ライフスタイル

もうワイン選びに失敗しない?!

Jason Lopez Writer

ブドウ農家は新たなテクノロジーでブドウ畑を緻密にコントロールし、以前よりも高品質なブドウの大量生産に成功しています。

実は、ワインを発明したのは人類ではありません。

「人類は単にワインを発見しただけに過ぎません。地面に落ちた果物を食料としていた古代人が、特定の条件のもとで果物が発酵してアルコールになることに気付いたと考えられています。その後、試行錯誤を重ねて、発酵を意図的に管理する方法を導き出したのです」と、『Alcohol: A History』の著者であるカールトン大学の教授、ロッド・フィリップ氏は語ります。

そこから、ワインの製造が始まりました。

slh-andys-phone-e1479742910888

「紀元前 5,000 年、グルジアとイランの古代文明で、現在と同じヴィニフェラ種のブドウを使ったワイン製法が開発されました」とフィリップ氏。そのワイン製法が広まり、さまざまな古代文明で発展していったのです。

例えば、エジプト人は、独自のブドウ栽培法でその名を馳せました。また、ギリシャ人は、地中海全体で高度なワイン輸出産業を確立。その後、ローマ人がフランスで初のブドウ畑を開拓し、ワインを熟成させるために初めてオーク樽を使用しました。

質の高いブドウ生産と発酵管理の試行錯誤は今なお続いており、数々の新技術や製法が生み出されています。

3
樽からワインをポンプで圧送する Diablo Paso 社のエンリケ・トーレス氏。

「個人的には昔ながらの製法でワインを作りたいですが、常に質の高いワインを生産するにはコンピューターの力が欠かせません」と語るのは、醸造家のエンリケ・トーレス氏。

トーレス氏がテンプラニーリョ種、ガルナッチャ種、アルバリーニョ種のブドウを使って製造した伝統的なスペインワインは、カリフォルニア州パソロブレスにある Diablo Paso 社で販売されています。トーレス氏は、ワイン醸造ソフトウェアを使って、重さ、体積、糖度など、あらゆる情報を記録しています。

「これがないと何もできません。優れたワインを生み出すには、適切な作業を適切なタイミングで行わなければならないからです。常にブドウ畑を監視していれば、適切なタイミングを逃さないでしょう? そう思いませんか?」と彼は問いかけます。

この問いかけに対する答えが、IoT です。つまり、これまでは接続されていなかったモノにインターネット接続機能を与えて「スマート化」するという考え方です。

4
気象情報を計測するウェザー・ステーションで収集したデータを予測分析に使用。

テクノロジーを導入して伝統的な製法を改善

古代の人々は、一定量の実を間引きして水の量を減らすことで、ブドウの味が濃縮され、ワインの質が高くなることを知っていました。しかし、数世紀を経てテクノロジーが進化したことで、こうした手さぐりの製法は少なくなりました。

テクノロジーのおかげで、質の悪いワインに当たる確率が低くなり、さらには、驚くほど上質なワインが以前より安価に購入できるようになったと言えるでしょう。

インターネットに接続されたセンサーは、ブドウ農家を緻密なブドウ栽培という新たな時代にいざなおうとしています。センサーを使用することで、ブドウ農家は適切な水の量を測定してコントロールし、ブドウの中に最適な量の糖分と風味を凝縮させることができます。

「30 エーカー (約 3 万 7,000 坪) のピノノワ-ル種のブドウ畑全体に数多くのセンサーを設置しています」と、カリフォルニア州ソレダード郊外にある Hahn Family Wines 社のワイン醸造家、ポール・クリフトン氏は語ります。

5
Hahn Family Wines 社のポール・クリフトン氏。

「土壌水分センサーは特に効果的で、畑にまく水の量を判断するためのデータが得られます。設置して 6~7 年になりますが、スマートフォン・アプリからもデータにアクセスできます。こうした先進的なテクノロジーは、すでにワイン醸造家の間では常識になっています」とクリフトン氏。

Hahn 社では、次の新たなテクノロジーとして予測分析の導入を進めています。

「クラウドを活用してデータを取得し、予測モデルで処理することによって、カレンダーの日付に従って噴霧と水やりを行う従来のやり方から、緻密なブドウ栽培に移行できます。より良いブドウを収穫し、より質の高いワインを生産できるようになるのです」とクリフトン氏は語ります。

