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日本発の「Kagura」が切り拓くインタラクティブ・ミュージックの未来

モーション・キャプチャーによって身体の動きを音に変換する「Kagura」。この新しい楽器アプリがあれば、誰でもミュージシャンになるチャンスをつかめます。

「楽器をただ演奏するだけなら誰にでもできますが、一流の演奏家として楽器を使いこなすのは簡単ではありません。私は子供のころから楽器を弾けるようになりたいと思っていました。でも、楽器をマスターするには気の遠くなるような努力が必要です。私にはとうてい無理でした」と中村俊介氏は語ります。

挫折を味わったことから、誰でも弾けるような楽器を作ろうと思い立った中村氏は、「Kagura」を開発。この楽器アプリによって、音楽制作の門戸をかつてないほど広げています。

中村氏が「Kagura」の最初の試作品を完成させたのは 2003 年です。その名前の由来は、神にささげる音楽の「神楽 (かぐら)」。モーション・キャプチャー・カメラを使って動きを音に変換し、身体を楽器に変える仕組みです。

株式会社しくみデザインの代表取締役社長 中村 俊介氏
株式会社しくみデザインの代表取締役社長 中村 俊介氏

中村氏のアイデアにテクノロジーが追いつくまで 10 年かかりました。

「『Kagura』を使えば、子供でも 1 時間以内に音楽を作れるようになります」と中村氏。音楽の初心者でもゼロから作曲して自分だけの傑作を作れたり、お気に入りのアーティストの音楽を自由にアレンジできたりするのです。

しかし、中村氏によれば、「Kagura」は「ニュートラルな楽器」として設計されているため、楽器の使い手側から見れば、まだまだ開発の余地があると言います。創造力とテクノロジーを融合したこのアプリは、現在の音楽業界には混乱をもたらすかもしれませんが、今後のパーソナルな音楽体験のあり方を提案することになるでしょう。

技術的な混乱

中村氏は、「Kagura」のようなテクノロジーを未来の音楽の進化過程だと考えています。音楽配信サービスが CD やカセットテープを淘汰したように、これは消費者が対話性を求めるようになっている証拠です。

「スマートフォンなどのデジタル・テクノロジーは消費者の間にすっかり浸透しています。今後は、消費者が自らさまざまなコンテンツを作成して参加するというスタイルが一般的になっていくでしょう。特にここ数十年、音楽文化はテクノロジーの進化とともに絶えず変化し続けています。今後は、センサーや IoT の発展により、リスナーも音楽に気楽に参加できるようになるでしょう」と中村氏は説明します。

日本国内で最先端のテクノロジーを駆使して楽器を製作している中村氏ですが、音楽デバイスを自作しているのは彼だけではありません。

楽器を自作するワークショップが日本各地で開催されていることは、Nikkei Asian Review でも報じられています。

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紙と金属で作られたペパニカ (papernica)。アコーディオンのように演奏できる。

Credit: リュクサンブール公園 Facebook ページ

音楽における対話性の魅力を訴える大阪在住の会社員、高橋さんは、地元のワークショップで自作した小さなペーパー・アコーディオンについて、「自作のペパニカから音が出た瞬間、達成感がわき起こりましたね」と語っています。

音楽のテイストが変わる?

音楽の対話性が高まったことで、今後は音楽業界全体にも変化をもたらすことになりそうです。その影響は日本国内に留まりません。

「今後、音楽はますます短くなり、アクセスしやすくなり、実体験できるメディアになっていくでしょう」と語る中村氏は、「Kagura」がピアノやギターのように、プロのミュージシャンも使用する一般的な楽器になることを期待しています。その一方で、リスナーには好きな音楽に参加してパーソナライズできる機能を提供したいと望んでいます。

「日本ではミュージシャンとのコラボレーションがすでに始まっています。来年は『Kagura Sound Set』というプロ仕様の製品をリリースする予定です。そして、世界中のアーティストとさらに多くのコラボレーションを実現したいと考えています。アーティストとリスナーがギターやピアノと同じように『Kagura』を弾いて楽しめるようになればいいですね」

「Kagura」の人気がどれだけ高まるかは今後も注目ですが、一流のミュージシャンのみならず、さまざまな人々の音楽体験や音楽制作に変化をもたらしているのは確かです。

 

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