サイエンス

サンディエゴ港、IoT でエネルギー消費を削減

多くの船舶が利用するカリフォルニアの港では、IoT をエネルギー消費量の削減に役立てています。

ボブ・ネルソン氏は、週に 2~3 日、午前中にグレーの Tesla Model S (Tesla 社の電気自動車) でサンディエゴ湾沿いを走ります。湾に突き出たシルバーストランドという細長い半島が、約 53km に及ぶ海岸線と 22 平方キロメートルの干潟を囲うようにして、サンディエゴ港を形成しています。

ネルソン氏は管理棟のロビーで立ち止まり、エネルギー使用量のデータ表示を確認します。

サンディエゴ港には、西海岸最大の造船会社、15 のホテル、30 を超えるレストランが存在し、無数のクルーズ船や貨物船が係留されています。ネルソン氏はこの港のコミッショナー (管理委員長) として、カリフォルニア州の先進的な環境基準を遵守すべく見守っているのです。サンディエゴ港では、温室効果ガスの排出量を 2006 年の基準レベルから 2020 年までに 10%、2035 年までに 25% 削減することを計画しています。

64 歳のネルソン氏はこう語ります。「子供のころ、ライトを消し忘れたら 25 セントの罰金を科されました。父と決めた約束でしたが、当時の環境意識はその程度のものだったのです。現在の世界では、はるかに堅牢でインテリジェントなソリューションが求められています」

サンディエゴ港の活動は、世界中で展開されている多くの取り組みの 1 つです。ロンドンやダブリンなどの都市は、IoT テクノロジーが大気質の改善や気候変動への対応にどのように役立つかについて研究を進めています。また、バルセロナなどの都市は、ゴミ箱にセンサーを設置して、一杯になるとゴミ回収サービスに通知する仕組みを導入しています。これも、IoT によって日常生活を改善する方法の 1 つです。

サンディエゴ港の気候変動アクションプランの目標達成方法を検討しているとき、ネルソン氏は、サステナビリティー政策によって創出されるビジネスチャンスに着目する事業者団体、Cleantech San Diego に出会いました。団体の代表を務めるジェイソン・アンダーソン氏は、複数の IoT 請負業者とともに、港全体のエネルギー消費量を追跡し、無駄を削減する方法を導き出すためのセンサーおよびデータ分析システムを開発しています。

2

そこで、アンダーソン氏とネルソン氏は、こうした考え方を実証すべく、IoT システムを港の管理棟に導入することを決めたのです。2014 年、2 人の監督のもと、建物の空調システムにセンサーが設置されました。

このシステムでは、地下設備で冷却した水を、配管を通じて流し、その配管に空気を吹き付けます。次に、屋上の冷却塔へと送り込み、最後に地下の冷却設備に戻して循環させる仕組みです。

 写真提供: アンシェル・サグ
写真提供: アンシェル・サグ

ここに、冷却塔の電流変換器、地下冷却設備の圧力計、両設備の温度計などのセンサーを調整、制御するインテリジェント・システムとしてのゲートウェイを追加することで、スマートシステムがデータを収集し、インターネットを介してクラウドに送信します。インテルのテクニカル・アカウント・マネージャー、ニック・オングの説明によると、これらのセンサーが、エネルギーを消費するサブシステムの使用状況を追跡するのだと言います。

また、ゲートウェイが 15 秒ごとにセンサーのデータを収集して正規化するため、データ送信の手間とストレージを削減できます。「ゲートウェイによるこのプロセスがなければ、目的の測定値を把握する前にデータをいったんクラウドに保管しなければなりません」とオング。

処理した情報を一元化されたデポジトリーに保管することで、エンジニアはリアルタイム・データにアクセスできるのです。

45

もちろん、異常値も早い段階で検出できます。例えば、サンクスギビング・ホリデーには、管理棟が閉鎖されます。普通に考えれば、日中の空調システムのエネルギー消費量は 100% 減少するはずです。しかし、実際は半分しか減りませんでした。

その原因を示してくれたのが IoT システムです。オングは、「ポンプとブロワー (送風機) は停止していたものの、冷却器が作動し続けていたことが判明しました」と説明。この件を受けて建物の管理者は、休日には、その他の空調装置とともに冷却器を完全に停止させるようにプログラミングし直しました。

5
写真提供: アンシェル・サグ

「結局、スマートメーターだけでは特定できない問題も特定できることが分かりました。このように、新しいシステムでは問題を特定してエンジニアに通知し、解決できるようになったのです」とオングは語ります。

また、コミッショナーのネルソン氏が、「この比較的小規模な調整が、大規模な方針転換のきっかけになった」と語るように、平日 12 時間以上稼動していた管理棟の電源を、隔週金曜日に落とすことになったのです。この間の作業時間を他の稼動期間に分配して埋め合わせることで、建物のエネルギー消費量と排出ガスを削減できるようになっています。

6

Cleantech San Diego のアンダーソン氏は、人々がこのシステムを通じて、「比較的安価なテクノロジーを統合することで、エネルギー使用のあり方について理解を深めるきっかけになることに気づいてくれれば」と考えています。彼は、このプロジェクトがさらなる広がりを見せるだろうと予想しています。港全体に数百個ないし数千個のセンサーを設置する可能性もあります。

7
写真提供: アンシェル・サグ

現在、ネルソン氏は、管理棟のテナントが省エネデータに注目し、IoT によるモニタリングのメリットを理解して、さらに大規模なプログラムに賛同してくれることを願っています。

「考え方を変えるきっかけになります。データの測定を始めることで、『きっかけが、行動に結びつく』効果が得られるのです」とネルソン氏は語っています。

この記事は、Heather Sparks 氏のオリジナル記事を基に作成されています。アンシェル・サグ氏が撮影したその他の写真は、Flickr でご覧ください。

 

この記事をシェア

関連トピック

サイエンス テクノロジー・イノベーション 教育

次の記事