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インドの水危機をどう救う?

Intel Japan Writer

世界第 2 位の人口を抱えるインドが、史上最悪級の熱波に見舞われています。しかし、地元民の多くは現代的な解決策の実施に消極的です。

2015 年 5 月、インド北部ラージャスターン州のファローディ市は、インドの過去最高気温 51 度を記録。この熱波により 3 億 3,000 万人以上が影響を受けたと推定されており、2016 年 4 月時点ですでに約 300 人が亡くなっています

ニューヨーク大学ロースクールの The Centre for Human Rights and Global Justice の報告によると、インドでは農場の 65% 以上が雨水に依存しており、水危機は農業にも深刻な影響を与えています。また、2009 年には、17,000 人を超える農業従事者が水を確保できないことを理由に、借金の返済不能に陥り自殺したとしています。昨年の推定自殺者数も非常に高いものでした。

救済に乗り出した Aqwise 社

この水危機を打開するために、インドは国外のテクノロジーに期待を寄せています。

2012 年には、水処理ソリューションを提供するイスラエルの Aqwise 社が、ある画期的なプロジェクトに参加。インドの都市アーグラのタージマハル近くに水処理施設を設立した同社は、ヤムナー川の汚染水を浄水して飲料水に変え、地元民はもちろん、インドを代表するこの地を訪れる観光客にも供給しています。

浄水して飲み水を作る Aqwise 社のバイオマス担体。

Aqwise 社は、小型のプラスチック製バイオマス担体 (担体とは、他の物質を固定する土台となる物質のこと) で水の汚染物を分解して飲料水にする MBBR (担体流動法) テクノロジーを使用しています。アーグラの事例では、同社のテクノロジーによって 1 日 1 億 5,000 万リットルという驚異的な水量を浄化できました。

Aqwise 社のアジアパシフィック担当事業開発ディレクター、マーク・クリーガー氏は、インドの水質汚染のひどさに言及し、「インドは多くの助けを必要としています」と指摘。同氏によれば、問題は、インドが新しいテクノロジーを迅速に採用しないことにあると言います。

「彼らは従来の価値基準を打ち破るような先進的なテクノロジーを急いで導入しようとはしていません。非常に保守的で、すでに知っていること、理解していることを実行したいと考えているのです」(クリーガー氏)

しかし、こうした状況が少しずつ変化しているという喜ばしいきざしもあります。2013 年、インド工科大学マドラス校は、家族やグループなどの単位で飲料水の浄化に使用できる、ナノ・テクノロジーに基づいた浄水器を開発。 2015 年末には、飲料水衛生省がこの浄水器の国内使用を推奨しています

伝統的な貯留術

Aqwise 社のソリューションのような革新的なテクノロジーは素晴らしいメリットをもたらしますが、科学および環境センターの水道部門で副プログラム・マネージャーを務めるサスミタ・センガプタ氏は、「インドの問題は、高価で高度な浄化テクノロジーだけで解決されるものではない」と主張しています。

同センターが推奨する伝統的な雨水貯留術は、何世代にもわたり受け継がれてきたもので、テクノロジーも必要なければお金もかかりません。

センガプタ氏は、「ラージャスターン州のレイポリヤやその他の地域では、実際に何十年、あるいは何世紀もの間、各地が独自の方法で雨水を貯留し、干ばつを乗り越えてきました」と語り、この手法を「伝統的な英知」と表現します。

レイポリヤの「Chauka」(スクエア) システム。

レイポリヤは降雨量が著しく少ないにもかかわらず、独自の「Chauka」(スクエア) システムを活用して水位を維持していることで知られています。レイポリヤの地元民は、傾斜のある土地に四角い穴を列状に掘り、それらを浅い水路でつなげて、土の壁で囲います。雨が降ると穴に水がたまり、あふれ出た水は斜面を伝って、下で待ち構える四角い穴にたまるという仕組みです。地元民がこの水を集めることはありません。水は土から染み込んで地下の帯水層へと移動し、池や泉を満たし、あふれ出た水は村の貯水タンクに流れ込むように設計されているからです。

水の確保はかくあるべきだとして、センガプタ氏は、「お金のかかるものではなく、地元民やその土地に受け継がれた知識で解決すべきなのです」と強調します。

2 方向からインドの水危機を解決

レイポリヤの例は、クリーガー氏の「インド人は既知の方法を導入したがる」という見解を裏切らないものですが、センガプタ氏の主張にも納得できる点がないわけではありません。

一方でクリーガー氏は、Aqwise 社や他の水処理会社が提供するテクノロジーは、ダムや河川全体の水を処理することで、はるかに大量の飲料水を提供できるとしています。

インドの水危機は深刻な問題ですが、お金のかからない伝統的な方法や、高価でも技術的に解決できる方法など、水危機と戦うための多くの武器が揃っています。こうした方法を単独で、または組み合わせて適切に活用すれば、次に訪れる熱波が、近年のように人々を苦しめることはないでしょう。

 

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