教育

多様性の育成に神経科学が活躍

今日の現代テクノロジーに精通した子供たちは、大人になったとき、多様性を受け入れてくれる職場を期待するようになるでしょう。これが会社にとって賢明な要求であることは、研究でも立証されています。

チームに「I (自分)」はなく、そこにあるのはチームの IQ である。このことに気づくのは、チームが多様性を受け入れたときであることが分かってきました。

「人口統計学上、多様性のあるグループはより良い決定を行い、より多くの革新を生み出します。なぜなら、彼らはさまざまな視点を取り込めるからです」と、コロンビア・ビジネス・スクールのリーダーシップおよび倫理学の研究協同実施者兼副学部長であるキャサリン・フィリップス教授は語っています。

フィリップス教授のチームの新しい研究では、多様性がより多くの創造力を掻き立て、複合的な思考を促すと結論づけています。また、このことにより、グループ間で、経済的あるいは社会的にプラスの効果をもたらす、より質の高い意思決定が促進されます。

NeuroLeadership 研究所所長のデビッド・ロック博士は、神経科学者とリーダーシップの専門家を結集して、多様性に富んだ職場を作り出すための科学的に裏付けされたアプローチを導き出しました。ロック氏が設計を支援したインテルの GROW プログラムは、多様で包含的なチームワークへのアプローチを会社全体で実現することを目的としています。

人間の脳と神経系を研究する神経科学では、脳の仕組みについて知り、認知科学や脳内化学から哲学、心理学まで、あらゆる分野を研究することにより、人間の行動をいっそう深く探究します。

「神経科学者が、より賢明なチームを研究することで明らかになることがあります。それは、賢明なチームを構成する上で問題となるのは、チームメンバー一人ひとりの IQ ではなく、チームメンバーの平均的な社会的知性だということです」とロック氏。

社会的知性とは、女性とより密接に関連する才能群であり、聞き上手になる、交代で行う、共有しあう、受け入れるといった特性を指します。ロック氏は、すべてを受け入れる包含的な環境は、賢明なチームを作るときの最も重要なポイントの1 つだとしています。

「多様性に富んだあなたのチームが包含的でもあるなら、あなたはより良い決断ができ、創造性に優れ、より多くの間違いを見つけていることになります。なぜなら、たくさんの偏見を、全く異なる視点を通して緩和できるからです」とロック氏は説明します。

彼の研究では、さまざまな年齢、人種、性別、信仰からなるグループは、同一層のメンバーからなるグループよりも新しいイノベーションを生み出しやすいことが分かっています。チームメンバーが比較的一定した知性を持っている場合は、仕事や時間に変化が生じにくいため、賢明なチームほど優れたパフォーマンスを発揮できないと言うのです。

しかし、たとえ多様性のあるチームであっても、特定の人々がチームを支配している場合は、多様性によるメリットを押しつぶしてしまうことがあるようです。

「すべてを受け入れる包含的な環境も必要です。なぜなら人々は自分に発言権があり、貢献できると感じるからです」とロック氏は語っています。

より良いチームを構築するには?

とりわけ現状を変えることに疑問を感じているマネージャーなどにとっては、目の前のプランを実行に移すことは、新たな障害を生み出す原因となるだけです。期限が迫ってくると、つい慣れ親しんだ均質なチームの効率とスピードに依存してしまう人もいるでしょう。

ロック氏は、「マネージャーにとって、多様性がなく、包含的でないチームの方がおそらく居心地が良いのです。実はそれが問題なのです」と指摘し、さらにこう続けます。「均質なチームでは、マネージャーはメンバーに関与させず、独断でプロセスを進めることができます。しかし実際は、より冷静に、速く動いているように感じているだけなのです」

人は、多様性に富んだチームで仕事をする方が難しいと言いますが、より賢明なチームを作り出すだけの価値は十分にあります。しかし一方で、無意識の中にある社会的偏見あるいは文化的偏見が障壁を作り出す可能性もあります。

そこで、「根本的な偏見を緩和するプロセスを導入するべきです」とロック氏は提案します。

彼が設計を支援するインテルの GROW イニシアチブは、自社の全従業員 10万7,000 人のための 1 年間のキャンペーンです。その内容には、トレーニングツール、ウェビナー (インターネット上で行われる Web カンファレンス)、ビデオ、進行中の研究などがあり、例えばロック氏が使用した神経科学の研究とデータを使って新しい習慣を開発し、偏見の克服に役立てることで、ある集団が従業員に何か新しいことを試すことを奨励するとともに、居心地のいい場所から抜け出せるように促してくれます。ロック氏によれば、この訓練が人々の心を開かせるのだと言います。

賢明なチームワークの未来

GROW のようなプログラムを導入する会社は、多様で包含的なチーム作りに専念することで、競争優位を保てるようになります。

「私たちは、優れたエンジニアとして、お互いにより良い関係を築くためにするべきことを研究しました」と、インテルで多様性と包含性に関する最高責任者を務めるダニエレ・ブラウンは説明します。

彼女によると、インテルは自社がテクノロジー業界のリーダーとして存在し続けることを目指す上で、多様性の取り組みを強化すべきであることに気がついたのです。GROW プログラムは、この目標達成を支援するためのものです。

「大革新に失敗した会社を見ると、その多くが固定概念にしばられ、非常に均質なメンバーで構成されたチームであることが分かります。従業員が賢明なアイデアを持っているなら、その意見は採用されるべきでしょう。私たちは自分が持っている偏見をもっと効果的に緩和して、さまざまな声に耳を傾け、多様な人々が成功できるようにするべきだと思うのです」 (ロック氏)

ありがたいことに、若い世代はこれらの目標に向かって前進する態勢ができています。「現代の子供たちは親世代と違って、インターネットなどで技術的につながっており、多様性に富んだ環境で成長しています。そんな彼らが大人になったときには、職場に同じレベルの包含性を期待するようになるでしょう」とロック氏は語っています。

 

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