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「オーバーウォッチ」、韓国で e スポーツ旋風を巻き起こす

e スポーツ競技に新しい命を吹き込むゲーム「オーバーウォッチ」。韓国では、プロプレーヤーもゲーム愛好家も、みんなこのゲームに夢中です。

今年前半、韓国のインターネット・カフェで、チーム・ストラテジー・ゲーム「League of Legends (LoL)」が一番人気の座をゆずりました。この 4 年近くで初めての出来事です。インターネット・カフェやオンラインゲーム向けのゲームセンター「PC ルーム」では、Blizzard 社から最近リリースされたアクション・シューティング・ゲーム「オーバーウォッチ」の人気が急上昇。シェアが 30% を超えた 6 月には、「LoL」をしのぐ勢いを見せ始めたのです。これはウィンブルドンにも匹敵する人気で、スーパーボウルよりも多くの観客をとりこにしています。

「FPS (一人称視点シューティング・ゲーム) のジャンルは韓国ではあまり一般的ではありませんが、『オーバーウォッチ』のバラエティー豊かな展開とキャラクターにみんな夢中です」と説明するのは、「オーバーウォッチ」のプロプレーヤーである韓国のチャン・ジス氏 (ハンドルネーム: AKaros)。彼女のチームは最近、アジアの e スポーツシーンでは有名な、歴史あるプロ・ゲームチーム EHOME と契約しました。

チャン・ジス氏 (ハンドルネーム: AKaros)
チャン・ジス氏 (ハンドルネーム: AKaros)

ジス氏は 12 歳のときに大人数参加型オンラインゲーム「World of Warcraft (WoW)」のプレイを始め、膨大な時間をインターネット・カフェで過ごしました。「両親から、喫煙者が数多く集まる場所に長居することを反対されながらも、かまわずにやり続けました」と振り返るジス氏は、それから数年経った今、自身が革新的な e スポーツ・コミュニティーの中心にいることを感じています。

長年、「LoL」が国民的な娯楽となっている韓国では、イベントともなると、毎年ソウル・ワールドカップ・スタジアムに 45,000 人を超えるファンが集まり、チケットが売り切れるほどです。突然訪れた「オーバーウォッチ」の台頭は、e スポーツ界の主役交替を迫る大きな変化かも知れません。

韓国はよく、e スポーツ発祥の地と言われます。Blizzard 社が最初に韓国を席巻したのは、1990 年代のリアルタイム・ストラテジー・コンピューター・ゲーム「StarCraft」でした。ゲーム開発会社が韓国政府と協力してイベントを企画し、インフラを整備。このことが、韓国を現在の e スポーツにおける優位に導いたのです。

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こうして「オーバーウォッチ」が「LoL」とトップの座を争う中、新たなスキルセットが開発され、新しいファンが注目の舞台に集まってきています。

「1 時間当たり 50 セント (約 52 円) という手ごろな金額で簡単にプレイできるため、今後も韓国のインターネット・カフェは、この移り変わりを見守る中心的な場であり続けるでしょう」と語るのは、ソウルで e スポーツの実況を行うセス・キング氏です。その絶叫ぶりからシャウトキャスターとも呼ばれるキング氏は、さらにこう続けます。

「『PC ルーム』のようなオンラインゲーム向けのゲームセンターから、他国の追随を許さない“競技とゲームのための環境”が生まれるのです。普段プレイできないようなゲームができるとなれば夢中になります。お金を払うことで、早く上達しようとより一層真剣になるものです」。

インターネット・カフェもまた、学生、成人、貧富の差にかかわらず、誰に対してもプレイの門戸を開くことで、競技の場が平均化しています。

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「オーバーウォッチ」のプロプレーヤーであるジス氏の場合は、インターネット・カフェで競争心をはぐくみ、Blizzard 社の作品への愛着が生まれました。