Hahn 社は、2014 年のピノノワール・ビンテージ・ワインが  ロバート・パーカー氏 の『Wine Advocate』誌で 94 ポイントを獲得するなど、すでに高い評価を得ています。ワイナリーのあるサンタルシア山脈の高原は、最高級のピノノワールの産地として注目を集めている場所です。

6
ワイン畑を見回る Hanh 社のアンディー・ミッチェル氏。

Hahn 社の畑を管理するアンディー・ミッチェル氏は、「ピノノワール種の良さは、栽培する畑の状態が忠実に反映される点です。全体として涼しい環境を好みますが、それ以外にもあらゆる要素が味や風味に影響を与えます」と説明。

ミッチェル氏がスマートフォンで表示した地図アプリを覗くと、Hahn 社のブドウ畑が高原に数キロ間隔で点在しているのが分かります。

7
降水量や渇水状態を測定する水量メーター。

「私たちのブドウ畑は気象条件が微妙に異なり、それぞれの畑で生産されるワインも性質が異なります。つまり、すべてのブドウ畑で同じ時期に同じ作業をしていては、最高のブドウを収穫できないのです」とミッチェル氏。

さらに彼はピノノワール種の畑に入り、IoT テクノロジーのネットワークを見せてくれました。それは、点滴灌漑用の水流メーター、土壌水分センサー、ウェザー・ステーションがデータを取得し、そのデータをブドウの木に囲まれたワイヤレスのソーラー発電機器に送信する仕組みです。

8

スマートフォンの地図を見せながら、「非常に画期的な試み」だとして、ミッチェル氏はこう説明します。

「青い点が現在地です。このデバイスからも、ここから数キロ下にあるブドウ畑からも、リアルタイムのデータが確認できます。今の気温は 14.2℃ で、ブドウの葉 (キャノピー) の温度は 14.3℃、湿度は 93% です」

このデータを予測分析エンジンで処理するのです。驚くべき試みは、まだ始まったばかりではあるものの、このテクノロジーを活用することで、1 つの手法ですべてに対応しようとするアプローチから脱却し、将来的には、畑単位ではなくブドウの木の列単位で緻密に栽培管理が行える可能性もあります。

地中からオフィスへ

「IoT はブドウの品質を左右する重要な成育段階で効果を発揮していますが、一方でビッグデータの活用も進んでいます」と語るのは、カリフォルニア州フレモントを拠点とする Oztera 社のマイク・ストールマン氏。同社がワイナリーに提供しているのは、多様なデータソースを連携させるソフトウェアです。

9
ワイン醸造メーカーのコスト追跡と分析を支援する Oztera 社のソフトウェア。

「資金がなければ、ワイン生産を長期間継続することはできません」とストールマン氏。

特に、ブドウを自家栽培しているワイナリーは、栽培、製造、販売、流通、接客など、あらゆる課題を克服しなければなりません。小さなブドウに多くのプレッシャーがのしかかります。ただ発酵させるだけで終わりではないのです。

「いまやスマートフォンのすべてのアプリが、それぞれ異なる事業部門を支えています。そうしたアプリが互いにデータをやり取りできないと、大きな問題が生じるでしょう」

ストールマン氏は、ワインのブレンディングを例に挙げます。ワイナリーがあとになってコストがかかり過ぎていたことを知るのは、珍しくありません。

「ブドウはロットごとにコストが異なります。コストがかかるブドウからワインを製造してしまうと、非常に高い価格で市場に出さざるを得ません」

そこで、テクノロジーによるイノベーションを広く受け入れ、ブドウの圧搾から、発酵、熟成データまでを整理することで、ワイン醸造プロセスそのものを自動化しているのです。

クリフトン氏は、「私のほしい物リストには、タンクの底にセンサーを設置してワインの残量を正確に把握できるツールが含まれています。巻尺とディップスティック (液体に漬けて液量を測定する計測器) より大がかりなツールになりそうですね」と話します。

IoT テクノロジーがすでにビール樽の測定に応用されているのですから、クリフトン氏の希望が実現する日もそう遠くはなさそうです。

「先日、糖分、アルコール分、リンゴ酸やその他の成分のテストに要する時間を約 4 時間も短縮できる新しいテクノロジーを導入しました。信じられないほどの効果です。私のほしい物リストのアイテムは、驚くほどのスピードで手に入りつつあります」 (クリフトン氏)

 

この記事をシェア

関連トピック

ライフスタイル サイエンス

次の記事