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ドローンがサメ対策の決め手に?

Adeline Teoh Writer

オーストラリアで現在行われている巡回・救難ドローンの実証実験。その効果が認められて本格稼働するようになれば、毎年後を絶たないサメ被害や水難事故がなくなるかもしれません。

オーストラリアは、長い海岸線を持つ巨大な島です。ほぼ一年を通して、水泳やサーフィン、スキューバダイビングなどのさまざまなマリンスポーツが楽しめます。しかし、マリンスポーツを年中楽しめるということは、必然的にサメに遭遇するリスクも高まります。

昨年、オーストラリア沿岸では、サメの遭遇事故が 33 件報告されています。そのうち 23 件が負傷事故で、2 人が亡くなっています。 サメ被害に対する認識が高まるにつれ、空中監視ドローン「Little Ripper」に対する政治的支援の動きも出てきており、近い将来、救難活動にドローンが配備されるようになるかもしれません。

NSW Premier Mike Baird, Westpac CEO Brian Hartzer, Westpac Little Ripper Founder Kevin Weldon and President of SLS NSW Tony Haven
Westpac 社のドローン「Little Ripper」とポーズをとるニュー・サウス・ウェールズ州のマイク・ベアード州知事、Westpac 社 CEO のブライアン・ハーツァー氏、ケビン・ウェルドン氏、トニー・ヘイベン氏。

人命救助活動の未来

Westpac 社の創業者ケビン・ウェルドン氏Little Ripper のアイデアを思い付いたのは、オーストラリアでサーフィンをしていたときではありません。意外にも、10 年以上前に米国で起きたハリケーンカトリーナの救助活動を目にしたことがきっかけでした。

ニューオリンズで大洪水が発生したとき、多くの人々が安全な場所へ避難しようとしていましたが、救難ヘリコプターからすべての被災者を発見することは不可能でした。

そうした状況下で活躍したのが、無人航空機 (以下、UAV と略) です。

UAV またはドローンは、コンパクトなサイズと機動性を活かして水没した街を縦横無尽に飛行。ヘリコプターが入れないような区域を捜索して生存者を発見し、5,000 人もの命を救いました。

ウェルドン氏は、この成果を目の当たりにして、Little Ripper のアイデアを思い付いたのだと言います。そんな彼には救命活動の経験があります。15 歳のとき、クイーンズランド州の Pacific SLSC (SLSC はサーフ・ライフ・セービング・クラブのこと) にサーフ・ライフセーバー候補生として所属していたのです。その後 1971 年に、救命トレーニングの価値を提唱するため World Life Saving を設立。さらに同組織はフランスにある同様の組織と合併し、International Life Saving Federation (ILS: 国際ライフセービング連盟) に発展しました。その初代会長であるウェルドン氏は、ニューオリンズでの UAV の活躍を、「2 つの世界的な水上安全団体の創設者として、私は『これこそ救難活動の未来だ』と思いました」と振り返ります。

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Little Ripper などの UAV は世界中の捜索・救難活動を大きく変える力を秘める。

高まるドローンへの期待

ウェルドン氏は、Little Ripper によって、特に人気のない海岸、断崖や岬などの険しい地形に囲まれた場所などで多くの人命を救い、事故を未然に防ぐことができると考えています。こうした場所で発生するのは、サメ被害だけではありません。オーストラリア沿岸では毎年約 300 人が水難事故で亡くなっています。これはサメ被害をはるかに超える数字です。

2 人で操縦する Little Ripper は、1 人が本体を操作し、もう 1 人が撮影された映像を分析します。この FADEC (全デジタル電子式エンジン制御装置) を適用した航空機の操縦は、司令所のノートブック PC から行います。

「Little Ripper は、辺鄙な場所を定期的に巡回したり、救急車両に載せて遠隔地に急行し、そこからリモート操作で飛ばしたりすることができます」とウェルドン氏は説明。

この長さ 2m のドローンの連続飛行時間は 2 時間 30 分で、救命具、GPS ユニット、Shark Shield (電子サメ除け装置)、その他救命活動を支援するテクノロジーをまとめた救命パッケージを搭載して飛行します。

Little Ripper 上級ディレクターのノエル・パーセル氏は、パイロット追跡や機材制御の支援コンポーネントとして、空中衝突防止装置 (TCAS) や放送型自動位置情報伝送・監視機能 (ADS-B) などのインテル® テクノロジーを活用することを検討しています。

オーストラリア沿岸のサメ被害ゼロへ

現在、16 機の Little Ripper が 16 機の Westpac Life Saver Rescue ヘリコプター (Westpac Life Saver Rescue は、救難捜索、消火活動などの目的で運航している非営利機関) とともにニュー・サウス・ウェールズ州の海岸を巡回しています。ドローンは、州政府が新たに打ち出した 1,600 万オーストラリア・ドル (約 12 億 4,000 万円) 規模のサメ対策プログラムの一端を担っています。ドローン以外の支援コンポーネントには、サメと同じ大きさの物体を検出する水中ソナーや、人食いサメをリアルタイムで追跡する関連アプリなどがあります。ヘリコプターは広範囲にわたる航空映像を取得し、ドローンは海面の監視を行い、ソナーは海面下のデータを提供する、という具合です。

あとは展開プロセスのスピードアップを図るだけです。現在、ドローンの展開に必要な時間は 14 分ですが、さらなる短縮が見込まれます。また、より多くのパイロットを養成し、来年は 40 機の Little Ripper を投入する予定です。

今度、海水浴客やサーファーが強い流れに捕まったとか、サメに襲われそうになったというニュースを耳にしても安心してください。そうした被害を防ぐために、小さなドローンの目が光っているのですから。

 

※文中に記載の金額は、日本語原稿執筆時の為替レートで計算しています。

 

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