「オーバーウォッチ」は、FPS という彼女にとっては馴染みのないジャンルのゲームですが、このゲームをマスターするために、彼女は多様なゲームプレイ、キャラクター、チームワークを習得しています。

「オーバーウォッチは FPS でありながら、マルチプレーヤー・オンライン・バトルアリーナ (MOBA) ゲームにも似た操作方法をふんだんに取り入れています。この点が韓国のゲーマーの心をつかみ、猛烈な勢いで広がったのです」とキング氏。

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「オーバーウォッチ」のような FPS ゲームと、ジス氏がこれまで好んでプレイしてきた Blizzard 社の「World of Warcraft (WoW)」には、数多くの相違点がある一方で、共通する重要な DNA もあります。例えば、「WoW」が長期間にわたるプレイスタイルを特徴とするのに対し、「オーバーウォッチ」では、より個別の対戦に重点がおかれますが、両方とも、キャラクターとの強い一体感を求めるプレーヤーが楽しめる内容になっています。

実際、ジス氏は「オーバーウォッチ」のお気に入りのキャラクター「ゲンジ」で大暴れしたことから、最近「ゲン・ジス」というニックネームを付けられたほどです。釜山の国際展示場 BEXCO で開催されたオーバーウォッチ・フェスティバルでは、解説者の 1 人が彼女を「ゲン・ジス」と呼び始め、その類まれなプレイが注目を集めたのです。

その日チームは敗れたものの、観客から新しいニックネームで呼ばれた彼女にとっては、思い出深い 1 日となりました。

このように、「オーバーウォッチ」では個性的なキャラクターとプレーヤーのスキルセットが重視されているため、選り抜きの「WoW」プレーヤーは、これまで獲得してきたスキルを「オーバーウォッチ」にも応用できるのです。

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一方、「オーバーウォッチ」の台頭とともに、きびきびとした動きと高画質なグラフィックスを実現する高性能なコンピューターへの要求が高まっています。性能が低い、古い PC だらけのインターネット・カフェでもプレイできた「StarCraft」と違って、動きが速くてグラフィックスが鮮明な「オーバーウォッチ」を楽しむには、より高性能なコンピューターが必要です。

試合に勝つため、ジス氏のようなプロになると、より信頼性の高いハイエンドな PC を使うようになってきています。

「わたしが今使っている PC は、CPU にインテル® Core™ i7-6800K プロセッサー、画像処理を行うグラフィックス・プロセシング・ユニット (GPU) に GeForce GTX 1070、マザーボードには ASUS x99 II を使って構築したものです。1 日に 10 時間以上使うんですよ」とジス氏。

彼女はプロプレーヤーとして「オーバーウォッチ」への進出を図るなかで、いかに高性能なハードウェアで差がつくかを学んだと言います。

チームメンバーとコーチから学んだのは、適切な CPU と GPU を組み合わせれば、対戦中にフレームレートをあまり落とすことなくファンにストリーミング配信できるということです。

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一方で、ジス氏をはじめとするプロプレーヤーたちの前に、テクノロジー課題よりも対応が困難な、大きな障害が待ち受けていることも分かりました。それは、女性プレーヤーに対するいわれのない嫌がらせです。

「対戦中に音声チャットを使うのが困難なほどです。女性の声を聞くやいなや、荒らし始める人たちがいます。あまりに酷くて、プレイに支障をきたすこともあります」

それでも、ジス氏をはじめとする女性プロプレーヤーたちは毅然としています。彼女たちは、韓国に限らず、それ以外の場所でも、「オーバーウォッチ」がゲームシーンの多様化に貢献していると考えています。

性別に関係なく、また、MOBA、MMO (大規模多人数同時参加型ゲーム)、FPS のいずれのファンであるかに関係なく、自由に競い合える「オーバーウォッチ」のプレイスタイルは、韓国のあらゆる人々に門戸を開いています。

 

※文中に記載の金額は、日本語原稿執筆時の為替レートで計算しています。

 

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