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協調性を育む「Push Me Pull You」の奇妙な世界

Intel Japan Writer

マルチプレーヤー・ゲーム「Push Me Pull You」では、奇妙でおかしな世界をベースにコミュニティー意識が醸成されていきます。それは、2 つの頭を持つ不思議なモンスターのいる世界。プレーヤーは体が絡まらないように気をつけながら、ボールゲームで楽しく対決します。

少々目まいがするような奇怪なコンセプトにもかかわらず、「Push Me Pull You」は年齢、人種、スキルレベルの異なるさまざまな人にとって親しみやすい環境を作り出し、圧倒的な魅力でプレーヤーを惹きつけます。

メルボルンの小さなスタジオ House House 社が制作したこのゲームは、プレーヤーを文字どおり一体化させることを意図して設計されています。4 人でプレイする通常のゲームでは、チームメイトは身を寄せ合うようにして 2 つのコントローラーを共有しなければなりません。

Push Me Pull You (出典:House House)

開発者のマイケル・マクマスター氏によると、開発当初は実用性の観点から、2 つのコントローラーしか使えないようにゲームを設計したのだそうです。

しかし、「そうすることによってゲームに奇妙かつ新しい面白さが加わることに、すぐに気づきました。PAX East エクスポでこのゲームを展示したとき、2 つのコントローラーだけを接続してみたのです。これが素晴らしい結果につながりました。たくさんの知らない人同士が一緒にチームを組み、プレーヤー間で数多くの奇妙かつ個人的な体験が生み出されたのです」とマクマスター氏は説明します。

Push Me Pull You (出典:House House)

ゲームでは、1 つのコントローラーのボタンを分け合いながら、モンスターのぎこちない動きを体現していきます。プレーヤーはモンスターの体の半分だけを選択した方向に縮めたり、ねじったり、這わせたりすることができ、この奇妙な動きに、チームメイトは簡単に惑わされてしまいます。

「ゲームが白熱してくると、プレーヤーは無意識のうちに、共有するコントローラーを握りしめたりひねったりすることになります。こうしてゲームプレイに奇妙な身体的要素が加わり、画面上で展開する戦いと並行して、プレーヤー間で巧妙なレスリングマッチが繰り広げられることになるのです」とマクマスター氏。

大きな笑い声とともに、プレーヤーはそれぞれが操作するモンスターの頭を同じ方向に向けることに苦心したり、敵をかわしながらボールを守ったりします。

Push Me Pull You (出典:House House)

開発元の House House 社は、スキルや経験値に関係なく、あらゆるプレーヤーがこの騒々しいゲームを心底楽しめるよう、一体感の創出とコミュニティー意識の醸成を念頭に設計しています。

プレーヤーは対戦前に、豊富なプリセットからモンスターのヘアスタイルや肌の色を選んでカスタマイズできます。これで、誰もがゲームの世界に自分を投影できるのです。マクマスター氏はこう説明します。

「名前があって特徴もはっきりしているような、明確なコンセプトのもとにデザインされたキャラクターではなく、どこにでもいる、いわゆる普通のキャラクターにしたいと考えました。その普通っぽさを演出するためにも、いろいろな人が参加できるようにする必要がありました。お下げ髪、ダサいマッシュルーム・ヘア、モヒカン、バーコードヘアなどを幅広く取り揃えたのも、性別、年齢、社会的地位などに関係なく楽しめることを強調したかったからです」

Push Me Pull You (出典:House House)

「Push Me Pull You」の面白さは、モンスターの 2 つの頭をさまざまなパターンの奇抜な組み合わせで作成し、その関係を想像させることにもあります。例えば、おばあちゃんが甥っ子のお尻にくっついていたり、パンクロッカーが中年のお父さんに引きずられたりします。

こうしてあらゆるプレーヤーが、ゲームに自分を投影するだけではなく、限られた仕組みの中で喜びや、面白み、戦略を自ら発見していくこともできます。

House House 社は、プレーヤーにこれといった指示をほとんど与えないことで、ゲームに取り組みやすくなるだけではなく、チームメイト同士が独自の方法でコミュニケーションせざるをえなくなることに気づきました。

それは、ある対戦中に、プレーヤーが画面上で絡まり合ったキャラクターの体を元に戻そうとしたときのことです。お互いが短い言葉で素早く指示し合えるように、チーム内でさまざまな略語が生まれていたのです。

Push Me Pull You 発売予告ムービー (出典:House House)

このゲームの発売予告ムービーでは、「Poke」(首が伸びる機能を使用して、モンスターがもう片方の頭を敵の中心部に押し込み、敵を退散させるテクニック) をはじめとして、代表的なテクニックを示すお決まりの用語がいくつか紹介されています。

各用語は、プレーヤーごとに特有であるだけでなく、各チームの解釈の仕方によっても異なり、彼らがこの奇妙なゲーム環境をどのように理解しているかを反映しています。

マクマスター氏は、「このことに気づく前は、極めて個人的でプライベートな体験として 4 人参加型の対戦シーンを作っていましたが、最終的に、創造的発見を重視したゲームを制作できたことに満足しています」と振り返ります。

「Push Me Pull You」が 2016 年 5 月にリリースされて以来、House House 社はこのゲームがさまざまな状況下でプレイされるのを見てきました。この中にはオーストラリアの小学校数校も含まれます。

実験的なプレイを通じて相互理解や創造性を育成するように設計されたこのゲームは、特に子供たちにたくさんの大切なことを教えてくれます。

ゲームを使用した学習の専門家であるタスマニア大学の講師、イアン・ルイス博士によると、このマルチプレーヤー・ゲームは一見クレージーでただ楽しいだけのゲームに見えるものの、ゲームをプレイすること自体が重要なスキルの育成に役立っていると言います。

「このようなゲームを体系的な方法で使用すれば、協調性やコミュニケーションについて、また、それらが欠如すると何が起きるかについて、話し合いのきっかけが生まれます」とルイス博士。

とはいえ、人間同士が絡まり合って大騒ぎになるところが、大人も子供も純粋に「Push Me Pull You 」を楽しめる理由の 1 つであることは間違いないようです。

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