教育

女性宇宙飛行士、火星への大きな一歩

NASA を卒業する宇宙飛行士訓練生の半数を女性が占めたのは、史上初めてのことです。しかも、その女性たちが飛び立つ準備を進めている行き先は、これまで男性たちが誰も足を踏み入れたことのない場所、火星です。

危険を冒して最初に宇宙空間に飛び出した勇敢な男性たちや、人類で初めて月面に降り立ったニール・アームストロング氏。その瞬間を記録したドキュメンタリーや映画の中には、家で夫の帰りを待つ数多くの女性たちの姿がありました。彼女たちはテレビの画面に釘付けになり、電話をすぐ手の届くところに置いて夫たちの運命を告げるニュースを待ち、ときに大きな喪失感にさらされていました。

それが今では、NASA の宇宙飛行士訓練生の半数を女性が占めるまでになっています。女性がロケットに搭乗する資格を得たのは明らかです。そして、おそらく彼女たちの誰かが、火星の地を踏む人類最初の 1 人となることでしょう。

一番新しい NASA の卒業生たちは、性別を理由に選ばれたのではありません。「性別ごとの採用人数は全く決めていません。我々が面接を行った中で、最も適任だと判断した候補者たちです」と NASA の副長官を務めるグレン研究センターのジャネット・カヴァンディ氏も語っているように、6,100 人もの志願者の中から彼らが選ばれたのは、この任務に最も適任だったからにほかなりません。

クリスティーナ・ハンモック・コーシュ氏、ニコール・A・マン氏、ジェシカ・メイア氏、アン・マクレイン氏

火星でのミッションは少なくとも 15 年先ですが、準備はすでに進行中です。この旅のあらゆる局面で、女性たちは陰日向になりながら、目的地に到達するための設備製作に役割を果たし、赤い惑星を探査するための準備を進めます。

「火星に行ったら、誰も足を踏み入れたことのない環境で、人類全体を代表して任務を遂行します。私にとって、これは人類が成し得る最も重要なことなのです」と、イラク戦争で前線を飛び、勲章を授与された退役軍人のアン・マクレイン氏 (36) は語っています。

宇宙の開拓者

最新のデータでは、宇宙飛行中の行動面または心理面の反応テストにおいて、性別による差異に根拠はないことが分かっています。

ただし、女性は着陸後に起立不耐症 (失神せずに長期間立っていることができない) になる傾向が強く、一方男性は、宇宙空間から帰還した後に視力障害を起こす傾向が強く見られます。

NASA の研究者は、宇宙空間を移動する機会を得た女性の数が男性より圧倒的に少ないため、そもそも男女の有効データ数に相違があることを認めています。これまでに宇宙空間に出た 543 人のうち、女性はわずか 11% に過ぎないのです。

とはいえ、女性たちはまだ誰も宇宙空間に到達できるレベルにない、というわけではありません。例えば、米国女性で初めて宇宙空間に足を踏み入れたサリー・ライド氏や、国際宇宙ステーションで連続 200 日を過ごした最初の女性であるイタリアのサマンサ・クリスフォレッティ氏などがいます。もっと前には男性が多数を占めていたことを思えば、最近の変化は非常に大きいと言えるでしょう。

火星はもちろん、NASA へたどり着いたこと自体が、女性にとっては大きな一歩なのです。

「私はずっと NASA で働きたいと考えていましたが、飛行技術やスキューバダイビングなどのありふれた技術を身につけることで目標に近づきたくはありませんでした。私がそこへ行きたかったのは、科学と、そして新たなフロンティアへの情熱があったからです」と語るクリスティーナ・ハンモック・コーシュ氏 (37) は、地球の「フロンティア」である南極大陸 (南極点を含む) と北極圏で働きながら 3 年半を過ごしました。

また、NASA ゴダード宇宙飛行センターの高エネルギー天体物理学研究所とジョンズ・ホプキンス大学応用物理学研究所の宇宙部門での勤務経験があるコーシュ氏は、NASA の複数のミッションで使用された科学機器の開発に貢献した人物でもあります。

コーシュ氏とマクレイン氏に続いて NASA に加わったのは、ジェシカ・メイア氏 (38) とニコール・A・マン氏 (38) です。生物学者であるメイア氏は、宇宙飛行士になる以前は、ジョンソン宇宙センターで微小重力の影響および宇宙飛行が人体に与える影響について研究していました。一方、機械工学士のマン氏は、アメリカ海兵隊と一緒に 2 度にわたり外地での勤務を勤め、イラク戦争の軍事行動と限りなき自由作戦で戦闘機を飛ばした経験があります。

火星への道の

火星への旅は簡単ではありません。約 5,600 万 Kmの彼方にあり、到達するのに 6 ~ 9 カ月、往復のミッションには 2 年 ~ 3 年かかる見込みです。しかも、数カ月続く砂塵嵐や、冬期には摂氏 -176 度まで下がる気温など、環境面での厳しさもあります。

しかし、宇宙飛行士たちは、この航行に必要なスキルをすでに獲得しつつあります。

2 年間にわたる宇宙飛行士訓練の間に、彼女たちは超音速ジェット機 T-38 (約 32 キロメートル/分で飛行可能) を操縦し、「嘔吐彗星」と呼ばれる無重力状態を経験。また、約 181 kg もある宇宙服を着て無重力環境訓練施設内の深さ 12 メートルに及ぶ水の底で、国際宇宙ステーションのモックアップを完成させるというタスクをこなしてきたのです。

マクレイン氏は宇宙服を着用することも航空機の操縦と同じだけの訓練を要すると考えています。

「宇宙服は、極めて技術的な要素でできた装置です。私たちは、宇宙服について、非常時の手順、多様なシステム、ミッションの遂行に必要な身体の動きと宇宙服を適合させるさまざまな方法など、あらゆることを詳細に学ばなくてはなりません」とマクレイン氏

彼女たちは、国際宇宙ステーション上で各種技術の実証を行う「地球近傍」を通して訓練を続けます。さらに、地球から遠く離れた宇宙空間での複雑なオペレーションについて技術実証を行う「宇宙実証」、地球の大気圏外での有人調査などを実施する「地球独立」といった段階を経て、最終的には火星での調査が行われる日がやって来ます。

これからも NASA は、宇宙空間への移動が人体に及ぼす生理学的影響や、宇宙空間における男女間の反応の差異に関するデータ収集を続けていきます。

この地球上ですでに極限状態の訓練を受けてきたマン、マクレイン、コーシュ、メイアの各氏は、すでに次なるフロンティアへ進出する準備が整っています。

 

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