder-esque, the Aerofex Aero-X is a 45mph flying bike powered by rotary fans.
ランドスピーダー風の Aerofex Aero-X はロータリーファンを動力として 45mph (約 72 km/h) で浮上走行できるバイク

「スター・ウォーズ」のスピーダーに一番近いものとしては、プロペラで駆動するホバーバイクの Aerofex Aero-X があります。3 ローターのロータリーエンジンを搭載した 2 人乗りの Aero-X は、地上最大 10 フィート (約 3m) の高さまで浮上し、最高速度は 45 mph (約 72 km/h) 。 設計者によれば、満タンで 1 時間余りの浮上走行が可能だということです。予定価格は85,000 ドル (約 1,010 万円) で、発売時期は2017 年を予定しています。

この記事は Dean Evans (@evansdp) が iQ by Intel の英国サイト向けに執筆したものです

メイン画像提供:画像 © starwars.com / Lucasfilm Ltd. All Rights Reserved

 

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